第92話4-23船
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
前世はやんちゃだったけど、今のソウマも悪くは無いわよねぇ~(セキ談)
北のノージム大陸には普通に船が往来をしていたらしい。
魔王軍に占拠されていても住民の生活は今まで通り、むしろ今までの支配層が怠惰な管理をしていたのがしっかりとした管理下に置かれ人々の生活はその質が向上していたと言うのだから驚きだった。
「ミーニャって子は征服はすれど支配はしないって事かしら?」
「何それ? それじゃぁ世界征服する意味ないじゃない?」
シェルさんのその言葉にセキさんはあきれたようにそう言う。
でも確かにミーニャって思い付きでいろいろやるところあるから実は世界征服の後ってあんまり考えていないのかもしれない。
「でも、そうすると魔王軍に占拠された町はそのままにしておいた方が良いと言う事ですの?」
「下手に魔王軍の連中をしばくとサボの港町の様になってしまうからね。必要以上に戦闘もしない方が良いわね」
シェルさんはそう言ってもうすぐ着くエダーの港町を見ている。
今僕たちはエダーの港町に行く船の上にいる。
この海峡はとても短くて対岸の港町が見えるほどだった。
「シェルさぁ~ん、昔を思い出しても絶対に女神様のモノにはなりませんからぁ~! エダーに着いたらもう一度で良いですからチャンスをぉ~っ!!」
サボの港町で海に向かって叫んでいた姉さんは船に乗ってからはずっとシェルさんにしがみついて何かをお願いしている。
一体何なのだろう?
「ソ、ソウマ君は魔王のあの子を連れ戻してその後どうするつもりですの?」
僕が姉さんを見ながらそんな事を考えているとエマ―ジェリアさんが僕の隣にまで来てそう聞く。
僕はエマ―ジェリアさんに向き直ってちょっと考えてから言う。
「そうですね、今回は流石にミーニャも怒られて折檻部屋行きでしょうからそれが終わったらまた今まで通りの生活に戻りたいですね」
「いえ、そう言う意味では無くてその魔王の子とどう言う関係になるのですの?」
エマ―ジェリアさんはちょっとむくれてそう言う。
僕の答えがどうやら聞いていた質問と違っていたからみたいだ。
「えっと、ミーニャは幼馴染で大切な友達ですよ。それは村に戻っても同じです」
「‥‥‥友達ですの?」
「はい、僕にとって姉さんと同じ大切な」
そこまで聞いてエマ―ジェリアさんは大きくため息をつく。
そして僕のおでこに向かって手を伸ばし、ぴんっ! と人差し指で弾く。
「まったく、フェンリルさんもその魔王の子も報われないですわね。良いですのソウマ君。あなたより年上の私からの助言ですわ。大切な人は一人に決めなさいですわ。女の子はその言葉を誰よりもソウマ君から言ってもらうのを心待ちにしているのですわ。そしてその事はたった一人の女の子にしか言ってはだめですわ!」
不思議なもので、でこぴんってなぜか痛く感じる。
僕はエマ―ジェリアさんにでこぴんされた額を擦りながら首をかしげる。
「そうなんですか? 僕にとって大切な人は沢山いるのに?」
「それでもですわ!」
エマ―ジェリアさんにそう言われ僕はますます首をかしげる。
「困ったな、僕にとってエマ―ジェリアさんも(仲間として)大切な人なのに‥‥‥」
「な”っ!? //////」
何となく本心をつぶやいたらエマ―ジェリアさんが赤くなって僕をぽかぽかと殴りつける。
「ソウマ君! なんて事言うのですの!! 駄目ですわ、私にはシェル様と言うモノがいるのですわ!! そりゃぁシェル様がいなかったらちょっとは考えちゃいますけど‥‥‥ もう、ソウマ君って本当にお姉さんキラーなのですわっ!!」
ぷいっ!
エマ―ジェリアさんはそっぽを向いてそのままどこかへ行ってしまった。
代わりにセキさんがやって来た。
「あれぇ? またエマと喧嘩したの?」
「いえ、僕はそんなつもりなかったんですけどまた僕が変な事言っちゃったみたいで‥‥‥」
「あの子も難儀な子ねぇ。でもね、優しい子なのよエマって」
セキさんはそう言って向こうへぷんすか怒って行ってしまったエマさんを見る。
その表情はとてもやさしい眼差しだった。
「エマ―ジェリアさんってシェルさんのことが大好きなんですよね?」
「ええ、そうね。でもそれって憧れよ。何とか人として生きてはいけるけどエマは聖女としてあたしと生涯一緒にいなければならない。だから自由気ままなシェルに憧れているのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、そうよ。だからソウマもエマには優しくしてやってね。何ならソウマがエマをお嫁さんにもらってくれてもいいのよ?」
セキさんがそんな事言うから僕は驚く。
「セキさん、僕ってエマ―ジェリアさんに嫌われているんですよ? そんな事エマ―ジェリアさんに聞かれたらもの凄く怒られてまた当分口もきいてもらえませんってば! それにエマ―ジェリアさんは僕の事を手のかかる弟みたいだって言っていましたよ?」
「ソウマは可愛いからね。ついついみんなもかまいたくなるのよ。あたしもだけどね」
そう言ってセキさんはニカリと笑う。
そしてそのまま首に腕を回され、がしりっ! とセキさんに抱きかかえられる。
セキさんも姉さんと同じく大きな胸しているからその胸に押し付けられるけど、気をつけないとこの胸でも窒息しそうだ。
「ソウマは前世では凄くやんちゃだったの。神殿に会いに来てくれた時はしきりにあたしにプロポーズして来たんだけどね。でもこっちのソウマも嫌いじゃないわ!」
「はぁ? 僕がセキさんにプロポーズ!? 前世の僕何やってんだよ!!」
セキさんはあはははと笑いながら僕を放してくれた。
そして手を頭の上に載せてガシガシと撫でてから言う。
「すぐに死んじゃう人間でもソウマたちは生まれ変わってまたあたしに会いに来てくれる。過去を思い出してなくてもなんだかんだ言ってまた会いに来てくれる。だからあたしたちは長い生の中でも寂しくない。ありがとうね、ソウマ」
そう言ってセキさんは僕の額にキスしてくれた。
「あ”あぁぁぁぁぁっ!!!! セ、セキさん私のソウマに何してるんですかぁっ!?」
「ソ、ソウマ君! さっき私の事大切だって言っていたのにですわっ! セキにまでお姉さんキラーを発動させるなんてですわっ!!」
「あらあらあら~、ソウマって年上が好きなの?」
姉さんもエマ―ジェリアさんもシェルさんもいつの間にかこちらに来ていた。
セキさんはエマ―ジェリアさんに引きはがされ文句を言われている。
そして僕は姉さんに引っ張られ抱き着かれる。
「ぶっ!」
「もう、ソウマのいけずぅっ!!」
もうすぐ港に着くって言うのに僕たちは甲板の上で大騒ぎしているのだった。
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