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第210話9-3永久の思い

ついに女神エルハイミに会い、姉のフェンリルを返してもらおうとするソウマ。

そんなに簡単に返してもらえる?

ドタバタに拍車がかかりソウマの前途は多難です。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


ソウマ、私のティアナに対する思いを知ってですわ!(エルハイミ談)


 エルハイミねーちゃんは僕に向かって手を上げる。


 

 「ちょっ! エルハイミ母さん!!」


 「お姉さま!?」


 「えっですわ?」


 「主よ!」




 「エルハイミ! やめてっ!!」



 

 それを見てセキさんもミーニャもエマ―ジェリアさんも更には鬼神までもが声を上げる。

 そして姉さんが制止する中エルハイミねーちゃんが静かに言う。



 「ソウマに私の思いを、永久の思いを見てもらいますわ。私がどれだけティアナを愛しているか……」


 「えっ!?」



 その瞬間僕はまるで奈落に突き落とされるかのように意識が深く深く沈んでゆくのだった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 それはエルハイミねーちゃんの記憶だったのだろうか?



 最初はかわいらしい年上の女の子との出会いだった。

 誕生日会の来賓たちの挨拶を五歳と言う幼さの中、レディーとして立ち振る舞っていたその前に真赤な髪の毛で活発な印象のその女の子は現れた。

 そして、やがてエルハイミねーちゃんの心の中に深く深く入り込んでい行く。


 エルハイミねーちゃんはその女の子、ティアナ姫に仕えるうちに同じ同性なのに恋に落ちた。

 そして秘密結社ジュメルと言うこの世界の裏側で暗躍していた組織と対立して行きその思惑をことごとく打ち砕いて行った。


 その傍らには必ずティアナ姫がいた。


 そして「巨人戦争」ではティアナ姫の為に自らを犠牲にしてまでティアナ姫を異空間から助け出し代わりに自分がその異空間に飲み込まれ、そして遠い世界最大の迷宮に飛ばされる。

 

 ティアナ姫に会いたい一心で二年もの時をかけティアナ姫の元に戻り、そして世界を破滅に導く「女神の杖」を追って北の大地にまで行ってそこであの「狂気の巨人」と戦い女神になる力の根源とつながり始めた。


 それは全てティアナ姫の為に。


 そしてそんな努力をしてティアナ姫と静かな暮らしを望んでいたエルハイミねーちゃんの目の前で愛する最初のティナ姫はエルハイミねーちゃんを守るために死んだ。



 それからだ。


 エルハイミねーちゃんは転生するティアナ姫の為になんでもした。

 そのために人を捨て女神になる。


 異界の悪魔の王を倒し、何処へ転生するかもわからないティアナ姫を求めて。


 

 何度も何度も。



 そしてとうとう冥界の女神セミリア様にまで会いに行って僕たちジルの村にティアナ姫が転生しやすいようにする。

 それどころか、エルハイミねーちゃんに関わる人たち、力の有る者たちの転生を全てそこへ集中させ、この世が乱れない様に大いなる力を持った者たちを掻き集めた。


 この千三百年と言う時をティアナ姫の為だけにエルハイミねーちゃんはこの世界を維持し続けてきた。




 「私が欲しいのはティアナただ一人。ただそれだけですわ…… 私が私である理由。どんなに浮気されても、どんなに離れても、どんなに時が経っても私はティアナが欲しい。ただそれだけなのですわ」



 今までの壮絶な過去とエルハイミねーちゃんの強い思いを見せられ、僕は呆然とする。


 それは人が誰かを愛するなどと言う単純な物では無かった。

 全てが、そしてその今までの時間がただティアナ姫の為に。

 エルハイミねーちゃんがこんなに長い間どんなにつらくても、どんなに悲しくても、そしてどんなに苦しんでも最後にティアナ姫さえいればいいとその本心を僕に伝える。



 それはどんな人でも、いや、神様さえも入り込めない思いなのかもしれない。



 「でも、それでも……」


 「あなたにとってティアナは、姉であるフェンリルは何なのですの? 血肉を分けた姉弟であってもあなたは家族愛以上の愛情を姉であるフェンリルに、ティアナに向けている訳では無いのでしょう? だから、お願いですわ。フェンリルを、ティアナを私にくださいですわ。他の物なら何でもあなたにあげます。どうか、ティアナを私に……」



 僕の前にエルハイミねーちゃんが現れる。

 そして僕の前に膝をつき土下座して姉さんをくれと頼み込んでい来る。


 あのエルハイミねーちゃんが、女神様であるはずのエルハイミねーちゃんが土下座?


 そのあまりにもの思いに僕の心が動き始めた時だった。




 「ソウマ!」

 


  

 遠くからフェンリル姉さんの声が聞こえてくる。


 

 「ソウマ、お姉ちゃんはソウマが大好き! 愛してる、だから、お願い私を受け止めて!!」


 「ねぇ……さん……?」



 僕が思わずエルハイミねーちゃんのその思いに答えそうになった瞬間フェンリル姉さんの声が聞こえて来た。


 そして蘇る小さな頃からのフェンリル姉さんとの思い出。


 「僕は、僕は……」




 土下座をしたままのエルハイミねーちゃんに向かって僕はその気持ちを告げるのだった。  

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >ティアナ姫に会いたい一心で二年もの時をかけティアナ姫の元に戻り、そして世界を破滅に導く「女神の杖」を追って北の大地にまで行って  おーい、ここら辺に抜けがありますよー(真顔)  どーしよ…
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