第71話4-2相談
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
ふう、神殿に戻らなければですわ(エマージェリア談)
「シェル様、ベイベイに戻るなら神殿にも寄れませんかですわ?」
エマ―ジェリアさんは唐突にそう言い始めた。
僕たちは明日ここボヘーミャを出発してベイベイの街経由でティナの国に転移する予定だった。
しかしエマージェリアさんは神殿に戻りたいと言い出す。
「どうしたのよエマ?」
「実はそろそろ神殿で補給しなければならない頃ですわ」
「あ~、もうそんな時期か。だったら戻るしか無いわね」
学園長室でお茶をいただきながらそんな雑談をしているけど、一体何を補給しなきゃいけないのだろう、エマ―ジェリアさんは?
「また一年が過ぎると言うのですね。本当に月日の流れは速いものです」
学園長さんはそう言ってお茶をすする。
「エマ―ジェリアさん、一体神殿で何を補給するっていうんですか?」
姉さんはストレートにエマ―ジェリアさんに聞く。
するとエマ―ジェリアさんは少し憂鬱げに自分の胸に手を当て話始める。
「これは私が聖女と呼ばれる所以でもありますわ‥‥‥」
そう言ってエマ―ジェリアさんは語りだしたのだった。
* * * * *
女神教の総本山であるユーベルトの神殿は約千三百年前に古い女神たちの同意の元に世界中に在る女神教をまとめあげ、新たに一人の女神に全権を預けこの世を平和に導いてもらう事となった。
しかしその時に秘密結社ジュメルとか言うのがちょっかいを出してきたそうだ。
結果セキさんは神殿から離れられない状態になり、神殿に害成す者には容赦しない絶対的な守護者になった。
そして時は流れ十四年前、ハミルトン家に一人の令嬢が生まれる。
彼女は女神様に由来する血筋の家の生まれで、その時からその女神様によく似ていて将来きっと良き女神の信者になるだろうと言われていた。
そこで神殿に祝福を受けに行くために幼子を連れて行ったその時に、なんと賊に襲われてしまった。
賊の目的は何だったか今でも分からないもののその場に居合わせたエマ―ジェリアさんはその時に瀕死の重傷を受けてしまった。
それを見ていた神殿の守護者であるセキさんは自分の心臓をエマ―ジェリアさんに与えその傷をいやした。
しかしその絶大なる力のある赤竜の心臓はエマ―ジェリアさんを蝕み一命はとりとめたものの何時暴走するか分からない状態が続いた。
それを聞きつけたシェルさんは女神様に力を分け与えてもらいエマ―ジェリアさんの中にある赤竜の心臓を制御する為の魔晶石を埋め込んだ。
だけどその魔晶石は効果を有するのは一年。
なので毎年同じ頃にその魔晶石に神殿に納められている「女神様の涙」と言う魔結晶石から力を補充する必要がった。
「私は司祭様を上回る魔力を保有して偉大なる女神様の奇跡を起こせているのはセキの心臓のお陰ですわ。そしてセキは自分の心臓を私が生きている間は私に貸し与える事により私と一緒であれば神殿から出られると言う状況になったのですわ」
「まあ人間の寿命何てあたしらにしてみればほんの一瞬だし、呪いで神殿から出られないあたしにとっては悪くない話だったからね」
エマ―ジェリアさんのその話にセキさんは明日の天気の話でもするかのように軽く言う。
「そんな‥‥‥ だからエマージェリアさんとセキさんはいつも一緒なんですね?」
「ええ、セキには感謝していますわ。小さな頃からずっと一緒にいて、そして私を助けてくれますもの」
エマ―ジェリアさんはそう言ってセキさんを見てからシェルさんを見る。
「そしてシェル様が私が人として生きられるようにしてくれたのですわ‥‥‥」
うるうると泣きそうなエマージェリアさん。
そんな事が有ったのだとしんみりしてしまう僕と姉さん。
「だからいっそ私の人生そのものをシェル様にもらって欲しいのですわ! シェル様ーっ!!」
「こら、真面目な話しながら抱き着かない、エマっ!」
「まあ、結果エマはシェルにぞっこんなのよね~。面白いから見ている分には良いのだけど」
シェルさんに抱き着くエマ―ジェリアさんを見ながらセキさんはカラカラと笑う。
あっけにとられる僕。
そんな重い話をこの人たちは笑って話せている。
「でも、そこまで大変なら女神様が何とかしてくれてもいいのに」
ぴたっ!
姉さんのその言葉にシェルさんやセキさん、そして学園長さんは動きを止める。
「まあ、彼女はねぇ~」
「あの人忙しいしね」
「しばらく会っていませんが、今は致し方ありませんね」
途端に目線を泳がすシェルさんやセキさん、そしてお茶をまた注ぐ学園長さん。
はて?
何かまずい事でも姉さんは言ったのだろうか?
「ソウマ、お姉ちゃんなんかまずい事言ったかな?」
「分からないよ、でもなんか皆さんの雰囲気が‥‥‥」
困惑する僕たちを他所にシェルさんはびっと指を立てて言う。
「とにかく、魔王城に向かう前にユーベルトでエマの補給ね! ベイベイからならすぐだし、まずは神殿に行きましょう!」
その場の雰囲気が変になるのを無理やりシェルさんは変える。
首をかしげながらエマ―ジェリアさんを見ると下を向いて黙っている様だった。
なんか色々と複雑な事が有るみたいだけど僕たちはとにかくユーベルトの神殿に向かう事となったのだった。
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