第4話1-4冒険者登録
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
田舎者ってなめられない様にしなきゃ!(フェンリル談)
「やばいやばい! ミーニャの事すっかり忘れてた!」
「ね、姉さん声が大きいって。それよりどうしよう? ミーニャが魔王になってホリゾン公国を襲ったのかな?」
僕たちはこそこそと近くにいる冒険者たちが話していた魔王復活の噂を聞きながら頭を抱えている。
どうやら既に被害が出始めているようで北の方は音信不通になっているらしい。
「と、とにかく情報が必要ね。えーと確か先生は情報は『冒険者ギルド』って所に登録して冒険者になると情報も仕事も見つかるって言ってたわよね?」
「うん、ノルウェンほどの大都会だよ、きっと『冒険者ギルド』ってところもあるはずだよね?」
とにかく村を出てまだまだ右も左も分からない僕たち。
先生にいろいろと教えてもらっていたけどやっぱり分からないことだらけ。
ここは言われた通り「冒険者ギルド」に行ってみるしかない。
「だけど、『冒険者ギルド』って何処に有るのだろう?」
「じゃあ、その辺の人に聞いてみましょうよ」
姉さんはそう言って立ち上がり近くのテーブルにいる冒険者っぽい人たちに話をする。
「あのぉ~ちょっとすみません。お尋ねしたい事が有るんですが‥‥‥」
「ん? 何だい嬢ちゃん? おお!? えらいべっぴんさんじゃねーか!」
「どうしたんだい嬢ちゃん?」
「俺たちに何か用かい?」
三人組のおじさんたちはフェンリル姉さんに注目する。
「あ、あの、私たち訳有って冒険者に成りたいんですがこの街の『冒険者ギルド』ってどこに有るのですか?」
「冒険者ぁ?」
「嬢ちゃん、そんな細っこい腕で冒険者になるつもりか?」
「やめといた方が良いぞ? 冒険者ってのはそんなにいいもんじゃないからな? それに嬢ちゃんの美貌ならどっかの貴族か何かに取り入って玉の輿になった方がはえーぞ?」
げたげたげた。
そう言われ大いに笑われる。
「い、良いじゃないのあたしが冒険者になったって!」
「まあ、個人の自由だが『冒険者ギルド』はこの前の通りを右に行ってしばらく行けば分かるぞ。看板が有るしいつもそれっぽい連中が出入りしているからな。それより嬢ちゃん、俺らと一緒に飲まないか? おごるぜぇ」
「いえ、遠慮しておくわ。ソウマも待たせているしね。ありがと」
そう言って姉さんは戻って来た。
「とにかく明日はその『冒険者ギルド』ってのに行きましょう。だから今日は早めに寝ましょうよ。そ、それで、も、もしよければ一緒に寝ない?」
「は? せっかくベッドが二つもあるんだもの別々で寝ようよ。ねえさん一緒に寝ると必ず抱き着いてくるから寝苦しいのだもの」
「ううぅ、ソウマのいけずぅ‥‥‥」
僕たちは食事を済ませその日は早めに休むのだった。
* * * * *
「こ、ここが『冒険者ギルド』ね!!」
昨日のおじさんたちに教えてもらうまでも無く「冒険者ギルド」はすぐに見つかった。
だって宿屋からたったの三軒向こう側になるのだもの。
今朝は緊張して朝早くから起きて準備して一番乗りで「冒険者ギルド」ってのに行こうって張り切っていた姉さんだったけどこれじゃちょっと拍子抜けかな?
「そ、ソウマ、お姉ちゃんのかっこう変じゃないかな? 田舎者っぽくないかな? あ、一応香水はつけたけどもっと付けた方が良いかな??」
うん、いつも以上に興奮気味みたい。
まだ開いていないその扉の前で僕たち二人は並んで待っている。
すると中からガチャガチャ音がして扉が開いた。
中から奇麗なピシッとした服を着たお姉さんが出てきて扉を開放する。
そして看板の下に「営業中」の札を掲げる。
と、そのお姉さんは僕たちに気付いた。
「あら? こんな朝早くからお客さんかしら? あなたたちもしかして何かの依頼に来たの?」
年の頃二十歳くらいの大人のお姉さんはきれいなブロンドの髪の毛を頭の上に巻きあげてにっこりとした笑みで僕たちに聞いてくる。
うわぁ、美人。
姉さんやミーニャとは違った美人て初めて。
それになんて優しそうな笑顔何だろう?
ぎゅっ!
いきなり姉さんが僕の手を握って来た。
「あ、あの、私たち冒険者になりたくて来たのですが、ここで冒険者の登録すると情報とかお仕事とかもらえるって聞いて」
姉さん言われたそのお姉さんはにっこりとほほ笑んで「ああ、冒険者の登録の方ですね? どうぞ中へ」と言って僕たちを引き入れてくれた。
中に入ると一番奥にカウンターがあり向かって左に掲示板が有る。
所々にイスやテーブルが置かれなんか酒場っぽい感じがする。
さっきのお姉さんは僕たちを一番奥のカウンターにまで連れてきて自分は奥のカウンターに入る。
同じような服を着たやっぱり美人なお姉さんたちが数人掃除したりカウンターの奥で片づけをしたりと忙しそうだ。
「はい、それではいくつか聞かせてもらいます。まずはあなたたちの名前と年齢から」
「あ、はい、私はフェンリル、十七歳。そしてこっちはソウマ。私の弟で十二歳です」
「うーん、やっぱりそうですか。フェンリルさんは良いとしてそちらのソウマ君は冒険者適合年齢に達していませんね。規定では十五歳の成人を迎えないと冒険者にはなれないのですよ?」
「え?」
思わず固まる姉さん。
そんな決まりがあったとはね。
じゃあ、僕は冒険者になれないんだ。
「あ、あの、そこを何とか出来ないのでしょうか?」
「ごめんなさいね、これは決まり事でそこを勝手に融通を効かせたらギルド全体の信用問題になってしまうの。それでどうします? フェンリルさんだけでも登録を済ませますか?」
決まりじゃ仕方ないな。
僕は仕方無しに姉さんを見る。
すると姉さんは受付のお姉さんにこっそりと聞く。
「あの、じゃあ登録はあたしだけでお願いします。それでこれは個人的な話なんですけど、もしあたしが冒険者登録して仕事を受けて弟に手伝わせた場合どうなるんでしょうか?」
「うーん、あまり大きな声では言えませんが解釈を変えると仕事を受けた冒険者が必要に応じて人を雇ったという考えにないますね。だから成功報酬はその冒険者にだけ支払われますが同行した人物の管理、安全、安否の面はギルドは全く知らず関与しないと言う事になっちゃいますよ? ただ、それは同行者にはいろいろと不都合で例えば行方不明時には登録の冒険者だけしか捜査対象にならないとかになっちゃうんですよ」
こっそりと受付のお姉さんも姉さんに答えてくれる。
すると姉さんは満足そうにして「なら問題無いわ」とだけ言って冒険者登録を始める。
「ではここに名前と鑑定の為に血を一滴もらいますね。それと登録料は銀貨三枚です」
「ええ? 血を採るのですか? それに登録料銀貨三枚って高く無いですか?」
姉さんは文句を言いながら指を出し、そして銀貨も出す。
「ごめんなさいね、これも決まりなの。その代わりこの冒険者カードを持っていればどこの場所に行ってもギルドが身元の証明をしてくれるし他の国に行くにもこれが身元証明になるから便利なんですよ?」
そう言って鑑定キットとか言うのを取り出しその台に冒険者のカードをセットする。
姉さんが出した指先をアルコールの綿でさっと拭き鋭利な針でちくっとさす。
「痛っ」
小さく痛みに悲鳴を上げる姉さんだったけど刺された指先には見る見る真っ赤な血の玉が出来てくる。
「それではフェンリルさん、その血をこのプレートに垂らしてください」
姉さんはその血をプレートに垂らすと鑑定キットの水晶が輝き始めた。
それはかなり強い赤い光で輝く。
すると受付のお姉さんは大いに驚いているみたい?
「こ、これはっ! フェンリルさん、あなたの魂は女神様につながっています! これはすごい!! このギルド始まって以来かも!!」
周りにいた同じ服を着たお姉さんたちも気づいたようでこちらに慌ててやって来る。
それとちらほらとやって来た冒険者っぽい人も。
「ななななな、何なんです? あたし何か悪いことしちゃいました!?」
「違います、フェンリルさん! あなたの魂が英雄クラスの素晴らしいものできっと将来名だたる冒険者になる可能性が高いのです!! あ、私ネミアって言います。どうぞ今後もごひいきに、フェンリルさん!」
ガシッと姉さんの両手を掴んでネミアさんはニコニコとする。
「え、ええ、よろしく」
姉さんは冒険者登録カードを引き渡されそそくさと僕の所まで逃げ帰って来る。
周りには騒ぎを聞きつけた人たちが集まって来るけど姉さんは僕を引っ張ってすぐに宿に逃げ帰った。
「あー、やっぱ都会は怖いわ。なにあれ? あたしにはそんな趣味は無いわよ!?」
何の趣味だろう?
僕は分からず首をかしげる。
「まあいいわ、これで冒険者にも成れたわけだし情報を集めながらしばらくお金稼ぎよ! 今日も銀貨三枚も使っちゃったものね!」
姉さんは元気にそう言うのだった。
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