第91話4-22海
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
はぁはぁ、お、お姉ちゃんがソウマを立派な『男』にしてあげるぅっ!!(フェンリル談)
「ソウマぁっ!」
姉さんはそう言って僕に抱き着いてくる。
「うわっ、ちょっと姉さん!?」
「大丈夫だから、お姉ちゃんがきっとソウマを立派な『男』にしてあげるからぁッ!!」
訳の分からない事を言いながら姉さんは僕に抱き着いているけど、なんか抱き着く姉さんが熱い?
これって本当に風邪ひいて熱が出てるんじゃないの!?
「姉さん、落ち着いて!」
「もうお姉ちゃん我慢できない! ソウマ、お姉ちゃんも『女』になるからね!!」
取り乱してきた?
まさか熱でおかしくなっている!?
僕がそう思って姉さんの肩に手を置きいったん離す。
すると姉さんの肩が震えている?
熱で寒くなっているのかな?
「ソ、ソウマ‥‥‥ お姉ちゃんソウマと‥‥‥」
そこまで言った姉さんから変な音がした。
ぷちんっ
「えっ?」
つぅうぅぅぅ~~
「あ、あれぇ??」
姉さんは顔を赤くしたままは鼻から鼻血をつぅうぅぅ~っと垂らし始めた。
「うわっ! 姉さん!!」
「あ、頭がぼうっとするぅ~ あ、あたしぃ~とうとうソウマとぉ~~」
ふらっ~
ぼふっ!
姉さんは、もの凄く幸せそうな表情でふらっとよろけて隣に倒れる。
「うわぁっ! 姉さんっ!!」
僕は慌てて姉さんを裏返し仰向けにするけど、他の人には見せられない幸せそうなゆるい顔で鼻血を流したまま気を失っている様だ。
僕は姉さんの額に手を当ててみるとかなり熱がある!?
とにかく安静にさせなきゃならないから布団をかけて鼻血を拭き取ってやってタオルを濡らして額に載せてやる。
「姉さんってば、風邪ひいてるなら無理しないで大人しくしなきゃダメだろうに! まったく、もうっ!」
僕は仕方なく姉さんの看病をするのだった。
* * * * *
「んっ? あ、あれ??」
聞こえてきたその声に僕も目が覚める。
「ああ、姉さんおはよう。どう? 熱はあの後すぐに下がったみたいだけど?」
僕は姉さんの隣で看病していたけど寝ちゃったみたいだった。
起き上がってベッドに腰掛け姉さんを見るとまだ少しぼぉ~っとしている。
「あ、あれ? 朝のコーヒー入れなきゃだっけ??」
「まだ寝ぼけてるの? 昨日はあんなに大騒ぎだったのに」
「えっ? も、もしかして私‥‥‥」
「大変だったよ、結構血も流れてて」
「!?」
姉さんは途端に真っ赤になってもじもじとし始めた。
そして僕をちらりちらり見ながら恐る恐る聞いてくる。
「あ、あのソウマ。お姉ちゃんちゃんとできた? その、うまくソウマをリードで来たかな?」
「はぁ? 何言ってるんだよ。結局は僕が最後まで姉さんの面倒見たんだよ? ちゃんと血だって奇麗に拭いてあげたしね。その後姉さんってば気を失っていたから寝かせてやったんだよ」
「!!」
姉さんはわなわなと震えていた。
そしてもの凄く嬉しそうにする。
「ちゃ、ちゃんとできたんだぁ‥‥‥良かった‥‥‥」
「そうもいかないよ、シーツ血で汚れちゃったもん。宿の人に怒られるかな? あ、そうだエマ―ジェリアさんに話して【浄化魔法】使ってもらえば奇麗になるかな?」
「ソ、ソウマっ! それだめ!! エマ―ジェリアさんに見せるのは恥ずかしい!!」
姉さんはそう言って僕に抱き着いてくる。
大きな姉さんが僕の胸のあたりにしがみついてくるなんてなんか変だな?
「うれしい‥‥‥とうとう私たちしちゃったんだね‥‥‥ きょ、姉弟だけどお姉ちゃん後悔ないよ? 立派なソウマのお嫁さんになって見せるから!!」
「はぁ?」
姉さんらしからぬ態度でなんか変な事言ってる。
僕は姉さんをまじまじと見るとうるんだ瞳で赤く成ったままにっこりとしている。
まだ熱があるのかな?
思わずおでことおでこをくっつけて姉さんの熱が有るかを確かめる。
「ソ、ソウマ、もしかしてまたしたくなっちゃったの!? い、いいよ、ソウマがしたいならお姉ちゃん何度でもして良いよ!!」
「なに言ってるか分からないけどまだ微熱があるみたいだね? シェルさんたちに言って出発を遅らせてもらおうよ、姉さんの風邪が治るまで」
僕がおでこから離れると姉さんは目を閉じ唇を突き出していたのをやめて瞳をぱちくりさせ始める。
「風邪?」
「うん、姉さん風邪みたいだったじゃない? だからあんな薄着はだめだって言ったのに。熱があるのを無理してお酒飲んだりお風呂入ったりするから鼻血まで出ちゃうし、その後倒れて気を失うし。体調が悪いんだったら無理しちゃだめじゃないか」
ビキッ!
そこまで言うと姉さんは固まった。
そしてギギギと首を回して周りの状況を見る。
昨晩押し倒された枕もとに姉さんが流した鼻血の跡がある。
仕方なしに鼻血をぬぐった布も床に落ちている。
脱ぎ散らかした服は僕が片付け、姉さんにはちゃんとした服を着せておいた。
姉さんはそれらを見てわなわなと震えている。
やっぱりまだ熱があって寒いのかな?
「ソ、ソウマぁ~~~~~~っ!!」
何故か姉さんはそう言って泣くのだった。
* * * * *
「で、結局フェンリルは風邪だったみたいでシーツを血で汚したのは鼻血だったって訳ね?」
「はい、でも風邪が治ったみたいなのになんかまだ姉さんの様子が変なんですよね?」
港で北のノージム大陸に行く船があるかどうか聞いていると姉さんは海に向かって叫んでいた。
「ソウマのいけずぅっ――――――っ!!!!」
まったくなんなんだろうね?
ああ、それと今朝はエマ―ジェリアさんもなんか変だった。
僕の顔を見るなり真っ赤になって絶対に目を合わせないようにしていた。
シェルさんやセキさんに朝の挨拶をするとやたらとニヤニヤして「どうだった?」なんて聞いてくるけど、どうもこうも大変だった事を言うとものすごく残念そうな顔をして後から下の食堂に降りて来た姉さんの肩に何も言わず手を置いていた。
その後昨日の事をみんなに話したらエマ―ジェリアさんがもの凄くほっとした顔していつも通りに戻った。
ほんと訳が分からないよ。
僕はいまだ海に向かって叫んでいる不可解な姉さんを見るのだった。
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