第82話4-13メッセンジャー
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
う~んソウマ君いつみても可愛い~♡
食べちゃいたいなぁ♡(リリス談)
『くはーっはっはっはっ! こりゃ駄目だっ!!』
どっかーんっ!
セキさんの【赤光土石流拳】が見事に悪魔将軍に決まってしまった。
怒涛の土石流のような拳の嵐に何故かやり切った表情の悪魔将軍がキラキラとフォーカスをかけながら「燃え尽きちまったぜ‥‥‥」と言うかの如く吹き飛ばされる。
「あっ、え、えぇとぉ‥‥‥」
技を放ったセキさんが拳を突き出したままの姿で固まる。
セキさん自身まさかこの一撃が決まるとは思っていなかったのだろう。
吹き飛ばされる悪魔将軍はキラキラと光の粒子に変わって消えて行ってしまった。
「よしっ! これでこの軍隊の将軍は討ち取ったわ! さあ残りもちゃっちゃと片付けましょう!!」
シェルさんはぐっとこぶしを握りそう言うけど、セキさんはまだ固まったままだ。
「こ、こんなの‥‥‥」
引き続きシェルさんの精霊魔法、姉さんのアイミとの同調で魔王軍は既に阿鼻叫喚と化している。
そんな中、セキさんはまだ固まったまま肩を震わせプルプルとしている。
「納得できなーぃぃっ!!!!」
竜の咆哮の如くセキさんの勝鬨の声が上がるのだった。
いや、無念の叫び声かな?
* * * * *
「ふう、これで大体の魔王軍は片付けたわね?」
「アイミ、ご苦労様」
ぴこっ!
シェルさんや姉さんは残りの悪魔たちの掃討をティナ軍に任せてぶつぶつ言っているセキさんと共に戻って来た。
既に戦争は終盤を迎えていて合戦の声も聞こえなくなってきた。
悪魔将軍を打ち取られた魔王軍は魔人もいなくなって大敗を喫していた。
「納得いかない‥‥‥ぶつぶつ」
「セキまだ言ってますの? 良いじゃないですの、これでティナの国に襲い来る脅威は退けたのですわ!」
「まあ今回のは本気の襲撃だったみたいだけど、流石にこのティナの国はそうそう簡単には抜けないわね?」
戻って来てもまだぶつぶつ言っているセキさんにあらかた回復魔法をかけ終わったエマ―ジェリアさんがそう言う。
シェルさんも終わったとばかりにポーチから水筒を引っ張り出し水を飲んでいる。
『全く、強い強いとは思っていたけどやっぱり規格外ねあんたたち』
その声はいきなり聞こえて来た。
驚き声の方を向くとピンク色の髪の毛をツインテールにしたミーニャくらいの女の子が立っていた。
「リリスさん!?」
『元気そうね、ソウマ君。他のも元気ありまくりね?』
リリスさんは腰に手を当て呆れるように言う。
「リリス! まさか私たちとやるつもり?」
『まさか! あんたら相手にしたらあたしなんか瞬殺よ!』
構えるシェルさんに慌てて手を前にして振るリリスさん。
魔王城に戻ってミーニャに「ハーピーの雫」を引き渡して僕のお願いを伝えてもらったはずなんだけどな。
「リリスさん、ちゃんとミーニャにはお願いしたんですか? これは一体どう言う事ですか!?」
『まぁまぁ、そう怒らないでよ。あたしはちゃんとソウマ君のお願いを伝えたわ。でも魔王様は聞いてくれなかった。早い所世界征服してソウマ君を迎え入れるんだって張り切っていたわ。でもまさかティナの国の戦争にソウマ君たちが加勢するとは思わなかった。はぁ~、これじゃぁやっぱり報告に戻らなきゃだわよねぇ~』
そう言ってリリスさんはがっくりと肩を落とす。
「リリス! ミーニャは何処にいるの!? いい加減にしないと本気で長老に折檻部屋に入れられるわよ!?」
姉さんがリリスさんに向かってそう叫ぶとリリスさんは肩をすくめてため息をつく。
『魔王様は魔王城にいるわよ。あたしたちサキュバスを呼んでいろいろと熱心にお勉強中。世界中のあらゆるそっちの本を掻き集め魔王城にこもっているわよ?』
そんな!
勉強嫌いのミーニャが勉強しているっ!?
僕は今まででミーニャに対して一番驚かされた。
いっつもいじめられるの助けてくれるからって宿題写させてとか言っていて全然自分から勉強する気が無かったミーニャが!!!?
「くっ! ミーニャってばそんなに熱心に!? 年下だからって知識は勝っていると思ったのに! こうなったらソウマ、お姉ちゃんと実戦でミーニャと差をつけるわよ!!」
何言ってるの?
姉さんだって勉強嫌いの癖に!
僕はジト目で姉さんを見るけど一体何の実戦でミーニャと差をつけるってんだよ?
「そう、魔王は動いていないのね? 空間魔法が使えるからてっきりあちらこちらと飛び回っているかと思ったけど」
シェルさんはリリスさんを見据えてそう言う。
だけどリリスさんはため息をつきながらこう答えた。
『魔王様は基本世界征服はあたしたちに任せっきりよ? まあ成果が出ないと消されちゃうからあたしたちも真剣だけどね?』
「そう、それであなたも世界征服に準じるって訳ね?」
そう言ってセキさんは両手に炎を灯す。
『ちょっ! 待ってよっ!! あたしは戦闘要員じゃないってば!! 魔王様に世界中に散らばるそう言った本や資料を掻き集めるように言われてるの!!』
セキさんのその様子にまたまた慌てるリリスさん。
「それでどうするつもりですの? 私たちと袂を分けたあなたが大人しくするつもりはないと思いますわ?」
エマ―ジェリアさんも既に神聖魔法を準備していて体の周りに聖なる光の弾がくるくると回っている。
あれって一撃でアークデーモンを消し飛ばしたやつだ!
リリスさんはそれを見てぎょっとする。
『本っ当にあんたらって危なっかしいわね! あたしはやる気は無いからね!! それよりソウマ君! 魔王様がもしソウマ君に出会ったら伝えてくれって言ってたわ!』
「ミーニャが僕に!? なんなんですリリスさん!?」
僕は姉さんやシェルさんを押し退けリリスさんに聞く。
『魔王様はこう言ったの、―― ソウマ君がもし戦争に加勢するなら侵攻は止める。でも元ルド王国に建てた魔王城で待っているから来てほしい ―― って。まあ、魔王様にしてみればソウマ君に万が一が有ったら大変だものね。世界征服はソウマ君が手に入ってからって事なんでしょうね?』
リリスさんはそう言ってニヤリとシェルさんたちを見る。
そして腰に手を当て直して胸を張り言う。
『だからあたしはあんたらとやる気は無いし、あたしを魔王城に大人しく返してもらいたいわね? この事を魔王様に伝えれば世界征服は一旦お休みになるわよ?』
「‥‥‥魔王は『魔人』をあれだけ一度にたくさん呼び出した。そして自らは魔王城にいる。魔王ミーニャは魔王イオマ以上に強いって訳ね」
「シェル、それって‥‥‥」
シェルさんは隙無く構えていたのを解く。
そしてセキさんも構えを解いてリリスさんを見る。
「分かったわ、リリスあなたには手出しをしないわ。すぐに魔王城に戻って私たちが行くのを待つように伝えなさい。必ずとっ捕まえて『魂の枷』をかけてあげるわ!」
『うふふふふっ、分かったわ。それじゃぁソウマ君、魔王様の後は私とね! それじゃぁねぇ~!!』
リリスさんはそう言いながら背中に翼を生やして飛び発って行ってしまった。
「シェル様、よろしいのですの?」
「これ以上魔王軍の侵攻をさせないためには仕方ないわ。いくら私たちが対処できても一度に複数の場所に現れたのでは間に合わないわ。そして魔王城でソウマを待つと言っているならこちらにとっては好都合。行くわよ元ルド王国へ!」
シェルさんはそう言て飛び去ってもう見えなくなったリリスさんを見る。
「ミーニャ‥‥‥ これは何としてもソウマの初めてを先にもらわなきゃ!」
向こうで姉さんがなんか気合入れている。
僕はシェルさん同様リリスさんが飛んで行った空を見るのだった。
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