第202話8-26期待
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
きぃいいいいいぃぃぃぃっ!
こうなったら結果が出るまでやり直しですわぁっ!(エマージェリア談)
「ああぁっ! 私の胸が、胸がぁ♪」
『ほーっほっほっほっほっ、さああなたも巨乳になりなさい!!』
エマ―ジェリアさんの押さえる胸がもごもごとうごめく。
このままだとエマ―ジェリアさんの胸も大きくなって身動きできなくなってしまう。
……でもなんか嬉しそうだな、エマ―ジェリアさん。
ピンチの割にはなんか嬉々としているように見える。
でもこのままじゃセキさんと同じく胸が大きくなりすぎて身動きできない程になってしまう。
「エマ―ジェリアさん!!」
「ああっ! 胸が大きくなってしまう私を見ないでですわ、ソウマ君。確かにそのうち大きくなって良妻賢母になり、たくさん子供を育てるのに必要ではありますが、そんなに真剣に見ないでですわ! 私たちまだ婚前ですのよ!!」
既にガリウルの術中にはまってしまったのかエマ―ジェリアさんは変な事を言い出している。
しかし僕たちがそんなこんな言っている間にエマ―ジェリアさんの胸が更にもごもごと動いて膨らみ始める。
「ああぁっ! 憧れの巨乳にこんな形でなるだなんてですわ!!」
『さあ、これでおしまいよ!!』
もごもごもごぉ……
ぴたっ!
「へっ、ですわ?」
『えっ? ええぇっ!?』
もごもごうごめいていたはずのエマ―ジェリアさんの胸はわずかに膨らんだだけで止まってしまった。
それはよくよく見なければ気付かな程度の大きさで止まった。
「エ、エマ―ジェリアさん??」
「こ、これは一体どう言う事ですの!? なんでこの程度で止まってしまうのですの!?」
『そ、そんな! 私のこの力は女性の潜在能力を高め、それを暴走させるはず。なのに何故あなたの胸はそれ以上大きく成らないの!?』
思わずエマ―ジェリアさんはぺたぺたと自分の胸をまさぐる。
そしてガリウルも片手を上げてもう一度何かをやっている様だが途中から両腕に変わって更に一生懸命に何かやっている。
しかしエマージェリアさんの胸はこれ以上変化する事は無かった。
『ま、まさか女性としての潜在能力がそれしかない!? なんて可哀そうなっ!!』
「なっ! ど、どう言う事ですの!? 女性としての潜在能力が無いとは一体どう言う事ですの!?」
ガリウルは背景を真っ黒にして稲妻を走らせ、自身は真っ白になり瞳も真っ白になる。
相当驚いている様だが、もしかしてエマ―ジェリアさんにはガリウルの攻撃が通じないのかな?
「……そんな、そんな事認められませんわぁっ!!」
どんっ!
「うわっ!」
エマ―ジェリアさんから怒涛の魔力が放たれる。
これってミーニャにも劣らないんじゃないの!?
「信じられませんわ、私だってまだまだ成長期! それが未来永劫この程度で止まるはずありませんわぁっ! 分かりましたわ、これは精神的攻撃ですわね? 私の精神を揺さぶるという戦略ですわねっ!?」
『あ、いや、その、ほんと、ごめん……』
「きぃいいいいいぃぃぃぃっ! もう一回、もう一回やりなさいですわぁっ!!」
鬼気迫るエマ―ジェリアさんのその迫力に思わずガリウルはもう一度両手を上げてエマ―ジェリアさんの胸を大きくしようとする。
するとまたまたエマージェリアさんの胸がもごもごとうごめくけど、やっぱりそれ以上大きくならなくて変わらなかった。
『え、えぇとぉ……』
「……やり直しなさいですわ。こうなったらこれ以上少しでも大きくなるまで何度でもやりなさいですわぁっ!!」
『ひ、ひぃぇえええええぇぇぇぇぇぇっ!!』
まるで地獄の底から聞こえるような声でエマ―ジェリアさんはガリウルに命令する。
ガリウルも慌てて何度も何度も同じように手をかざしエマ―ジェリアさんの胸を大きくしようとするけど、何度も何度もそれはもごもご動きはするモノのそれ以上は大きくならなかった。
なんか何度も何度もやりながらその都度エマ―ジェリアさんに怒られるガリウルはだんだんと涙目になって来た。
『もう無理です! 何度やっても潜在能力がなければだめなんですぅっ!!』
「そんな事ありませんわ! ほら、もう一回ですわっ!!」
えーと、これってどういう状況なんだろう……
ガリウルの攻撃で身動きできないのが回避できるってのは良い事のはずなのに、何でエマ―ジェリアさんはその術中にはまりたがるのだろう?
僕が不思議に思っていたら、セキさんとミーニャの胸とお尻がだんだんしぼんで元の大きさに戻ってゆく。
「くはぁ、元に戻った?」
「ソ、ソウマ君は見ちゃだめっ! お、お尻は自信ないのよ!!」
ぴこぴこ~
アイミが何処からか布を持ち出しセキさんとミーニャに渡している。
セキさんは面倒そうにそれであの大きな胸を縛るかのようにして、ミーニャはスカートの様に腰に巻き付ける。
「ふんっ! 聖女様は何をされておるのですかな?」
それまでずっとポージングばかりしていたフォトマス大司祭様が聞いてくる。
「さあ? ガリウルの術が効いていないようで良いはずなんですが、なんか何度もけしかけて…… はっ!? もしかしてセキさんたちが回復するのを身を挺して時間稼ぎを!?」
なるほど、ガリウルのあの攻撃をエマ―ジェリアさんに集中させ、セキさんやミーニャを回復させていたのか!
凄いぞエマージェリアさん!!
「いや、ソウマ君そんなんじゃないと思うけど……」
ミーニャがパタパタと顔の前で手を立てて左右に振っている。
しかしそれにフォトマス大司祭様が反応する。
「ぬぅうわぁるほどぉっ! さっすが聖女様! 自分の身を差し出してまで仲間を救うとはこのフォトマス、感動しましたぞぉっ!!」
むんっ!
言いながら今度はフォトマス大司祭様までガリウルの前に飛び出す。
「さぁ、ガリウルよ、聖女様だけでなくこの私も大胸筋を大きくするがよい! 聖女様ぁ、助太刀いたしますぞぉ、ふんっ!!」
『きゃぁあああぁぁぁぁっ! むさくるしい男がぁッ!! いやぁ、筋肉ムキムキで来ないでぇっ!!』
エマ―ジェリアさんに何度もやり直しをさせられて涙目だったガリウルの目の前に飛び出したフォトマス大司祭様は見事なポージングで大胸筋をぴくぴくさせてエマ―ジェリアさんの援護に入る。
いきなり現れたせいか、ガリウルも驚き涙目になって頭を抱えてその場にしゃがみ込み、いやいやと頭を振る。
『もういやぁ! 何こいつら頭おかし過ぎよぉっ! しかも醜いムキムキのおっさんなんて嫌ぁっ!!』
とことことこ。
ひょい
ペタ。
『あ”』
「ふう、これで良しっと。ソウマお兄ちゃん終わりましたよ?」
いくら身長が高くてもしゃがんでいやいやと頭を振っていたからタルメシアナちゃんでも手が届く。
ガリウルは簡単にその額のクリスタルをタルメシアナちゃんに触れられ大人しくなる。
「ちょっとフォトマス大司祭様、タルメシアナちゃん邪魔をしないでくださいですわ! 今重要な所なのですわっ!!」
それでもエマ―ジェリアさんは顔を赤くして鬼気迫る様子だった。
脱力して座り込んでいるガリウルに首元を掴んでがくがくと揺らし叫ぶ。
「もう一回、もう一回やり直しするのですわぁっ! 私だってまだ成長期ですわ、うちの家系だって、エスハイミ様もエムハイミ様もみんな平均より大きいのですわ! 私にだってまだ可能性はありますわぁっ!!!!」
ガリウルは既に白目向いて口から魂吐き出している。
うん、きっとエマ―ジェリアさんにゆすられたからだな。
僕はセキさんとミーニャを見る。
「エマ……」
「あーあぁ、ありゃぁずっとあのままね、あれ以上大きくならないって事ね?」
「私はまだまだこれからですから、ソウマお兄ちゃん安心してくださいね? お母さんもお母様もおっきいからソウマお兄ちゃんの所に行く頃には大きくなってますよ!」
うーん、ガリウルも大人しくなったんだし、もう先行った方がいいんじゃないだろうか?
そう思う僕だった。
「もう一度、もう一度やるのですわぁっ!!!!」
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