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第52話 報告会

平和な食事を終えた後は報告会だ。チャールズさんから号令がかかる。

「では皆さん。今日の報告会を行います。」

「まず、三階層への階段を発見された方はいますか?」

みんな答えはNOだった。どうやらまだ誰も見つけていないようだ。

「ふむ。散開して探索すれば初日で見つかる可能性もあると思っていたのですが。ルノさん、一階層は走って三時間くらいで次の階段があったんですよね?」

「そうですね。チャールズさんならもっと早く走破できると思いますが。」

「一階層と同じくらいの距離にあるだろうと思っていましたが、日帰りの探索では辿り着けない距離の可能性もありそうですね。もし、明日探索して見つからなければ、三日目からは全員で移動しながら長距離探索に切り替えますかね。」

確かに一階層は思ってた以上に近くに階段があって驚いたものだ。海という探索しにくい特殊環境だったから近くに配置されたのだろうか。船だったらもっと時間がかかるだろうからなあ。

「次は遭遇した魔物についてですね。」

「私の向かった先では、遭遇する魔物は今の所予想の範疇内といったところでしたが、皆さんが向かった先はどうだったでしょうか?単独で討伐が困難な魔物がいれば、複数人で向かいたいと思いますが。」

「今のところは一人で問題なかったですね。ソフィーは一人では無理そうですが。」と、シルビアさん。

「私も大丈夫だったよ~。」と、魔法担当キアラさん。

「特に問題ないです。ただ本当に数が多いですね。」と、斥候のルーベンさん。

「こちらも問題なしだ。」と、盾役のロドリゴさん。

こっちは問題ありすぎたよ!あんな強力な魔物を単独で狩れる方がおかしいだろう!

「あの、俺には無理そうな魔物が多かったので、避けて探索していたのですが。」

「ああ、ルノさんは自由に探索して頂いて構いませんよ。ルノさんが今日向かった方角には他の者が明日向かいましょう。ちなみにどんな魔物がいましたか?」

俺はシュバルツから聞いた情報と俺が遠目で見たミノタウロスの変異種の情報を伝えた。

「今の話を聞いた感じだとギガントミノタウロスかジャイアントミノタウロスでしょうか。それにグリフォンらしき気配。複数人で向かった方がいいかもしれませんね、その方角は。」

どうやら俺が向かった方角が特に危険だったようだ。ハズレを引いたのか。

「しかし、この階層で本来出現するのはおそらくオーククラスの魔物なんですよね。浅い階層でオーククラス、それに広大な領域。このダンジョン、深度はそんなに深くないかもしれませんね。」

ダグエーテラのダンジョンは1~3階層はゴブリンやホーンラビット。4階層からオーククラスが出るらしい。浅い階層は神殿内部のような石造りタイプのダンジョンで、道を知っていれば一日で10階層近くまで行ける程度の広さらしい。一般的に浅い階層から難易度が高い場合はダンジョン全体の階層は少ないと言われている。ダンジョンは成長するという説もあったりするので、実際は何が正しいのか分からないが。


その後は明日の各々が向かう方角を決めて報告会は終わった。


みんなはシュバルツの影の中で就寝だ。俺は自分の影の中でデュンケルと一緒だ。

-------------------------

何だか寝付けなかったので外に出てきた。

ビールでも飲むかと思ったが、たまには気分を変えてカクテルを作ってみるのもおもしろいかもしれない。砂浜に座って色んな酒やジュースを並べてみる。あちこちで色んな酒を買い漁っていたから結構な種類があるな。カクテルの作り方など知らないので、適当に混ぜて色々試してみることにした。

試した結果、いくつか良さそうな組み合わせを見つけた。富裕層向けの酒場が完成したらメニューに加えても良いかもしれない。

その中で意外に美味しかったのがポーションを使ったカクテルだった。交易品の蒸留酒ウイスキーっぽいものに下級ポーションとレモンみたいな果物の果汁を混ぜたものは、ハーブっぽい香りが爽快感を感じさせてくれるリラックスに最適な一杯となった。

解毒ポーションを使ったものもスッキリしたフルーティな甘みのある一杯に仕上がった。

ポーションを使ったのは鮮やかな色のカクテルになるのではないかと思ったからなのだが、味もかなり良かった。あの緑や青の得体のしれない液体がこんなところで役に立つとは思わなかった。


「あら、ルノさん何をしていらっしゃるんですか?」

オリジナルカクテルに手応えを感じていると、シルビアさんがやってきた。

「ああ、ちょっと寝付けなかったので、夜風に当たってたんですよ。ついでにオリジナルの酒が作れないか試していたら熱中してしまいました。」

「ルノさんらしいですね。でも睡眠はしっかりとらないと駄目ですよ?」

「でも納得のいくものが完成しましたよ!良かったら飲んでみて頂けませんか?」

丁度いいので感想を聞いてみよう。

二人、砂浜に座ってサシ飲みが始まった。

「あら、綺麗な色のお酒ですね。頂きますね。」

シルビアさんは青がよく似合うので、青い解毒ポーション入りカクテルを差し出してみた。

「甘くて飲みやすいですね!これ、女性は好む方が多いと思いますよ。」

緑の下級ポーション入りカクテルも飲んで頂いたが、こちらも好評だった。

「どちらも美味しいですが、私は最初の青いほうが好みですね。これも酒場のメニューに入れるんですよね?何という商品名なんですか?」

「うーん、名前までは考えてなかったですね。あ、初めて飲んで頂いたのがシルビアさんなので、『シルビアンブルー』なんてどうでしょう?」

「フフッ。商品名にされると何か恥ずかしいですね。」


シルビアさんと二人で楽しく飲んでいると、シュバルツから念話がきた。

『主殿。何だか皆さん影から出て行かれたのですが。』

後ろを見ると二階層への階段の影に隠れて、本気で気配を消してこちらを見ている人たちがいた。

「みなさん、そこで何をやってるんですか?」

「おや、気付かれてしまいましたか。なかなかやりますね。」

チャールズさん達が嬉しそうに出てきた。

「ああ~。気付かれちゃったか~。これからおもしろくなると思ったのに~。」

キアラさんがすっごいニヤニヤしている。

「いやあ、シルビアがトイレに出ていってから戻ってこないものだから気になりましてね?」

ルーベンさんも楽しそうだ。

「シルビアにもやっと春がきたか。ところでその酒、私も頂いてもよろしいかな?」

ロドリゴさんまで悪ノリしている。ちゃっかり酒も要求してきた。

「私も飲みたいな~。シルビアンブルー美味しそうだよね~?」

キアラさんがシルビアさんに抱きついてニヨニヨしている。

「まだその名前で決定したわけではないです!」

シルビアさんがすごい覇気を放ちながら反論している。

俺は恥ずかしいのでみんなの酒の準備に専念することにした。

「ええ~。いい名前だと思うよ~。あ、これも美味しいね~。じゃあ、こっちの緑のはキアラグリーンでお願いね~。」

自分の名前を商品名にしてこの人は恥ずかしくないのだろうか。

でもいい名前だな、キアラグリーン。うん、採用。


その後はいつものようにみんなで宴会になってしまった。


折角、いい感じの雰囲気になったというのに残念だ。まあ、今はダンジョンの中だからな。二人で飲むなら危険のないダンジョンの外でゆっくり飲むのがいいな。

俺、このダンジョン出たらシルビアさんを飲みに誘うんだ。

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