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第56話3-15フェンリル救出作戦

魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。

お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?

熱い姉弟(師弟)の物語です。




面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


どこ太ったてのよぉっ!?(フェンリル談)


 『ぷっはぁ~、意外だったけどまぁまぁだったわね』



 リリスさんが戻って来た。

 僕はちょっと引き気味でリリスさんの口元を見る。



 生で食べるのかな、やっぱり?

 でも口元には血はついていないし‥‥‥



 僕がそんな事を思っているとそれに気付いたリリスさんがずいっと僕に近づく。


 『なになに? 興味あるの? もう可愛いんだから! ああぁ、魔王様の思い人で無きゃすぐにでも食べちゃうのにぃ』


 「ひっ! ぼ、僕って美味しくないですよっ!!」


 思わず後ずさる僕だけどリリスさんはカラカラと笑っている。

 そしてまたずいっと僕に近づき胸に指を立てて言う。


 『大丈夫だってぇ、今は手を出さないわよ。魔王様の後にちょ~っとだけ味見させてよね? 大丈夫、痛くしないからぁ~』


 にっこりとほほ笑み目がハートの様な形になり僕を見る。

 その眼を見るとちょっとドキッとするけど食べられるのはまっぴらごめんだよ!



 「そ、それよりリリスさん姉さんたちは何処なんですか!?」


 『あらやだ、君って意外と精神強いのね? 試しに魅了の力使ったけど反応しないのね? まあいいや、もしその気があればいつでも相手してあげるからね!』


 そう言って僕と距離を取るリリスさん。


 くるりと背を向け屋根の反対側へ行く。

 そして指さす一軒家はこの村でもかなり大きなところだった。



 『君の姉はあそこに捕まっているらしいわ。エルフたちも一緒だそうよ』


 「無事なんですか?」


 僕の質問にリリスさんは両手を軽く上げ肩をすくめる。

 

 『無事かどうかは分からないわ。でも早い所行かないとまずいんじゃない? 君の姉もどうなっちゃうかは想像つくんじゃないの?』



 リリスさんに言われて僕は焦る。


 姉さんに何かしたら大変な事になる!

 いや、ミーニャの噂じゃなくて赤髪の女が村を壊滅させたなんて話が広まる可能性だってある。

 シェルさんやエマ―ジェリアさん、そしてセキさんなんかは有名人みたいだから絶対に赤髪の女性が姉さんだってばれる!


 僕は慌ててリリスさんに言う。



 「この村が危ない! 早く姉さんたちを助け出さないと!!」



 『は? 君の姉さんが危ないのでしょ? 村が危ないって何!?』


 「いいから行きましょう! これ以上変な噂にさらに僕たちの噂が重なったら完全に折檻部屋送りだ!! それだけは何とか回避しないと!!」



 僕は村に有る折檻部屋を思い出す。

 誰が始めたか、あまりにも悪い事や村の評判を落とす事をした者はこの部屋に入れられてお仕置きをされる。

 

 今思い出しただけでも背筋が凍る。


 たまに折檻喰らう人の悲鳴や黒板を爪でひっかくような音が聞こえるあの部屋は村のみんながもの凄く恐れている。



 小首をかしげるリリスさんの手を取って僕は急ぎその建物へと向かうのだった。



 * * * 



 その建物に行くと扉の所に体格のいい男の人が二人立っていた。

 どうやら見張りのようだけど、この建物この時間にもかかわらず明かりが煌々とつく。

 どうやら結構な人がいるみたい。



 「うーん、忍び入るには難しいかな?」


 『あら、何ならあの二人はあたしに任せてみる?』


 リリスさんはそう言ってすっと見張りの男の人の前に出る。

 そしてマントを外すと下着姿と思うような格好になった。



 いきなり出てきたリリスさんに見張りの二人も驚くけどそれ以上にリリスさんがいきなり下着姿みたいになったからもっと驚いている様だった。



 『うふっ、良い夢見させてあげるわよ?』



 そう言って指を立ててひょいひょいっとこっちへ来いと言わんばかりに呼び寄せる。

 すると見張りの男の人二人はまるで何かに取り憑かれたかのように両手をぶらーんとさせてよろよろとリリスさんに近づく。



 『いい子ね、さあ良い夢見ながら眠りなさい!』



 二人がリリスさんの前まで来たらリリスさんはふぅっと口からピンク色の煙を吐く。

 その煙を顔にかけられた二人はその場で倒れてしまった。



 まさか、殺しちゃったの!?



 慌てて近寄る僕だったけどよくよく見れば眠っているみたい。

 ほっとしながらリリスさんに聞く。


 「何をしたんですか?」


 『ああ、あたしたちサキュバスの使える技の一つよ。あたしたちのこの甘い吐息を吸うと深い眠りに着けるの。そしていい夢が見られるって訳なのよ、その間に美味しく頂くのだけどね』


 「リ、リリスさんまさかこの人たちも食べる気じゃないでしょうね?」


 するとリリスさんはきょとんとして僕を見る。



 『なになに? ひょっとしてやきもち? もう、可愛いんだからぁ、お姉さん本気にしちゃうぞ? 大丈夫、食べないって。君だったら容赦なく食べちゃうんだけどなぁ~』


 

 ニヤリと笑うリリスさんに僕はびくっとなりながら一歩引く。

 そして慌てて建物の中の様子を覗きに行く。



 見れば扉を入ってすぐに広間になっている様だった。

 そこには人がいないみたいだけど明かりが灯っている。


 扉に手をかけ引いてみればすんなりと開いた。


 僕とマントを拾って着込んだリリスさんはさっそく中に忍び込み様子をうかがう。

 どうやら奥の部屋に誰かいるみたいだ。


 そっとそちらにまで行くと話し声が聞こえてくる。

 聞き耳を立ててみれば男の人の声だった。



 ―― 村長、あの娘たちどうするんですか? 流石にあの男の子がいなくなったら騒ぐでしょう? ――


 ―― しかしこれ以上村の若い男を失うわけには行かない。可哀そうだが今年はあの子を生贄に何とかしのがないとならん。彼女たちには可哀そうだが盗賊たちに引き渡してしまって始末してもらおう‥‥‥ ――



 なんかすごい事言っている!!


 あの男の子って僕の事だよね?

 それに姉さんたちを盗賊に引き渡す?

 悪い人たちだからきっと姉さんたちもひどい目に合っちゃうよ!


 ‥‥‥いや、盗賊だったら盗賊が酷い目に合っちゃうかな?

 その前に姉さんたちにこの人たち、村長さんて言っていたからその人たちみんな酷い目に合っちゃうよ?


 うーん、どうしたものか。

 とりあえず姉さんたちを探し出してシェルさんたちにこの村長さんを懲らしめてもらう方が良いのかな?


 穏便に。


 ‥‥‥穏便には行かないかなぁ。




 「おいっ!」



 僕は扉の前でそんな事を思案していたらいきなり声を掛けられた。

 びくっとなってリリスさん共々後ろを振り返ると男の人が僕たちに向かって来ていた。



 「見つかっちゃった!」


 『仕方ないわね、ソウマ君は下がっていて!』



 そう言ってリリスさんは先ほどと同じようにマントをはぎ取るけど数人いた男の人たちは驚くことなくそのまま突っ掛かって来た。



 『なっ!? あたしのこの姿見ても躊躇しない!?』


 「何言ってるこのガキ? そんなつるペタの裸見たって驚かんわ!」



 『なんですってぇ!? こっちの方が男受けするってのに!! あんたたちホモなんじゃない!?』



 するとその男の人たちはびくっとなって立ち止まる。



 「な、何故俺の隠れた趣味を!?」


 「村には若くてかわいい男の子が少ないからそっちに目覚めてしまうのを何故に知っている!?」


 「くそう、俺は遠くから見ているだけ満足できるタイプなのに!」 



 『本物だったのかいっ!? はっ!? ソウマ君のお尻が危ない!! ソウマ君、ここはあたしに任せて逃げてっ!』



 なんだか良く分からないけど、とにかく姉さんたちを探し出す事の方が先だ!

 僕はこの場をリリスさんに任せて隣の部屋へ行こうとした。



 ばんっ!



 「何事だ騒がしい!」


 いきなり扉が開いて年輩の男の人が出てきた。

 恰幅の良いこの人がもしかして村長さん?


 だったら!



 「ガレント流無手三十六式が一つ、ダガーっ!」



 僕はすぐにガレント流体術、無手の技を繰り出す。

 ポンとその人を押してからそのまま肘打ちを入れる。

 すると簡単に技が入ってこの人は「うっ!」と唸ってそのまま気を失う。


 「村長!」


 後ろにもう一人いるけど驚いている隙に同じ技を繰り出しこの人も気絶させる。



 うん、この技初めて上手く行った!

 村ではまず当たらなかったけど流石に意表を突いたから上手く決まった!



 僕は部屋の中の様子を見るけど他には人はいないようだ。


 急ぎ他の部屋を探してみると最初の部屋で姉さんがベッドに寝かされているのを見つける。

 僕と同じく麻紐で縛られているけどこれじゃすぐに断ち切られて大暴れ始めちゃうよ?



 「姉さん、姉さん!!」



 紐をほどいてから姉さんを揺り起こす。

 しかしなかなか起きない。


 「姉さん、姉さんてばっ!!」


 「う、うぅ~ん‥‥‥ ソウマぁ~?」


 「起きてよ姉さん!!」


 「うれしい、やっとソウマがその気になってくれたのねぇ~。ん~っ!」


 寝ぼけた姉さんは僕の首に手を回し引き寄せる。

 そして‥‥‥

 


 ぶむちゅぅ~っ!!



 そしていきなりキスして来たぁ!?



 「むぐぐぅぅうう、ぷはぁっ! 姉さん何寝ぼけてんだよ!!」


 「う~ん、ソウマぁ~♡」



 何とか姉さんを引き離す僕。

 それでもまだキスしてこようとする。


 仕方ない、まだ寝ぼけているみたいだから言ってやろうか。

 僕は姉さんがまどろんだような目をしている所へそっと言う。



 「姉さん、最近太ったよね?」



 「!?」



 姉さんが慌てて起き上がり自分のお腹を触る。


 「なになに!? 何処!? お姉ちゃんどこ太ったの!? ソウマってスタイル悪くなったお姉ちゃん嫌い? ねえねぇ、ソウマぁ~っ!!」



 ふう、やっと目が覚めたか。

 全く姉さんときたら。



 姉さんは僕を見るとふるふると涙目になる。


 「ソウマぁ~お姉ちゃんどこ太ったって言うのよぉ~っ!!」


 「姉さん、いいから落ち着きなってば。早い所シェルさんたちも助け出さなきゃだよ!」


 僕がそう言って初めて姉さんは周りをきょろきょろと見渡す。


 「あ、あれ? ここ何処?」


 「僕たち村の人たちに捕まって生贄にされちゃうらしいよ? 早い所シェルさんたちも助け出さなきゃ!」




 僕はそう言ってすぐに別の部屋に向かうのだった。 



蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そしていきなりキスして来たぁ!?  間違いなく魔王は女のカンで察知しましたな。 ????「………………この感覚は? まさかアイツ……! あの女…………あのオンナァッ!!」
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