第1話1-1旅立ち
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
ぐふふっ、ソウマと二人っきり!(フェンリル談)
「ソウマ、荷物は全部持った? 忘れ物は無い? 荷物が重すぎるのならお姉ちゃんが持つけど?」
フェンリル姉さんはそう言いながら腰のポーチを叩く。
このポーチ、エルフ族が作った魔法のポーチで数次元ポケットの様になんでも入るしなんでも出せる。
そしてこの中に入れておいた食べ物とかは腐ることなくいつまでも新鮮だ。
僕は部屋の中を見渡す。
既に姉さんがポーチにいろいろ詰め込んだ後で夜逃げでもするかの様にこの家の荷物は無くなっている。
「姉さん、流石にいろいろと持ちすぎなんじゃない? いくらそのポーチが有ると言っても」
「何を言うの! 使い慣れたもので旅の途中でもソウマにちゃんとした食事やお洋服着せなきゃ恥ずかしいでしょ! 備えあれば憂い無し、ちゃんとソウマの新しいパンツだって買っておいたわ!」
いや、姉さんなんでパンツなの?
「ついでにお姉ちゃんの下着も新品よ」
何故そんな情報を?
何がうれしいのやら姉さんはウキウキと準備をしている。
僕はため息をついてお父さんの形見の剣を背中に背負ってみる。
‥‥‥お、重い。
お父さんはその昔この剣で竜を一刀両断したって言っていたらしい。
僕は両親の事を覚えていない。
だからせめて僕もこの剣がつかえるくらいにはなりたかったのだけど‥‥‥
「あら、ソウマ。その剣はやめておいた方が良いわよ? 圧縮された金属で出来ているから見た目と違って二百キロは有るわよ?」
そう言って姉さんはひょいっと僕の背中から剣を引き抜き元あった場所に置く。
どがぁん!
「ソウマにはこっちの剣の方が良いわね。まずはこれからかな?」
渡されたのはショートソード。
片手で使える初心者向けの剣。
「それは私が先生からもらった初めての剣よ。切れ味だけは抜群だから取り扱いには注意してね?」
ぼくは試しに剣を鞘から抜いてみる。
あれ?
何で鞘に魔法陣が書いてあるのかな?
僕はその辺に転がっていた薪をこの剣で切ってみる。
すぱっ!
はいっ?
なんで何の抵抗も無く切れるの!?
「ああ、ソウマその剣ね、使わない時は必ず専用の鞘にしまってね。じゃないとなんでも切っちゃうから。先生は確か『セブンソードの一本』だって言ってたわ」
セブンソードって、確か女神様の守護者で鬼神の剣じゃなかったっけ?
「なんでそんなものがここに有るの?」
「さあ? 先生の所にはおとぎ話で出てくる伝説の武具が沢山転がっているからねぇ。あたしのこの剣も『なぎなたソード』らしいわよ?」
そう言って姉さんは握り手しかない剣の柄を持つとシャコーンと言う音がして片刃の刃が飛び出した。
「なぎなたって言うより刀におまけの刃がついたような感じだね?」
「うん、でもこれってものすごく良い剣よ。あたしの全力でも折れないもの!」
僕は姉さんの練習風景を思い出していた。
危ないからって裏山行った時はその一撃で山が丘に成っちゃったりして木こりのボルドさんにしこたま怒られたっけ。
その時の剣は奇麗にぽっきり折れてたけど‥‥‥
「とにかくこれで準備良し! さあソウマ村の外に出るわよ! それとお姉ちゃんがソウマを立派な一人前の男にしてあげるからね!!」
なぜか顔を赤くして鼻息荒い姉さんは握りこぶしを胸の前に持ってきて気合を入れる。
そんな様子を眺めていた僕に気付いた姉さんはもじもじと聞いてくる。
「ね、ねぇ、ソウマ。お姉ちゃんの新しい下着って気にならない?」
また訳の分からない事言い始める姉さん。
僕は首を傾げる。
「なんで?」
「もう、ソウマのいけずぅ! まあいいわ、これから時間はたっぷりあるしね! さあ出発よ!!」
首をかしげる僕を引っ張って姉さんと僕はいよいよこの「ジルの村」を旅立った。
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