第58話3-17エデルの村の正体
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
ぬっふっふっふっ、あたしにお任せあれ!(リリス談)
シェルさんに散々脅されたサスボの村の人たちは宿屋の食堂にがん首並べて正座させられていた。
「さて、それじゃぁこれは一体どう言う事か説明してもらいましょうか?」
シェルさんは椅子に座って足を組んで大きな胸を持ち上げるかのように腕組みをして村の人たちを見下ろしていた。
「は、はい、実はもうじき繁殖期が来まして我々サスボの村も生贄を準備しないと若い男がさらわれると言う事態が起こります。それでこの時期にこの村を訪れる旅人で若い男がいますと取り押さえ生贄に差し出していたのです」
村長のハリボと言う人は脂汗をだらだらと流しながらそう言う。
うーん、変な時期に来てしまったなぁ。
僕は率直にそう思う。
「生贄って、なにに生贄を差し出すのよ?」
「は、はい、ハーピーに差し出すのです」
『「「ハーピー!?」」』
シェルさんの質問に答えたハリボ村長のそれに思わずリリスさんや姉さん、そしてシェルさんが驚きの声を上げる。
「ハーピーが人の村を襲うって言うの?」
「はい、いや、実際にはこの先にあるエデルの村で済めばいいのですが最近あの村には若い男がいなくなりとうとうこのサスボの村にまでハーピーどもがやって来るようになったのです」
ハリボ村長のその説明に僕たちは顔を見合わせる。
「詳しく聞かせてもらいましょうか」
シェルさんのそれにハリボ村長は頷くのだった。
* * *
もともとこの先にある山岳地帯にはハーピーの生息する地域があった。
ハーピーは両手両足が鳥の様な怪物で何故かすべて雌だけらしい。
なので繁殖期になると人間の雄を襲って子供を作ると言うのだけど、昔はそれ程被害があったわけではないらしい。
しかしある時期を境にハーピーの数が増え、襲われた人間の男性も以前は繁殖期が終わると戻ってこれたのが戻る事が無くなってしまった。
それに悩んだサスボの村は村に被害がこれ以上出ない為に元気な若い男たちをこの先の山岳部に向かわせ繁殖期だけ住む仮の村を作った。
それがエデルの村だったらしい。
しかしそのエデルの村に長く住み着く男の人たちが出始め、そこで暮らしを始めると人口も増え完全に独立した村になったと言う。
そして数十年が過ぎたらしいけど、今度はそのエデルの村に男の人がなかなか生まれなくなりハーピーの繁殖期に耐えられなくなってきたらしい。
更に悪い事にエデンの村にいた若い男性はその数を著しく減らしとうとうこのサスボの村にまで影響が出始めたと言う事だった。
「昔はそれでも男たちは戻ってこれたそうですが、今は連れ去られたが最後二度と戻ってくることは無いのです。そうして数年、このサスボの村もいよいよ若い男が少なくなってきてしまったのです」
「それで背に腹代えられなくなってこんな事を始めた訳ね?」
シェルさんにそう言われ村長はうなだれるように「はい」とだけ言った。
大変そうなことは僕でもわかる。
でもだからと言って訪れた旅人を生贄にしてしまうのは良くないと思う。
「でもこれでハーピーの居場所がわかりそうね? 目的の『ハーピーの雫』ってのも手に入れられそうですね、シェルさん?」
「まあそうね、でもそれにはまずハーピーを捕らえなきゃいけないのよ。しかも生娘のハーピーをね」
姉さんの言葉にシェルさんは相槌を打つ。
『生娘? どう言う事よ?』
リリスさんは首をかしげセキさんに聞く。
するとセキさんは僕をちらっと見てからリリスさんを呼び寄せ耳打ちする。
その隣にいるエマ―ジェリアさんは真っ赤になって目線を泳がす。
『なるほど! そう言うアイテムだったっわけね!! だったらこれはあたしの領分じゃん! 任せてたっぷりと搾り取ってあげるわ!!』
何やらリリスさんは嬉しそうに親指立てている。
うーん、「ハーピーの雫」ってまさか生き血とか?
僕はぞっとなり思わず後ずさってしまう。
ミーニャったらなんてもの欲しがるんだよ!
少しミーニャの感性が分からなくなってきたよ。
「でもまあこれで目星がつきそうね? ハリボ村長、エデルの村にまで案内してもらえるわね?」
「は、はいっ! 勿論でございます!! ですからどうか今回の件は‥‥‥」
ハリボ村長はそう言って床に頭が着くほどの土下座をする。
するとシェルさんはにまぁ~っと笑ってから言う。
「とりあえず薬の入っていないお酒と食べ物ね。中途半端な食事だったのでまだお腹が空いたままよ」
そう言って深夜にもかかわらずお酒と料理を出させ宴会が始まる。
僕は姉さんを見ながら思う。
やっぱりこれじゃぁ太っちゃうんじゃないかなと。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。
蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。
どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。




