第38話2-17シェルの接客
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
さあ、お客様私がお相手します!!(シェル談)
シェルさんはゼーラさんに連れられて魔王軍のお客様というのに会いに行く。
「だ、大丈夫なんですかシェルさん!?」
「相手はお客様よ、シーナ商会としてはお客様を大事にしなければいけない義務が有るの!」
なんかいつものシェルさんと違ってびしっとしている。
僕は姉さんと顔を見合わせセキさんやエマ―ジェリアさんと一緒にシェルさんに付いて行く。
そして程無く一階のお店広場に着いた。
「お客様、本日は我がシーナ商会にお越しいただき誠にありがとうございます」
シェルさんはその魔王軍のお客様ににこりと笑顔でお辞儀をした。
『おお、この店の者か? いやはや、主の命とは言えこう言う事は初めてでな。俺もどうしていいものか困っていたのだ』
ライオンだった。
いや、ライオンって見た事無いけど先生の所の本で見た挿絵そっくりの頭を持ったライオンの人だった。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
シェルさんはそう言ってにこりと微笑む。
するとこのライオン頭の人は少し赤くなり言いにくそうにする。
『あー、何だ。我が主はその、何と言ったらいいのか、一般的には声を大きくするにははばかれる物をご所望でな。 その、実は‥‥‥ あーっ! 恥ずかしくて俺の口からは言えーんッ!!』
そのライオン頭の人は両手で頭を抱えてブルンブルンと振る。
顔も真っ赤になってそれはもうぶるんぶるんと。
「お客様、どのようなものか私共のこっそりと教えていただけますか? 大丈夫です、私共はお客様の秘密は絶対に口外いたしませんし、なにも見ない、なにも聞かない、なにも知らないという事になりますのでご安心ください」
シェルさんが声を潜めそっとライオン頭の人に言う。
いや、ここまでしっかりと聞こえているんですけど‥‥‥
『むっ? そ、それは本当か? で、では言うぞ。その、は、ハーピーの‥‥‥ その、なんだ、そんなモノなんだが‥‥‥』
「お客様、ハーピーのお品物をお探しなのでしょうか?」
『う、うむ、そうなのだが、その、し、雫らしいのだが‥‥‥ あ”ー! 恥ずかしいわぁっ!!』
あの大きなライオン頭の魔王軍の人は両手を自分の顔に当ててさらにぶるんぶるんと頭を振っている。
なんか獅子舞みたいでちょっとおかしい。
「なるほど、お客様がお求めなのはあの超レアアイテム、『ハーピーの雫』ですね?」
『こ、こら、貴様も乙女であろう? そ、その様な言葉をたやすく口走るものではないぞ!』
「ご安心を、私は既に千五百歳を超えております。そちらのお話も全くと言っていいほど問題ございません。むしろエキスパートです!」
何故だろう、シェルさんがだんだんと饒舌になってきている?
しかも楽しそうだ??
『と、とは言え、その姿でその、そう言った物の話をされるのはな‥‥‥ あー、恥ずかしい。と、とにかくそれを所望する』
しかしここでシェルさんは小さくため息をついて深々と頭を下げる。
「大変申しあげにくいのですが、残念ながら『ハーピーの雫』は当店では取り扱っておりません。あのアイテムは非常に希少で我がシーナ商会でもなかなか入手が出来ないというまさしく超レアアイテムなのです」
『なんと! 住民どもに何でもそろうと聞いたこのシーナ商会ですら取り扱っておらぬというのか!? そこまで珍しい品物なのか!?』
ライオン頭の人は一転大慌てでシェルさんに向き直りそのことを確認する。
「はい、非常に残念ながら。しかし代わりの品もたくさん取り揃えております。ぬるぬるの品やぐっちょんぐっっちょんの品、火照りが止まらぬ品や使えばいちころ、テンションMAXの品々も取り扱っております!!」
『だーっ! だからうら若き乙女の姿でそう言う事を言うで無いわぁっ!』
「しかしお客様にご満足いただくには僭越ながら私の口からもっと詳しくお話をした方が良いかと! 道具もたくさん取り揃えております! 最新の物は魔力を微量に投入すれば心地よい振動から激しい振動まで味わえる物も開発済です!」
ぼぉぉぉおおおぉんっ!
あ、ライオン頭の人の頭から噴火するかのような煙が上がっている。
シェルさんの熱心な説明に感動でもしているのかな?
『き、貴様ぁーっ! だからやめんかっ! お、女子の口からそのようなはしたない言葉を発するでないわぁーっ!!』
ほとんど悲鳴のような事を叫びながら顔を真っ赤にしてそのライオン頭の人は頭を振り両手で顔を隠しながら慌てて店から逃げ出すように出て行ってしまった。
そしてそれを取り巻きだろうか、どう見ても上級悪魔の人たちも慌てて追って出て行く。
「またのご来店お待ちしております」
シェルさんは頭を下げて出て行ってしまったライオン頭の人を見送る。
うーん、何だったのだろう?
「そ、そうなんだ、シーナ商会でも『ハーピーの雫』は取り扱っていないんだ。残念ね」
「シェ、シェル様、そんないけない品までシーナ商会で取り扱っていただなんてですわ! ああ、シェル様に使ってもらいたいですわ!」
「あー、エマ。あんたまだ成人して無いでしょう? だめよあの品は大人にしか売らないのだか」
なんか姉さんもエマ―ジェリアさんもセキさんも何の話か分かっているみたい。
あのライオン頭の人も知っている大人じゃ無きゃ買っちゃいけないものって何なんだろうね?
って、そう言えばエマ―ジェリアさんもまだ大人じゃないんだよね?
「エマ―ジェリアさんってその品物知ってるんですか? エマ―ジェリアさんもまだ大人じゃ無いのに?」
「そ、ソウマ君は気にしなくていいのですわ! それに私だって来年には十五になりますわ! もうじき大人ですわ!!」
えーと、来年大人って事はエマ―ジェリアさんって十四歳?
ミーニャより一つ上、僕より二つ上のお姉さんだったんだ。
てっきり僕と同じかミーニャくらいだと思っていた。
「ま、エマのその姿じゃまだまだお子様と間違えられるわよね?」
セキさんはそう言ってからからと笑っている。
「どう言う意味ですの? そりゃぁセキやシェル様の様に立派ではありませんわ。でもまだまだ成長期ですわ!」
「はい? 何が成長期何ですか?」
「そ、ソウマ君には関係ありませんわ! ソウマ君のえっちぃっですわっ!!」
はい?
僕が何だって言うの?
思い切り首をかしげていると姉さんがまたまた抱き着てくる。
「ソウマ、もしかしてそう言うのが気になる? じゃあお姉ちゃんが手取り足取り教えてあげようか?」
「ああ、もう、姉さん抱き着いて来ないでって言ってるでしょうに! いいよ、姉さんがそう言う時は必ずろくでも無い事になるんだから!」
「もう、ソウマのいけずぅっ!!」
後ろから姉さんに抱きかかえられて頭に姉さんの胸乗せられたまま僕はライオン頭の人が出て行った店の扉を見るのだった。
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