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第53話 探索二日目

ダンジョン探索二日目。


みんなは昨日決めた方角に散っていった。俺が昨日向かった方角はチャールズさんが一人で行くことになった。より広範囲を探索するために今日も全員単独行動にしたようだ。


俺は未探索の方角に行くのは控えることにした。昨日シルビアさんが向かった方角に行こうと思う。きっと派手に暴れていらっしゃるだろうから魔物も少ないのではないかと思ったのだ。

しかし、少し進んだあたりでこの方角を選んだのは間違いだったことに気付いた。

そこは何の災害現場だろうかというほどに荒れていた。森だったはずの場所は木々は倒れ、地面は大きくめくれ上がり地割れが広がっている。

ダンジョンは時間経過で元の状態に戻るというが、こんなに地形が変わっても元に戻るのだろうか。

昨日の報告会の様子からすると、こんな規模の魔法を使う必要があるほどの魔物に遭遇したわけではないはずだ。多分、全力で魔法を使ったらどうなるかを試してみたかったのだろう。そして、それにソフィーちゃんは巻き込まれて負傷したと。ドンマイ、ソフィーちゃん。


地属性魔法の性能は身体能力に大きく依存すると言われている。身体能力向上系スキル盛り盛りのシルビアさんは、人類史上でも指折りの地属性魔法に長けた人物なのかもしれない。

しかし、この災害級の魔法を使う魔物も自然界に存在するのだ。流石にこの規模の魔法を使う魔物はそんなにいないだろうが、地属性魔法の痕跡が確認されると優先的に冒険者ギルドで討伐依頼が出る。過去にアースドラゴンが国内に出没した時は国軍が動員されて早期討伐したそうだ。

地属性魔法、恐ろしい魔法である。


この災害地帯は進みにくいので、災害地帯に沿って森の中を進むことにした。規模は縮小しているが災害地帯は結構先まで続いているようだ。地属性魔法を使いながら森の中を練り歩いたのか。木が邪魔で見通しが悪かったから切り開くために使ったのかもしれないな。まさに歩く災害。勇者も真っ青だろう。


しばらく進むが魔物の数は昨日ほど多くない。いい感じで間引きがされている。

順調に狩りを進めていくと災害地帯が途切れた。どうやらここで昨日は引き返したようだ。

戻るにはまだ早い時間なので先に進むことにする。

『ここからはより慎重に行くぞ。シュバルツ、任せたぞ。』

『既に前方に割と強い気配がありますよ。主殿。』

『よし、進行方向を変えよう。ナビゲートしてくれ。』

森の中を進んでいくと魔物の数はやはり増えた。

『主殿、微妙な感じの強さの気配がありますがどうします?』

『近くまで行ってみるか。看破してくれ。』

向かった先はミノタウロスだった。昨日見た変異種より小さい。大きな刃物を持っている。バルディッシュっていうんだったかな?どこから調達してきたのだろうか。まあ、ここはダンジョンという謎空間だから何でも有りか。

『通常のミノタウロスですね。頑強Lv4、暗視なし、遠距離攻撃もなさそうですね。』

『アーマードゴリラの時と同じ戦法でいこう。遠距離攻撃がないなら問題ないだろう。』

『ではデュンケルは私の影へきてください。主殿、気をつけてくださいね。』

『ああ、囮は任せろ。無理はしない。』

結果としては問題なく狩れた。上空の俺に向かって刃物を振り続ける敵を背後からデュンケルが仕留めた。的がでかいのでデュンケルの射撃も全弾命中だ。

『ミノタウロスは格好のカモだな。昨日の変異種もただでかいだけで討伐できたんじゃないか?』

『主殿、慢心はよくありませんよ。昨日の変異種はあの大きさですよ?歩幅が違います。一気に間合いを詰められてしまいますよ。万が一、デュンケルの射撃が通じなかった場合、逃げられませんよ。』

『それもそうか。やっぱり無理はしない方針で行こう。』

その後も順調に狩り続けた。昨日ほどの強い魔物はあまりいなかったようだ。三階層への階段は見つからなかったが、いい時間になったので戻ることにした。


今日も無事全員が帰還した。全員集まった所でドロップ品の整理だ。そして飯の後、報告会の流れになった。


「では探索二日目の報告会を始めます。」

「まず最初に、私が本日向かった先で三階層への階段が発見されました。」

おお、もう見つかったのか。これで今回の出張目的はほぼ達成されたようなものだろう。

「時間の都合上、現地までは私は辿り着いておりませんが、フリードが上空から発見しました。明日は全員でその場所を目指そうと思います。はっきりした距離は分かりませんが、遅くとも夕方までには到着できるのではないかと思います。」

「それからグリフォンの討伐は完了しました。ミノタウロスの変異種には遭遇しませんでしたので、明日の道中は皆さんも気をつけてください。皆さんの方角は特別危険な魔物はいなかったでしょうか?」

みんな昨日と同様な様子だ。どうやら特に何もなかったようだ。

「では、明日は三階層への階段へ向かい、時間があれば三階層の様子を探ります。そして階段付近で一泊するということで。」


こうして報告会は終わり、昨日と同様に飲み会になった。


就寝前、みんながシュバルツの影に入っていく。俺は飲み会の片付けの後、自分の影の中へ入る。


シルビアさんがキアラさんに絡まれていた。

「あれ~、シルビアちゃんはルノ君の影の方に行かなくていいの~?」


俺の影の中、片付けしておこうかな。


「シルビアちゃん。ルノ君はあんまり丈夫じゃないからね。うっかり握り潰しちゃったりしたら駄目だよ?ルノ君がミンチになっちゃうからね?」


何だか物騒なことが聞こえた気がする。

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探索三日目。


三階層への階段目指してみんな走って移動している。魔物に遭遇しても鎧袖一触といった感じだ。先導しているチャールズさんが前方の魔物を斬り飛ばしていく。側面から襲ってくる魔物はキアラさんの爆発魔法で消し飛ばされていくか、シルビアさんが殴り倒している。


俺は今、この世界で一番安全な場所にいるのかもしれない。


「む。ミノタウロスですね。確かにあの大きさは変異種で間違いないですね。」

「向こうにもいるよ~。大きいね~。」

あのでかいミノタウロスの変異種は二匹いたようだ。大きすぎて木に隠れてないので、森の中でもよく見える。

「片方は私が片付けましょう。シルビア、キアラでもう一匹お願いします。」

「了解です。」

「行ってきま~す。」

三人はさらに速度を上げて走っていった。

チャールズさんは攻撃してきた敵の腕を駆け上がり、一瞬で首を斬り飛ばした。瞬殺だった。

シルビアさんは地属性魔法を使ったようだ。強く踏み込んだ足元から敵に向かって亀裂が入り、地面が捲れ上がって敵は体勢を崩した。そこにすごい速度で間合いを詰めていたシルビアさんの拳が敵の足に刺さった。その足は変な方向に曲がっている。敵は転倒して大きく咆哮を上げた。その大きく開いた口にキアラさんの爆発魔法が放り込まれて、敵の頭部が爆散した。


『シュバルツ。今の戦いを見て、俺達はどうしたらいいと思う?』

『何を今更。私は寝床を提供、主殿は食事係、デュンケルはトイレ設営。これまでと何も変わりませんよ。』


俺は涙が出そうになるのを必死に堪えてみんなに付いていった。

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