第50話 ダンジョンアタック開始!
ダンジョンの入り口に向かうと、警備の人が驚いた様子でこちらを見ていた。完全武装の集団がこのダンジョンに来るのが珍しかったのだろう。
一階層に入ると見渡す限りの海が広がっている。
「本当に海なんですね。このダンジョン。」
「話には聞いていましたが、この光景を見て攻略しようという気が起きませんね。」
「流石、ルノさんですね。」
何が流石なのかよく分からんが、みんなこのダンジョンに来るのは初めてらしい。全く利用価値なしという話だったので、興味がなかったそうだ。
「では予定通り行きましょう。シュバルツの影に皆さん入ってください。三時間ほどで二階層に到着しますので。」
全員影の中に入ったのを確認して俺は二階層の方角に走り出した。
方角をこまめに確認しながら問題なく二階層への階段へと辿り着いた。
ここでみんなに出てきてもらうことにした。
『シュバルツ、みんなに出てきてもらってくれ。』
シュバルツが俺の影から出てきた。そしてシュバルツの影からみんながぞろぞろ出てくる。
「着いたのですか?入り口と全く光景が変わりませんね。」
「でも確かに階段が降りる方になってますね。」
「よくこんな階層を迷わず探索したものですね。」
みんながそれぞれの感想を述べている。
「そういえば一階層のボスっぽい魔物が復活しているようなのですが、討伐しますか?その辺に泳いでいますが。」
「キラーシャークでしたか。どんな魔物なのか見てみたいので、討伐お願いしてもよろしいですか?」
「分かりました。ではちょっと行ってきますね。」
みんなが見てるとなんか緊張するなあ。前回と同じように討伐するかな。
海の上でサメが出てくるのを待つ。程なくして飛び上がってきたので、障壁を展開して刺さってもらう。そこへロッドの先端で脳天をブスッとな。すぐにドロップ品が海に落ちないように障壁を大きめに展開する。
ドロップ品はサメのヒレが二つとサメ肉、魔石だった。フカヒレは食べたいが加工の仕方が分からないので、市場で買い取ってもらおう。そして加工済みのフカヒレを買おう。
「戻りました。サメのヒレと肉と魔石がドロップしましたよ。」
「ドロップ品はルノさんが持っていってください。それにしても変わった戦い方ですね。」
「コントを見ているようでした。」
「あれで海の上を走ったのか~。」
確かに獅子奮迅の戦いをしたとは言えないな。でもこの討伐方法が一番楽だと思うんだよな。
「では二階層に降りましょうか。」
景色が変わって森ゾーンの二階層だ。
「おお~。海が森になった。ダンジョンって不思議~。」
「聞いていたとおりすごい数の魔物の気配ですね。」
「では皆さん。これからお仕事の時間です。」
リーダーのチャールズさんから号令がかかる。
「事前に話しましたが、今回の出張目的は二階層の魔物の間引きと三階層への階段の捜索です。滞在期間は一週間として、早い段階で目的が達成されれば三階層の情報収集を行います。」
「夕方には必ずここに戻ってくるように。ソフィーはシルビアの指示に従うようにしてください。各自無理のない範囲で安全に探索を行ってください。では解散。」
そしてみんな違う方向に散っていった。ソフィーちゃんはシルビアさんについていくようだ。
ちょっと待って!みんなで一緒に探索するんじゃないの?パーティを組んで連携して戦うもんだと思ってたよ!それに俺の護衛はないのか!俺死んだらみんな帰れなくなるぞ!
こんな魔境で俺はどうしたらいいのかと思っていると、もう戦闘音があちこちで聞こえ始めた。
あっちでは雷が鳴り響いている。こっちでは爆発音が聞こえる。あ、地震かな、地面が揺れてる。
魔物も怖いが、俺が下手に彷徨くと他の人の攻撃に巻き込まれる可能性がありそうだ。
うーん、どうしようか。空からの探索も危険だよな。空中だと丸見えだから強力な飛行系の魔物が飛んでくるかもしれない。選択肢は二つだ。戻って一階層の探索をするか、前回同様に慎重に二階層の探索をするかだ。
何もせず待つという選択肢はない。みんなが仕事してる時に休むのはなんか嫌だ。
悩んだ結果、二階層の探索をすることにした。進む方向は巻き込まれる危険性の高いシルビアさんとキアラさんの方向を避けて、ルーベンさんとロドリゴさんの間の方向を選んだ。
『よし、俺達も行くぞ。シュバルツ、デュンケル、頼りにしてるぞ。』
『ここで待ってた方がいいですよ、主殿。アーマードゴリラ以上の魔物に遭遇したらどうするんですか。我々はあの化け物のような方々と違って凡人なのですよ?』
霊獣は凡人ではないだろう!自信を持て!シュバルツ!
『危険は承知だ。だが、シュバルツの気配察知なら必ず敵より先に気配に気付けるだろう。駄目そうな相手なら避ければいい。今回は前回のような無茶はしない。』
『ああ、また私が大活躍してしまうんですね。今夜の夕食はホタテのバター醤油焼きをお願いしますよ。』
慎重に木に身を隠しながら進む。近場は既にルーベンさん達が狩ったのだろう。少し先までは気配はない。
『主殿、この先にいる魔物は何とか大丈夫そうですよ。戦闘中の乱入の心配もなさそうです。』
『了解。静かに素早く討伐するぞ。レンタルパワーとサイレンス頼むな。』
俺の気配察知の範囲に入った。あれはオウルベアか。フクロウの顔にクマの体を持った魔物だな。ダンジョンだと普段見ない魔物が出てくるな。
『頑強Lv3、暗視Lv7、風魔法Lv4、気配察知Lv5、聴覚Lv8ですね。近接戦闘はオーガより下だと思って良さそうですね。』
多分もう気付かれてるな。奇襲は無理だ。一気に距離を詰めるか。風魔法を撃たれる前に先手を打とう。
ウィークポイントの発動準備をして一気に駆け出した。途中で敵もこちらを視認したようで、迎え撃つ構えをとった。頭部にウィークポイントをかけて頭上を飛び越えながら脳天に強打を打ち込んだ。
一撃で仕留めることができたようだ。敵は霧散して消えた。すぐにドロップ品を回収して身を隠し、周辺を警戒する。
『お見事です、主殿。先を行きましょう。』
その後もトレントやらトロールやら見たこと無い魔物ばかりだった。
トレントは近づくと枝を振り回してきて面倒だったので、離れてデュンケルに狙撃してもらった。動きが遅いので良い的だった。
強い魔物はシュバルツが察知した時点で進行方向を変えて避けた。その内の一匹は大きかったので離れている俺でも目視できた。二足歩行の牛ミノタウロスだ。だが、シュバルツ曰く普通のミノタウロスではないらしい。遠かったので看破はできなかったようだが、ミノタウロスの上位種だと思われるとのこと。
他の強い魔物の気配も『この気配ははグリフォンっぽい気がしますね』とか言っていたので、やはり相当ヤバい場所のようだった。
時間的にはまだ早かったが、それなりの数を狩ったので一旦戻ることにした。精神的な疲労が大きいのだ。ミノタウロスの上位種を見た後なんか、戦意を保つのに精一杯だった。
戻る道中も細心の注意を払った。一階層への階段が見えた時には緊張の糸が切れてへたり込んでしまった。




