第197話8-21女神の間への道
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
じゃ、邪魔してやるのですわぁっ!(エムハイミ談)
「そんな! じゃあ急いでフェンリル姉さんを取り戻さなきゃだめじゃないか!?」
僕はそう言って思わず席を立つ。
だってこのままじゃフェンリル姉さんの魂が崩壊してしまう。
それはフェンリル姉さんが死んでしまうという事だ。
僕にとっての姉であり、母であり、そしてとても大切な人。
僕はいてもたってもいられなくなりエムハイミねーちゃんに聞く。
「エムハイミねーちゃん、その『女神の間への道』って何処にあるの!? 僕すぐに行きます!!」
「ソウマ…… 分かりましたわ、ついてきなさいですわ」
エムハイミねーちゃんはそうって立ち上がり僕たちを建物の中に呼び入れるのだった。
* * *
そこは宮殿のような大きな室内だった。
エムハイミねーちゃんはその更に奥へと進む。
するとそこにはまた大きな部屋になっていて祭壇のようなモノが有り、その一番奥に大きな鏡が有った。
エムハイミねーちゃんはその鏡に手をつくとまるで水面に手をついたかのように映っている姿がゆがむ。
「これで『女神の間への道』の扉は開きましたわ。良いですかソウマ、ガーディアンは全部で四人。彼ら彼女らは『女神の間』にいる本体である私、エルハイミの言う事しか聞かないようになっていますわ。ですからその額に有るクリスタルに私の血を引く者が触れて本体であるエルハイミと同等であることを認識させなければなりませんわ。彼らはとても強い。気をつけて行きなさいですわ」
エムハイミねーちゃんはそう言って鏡の前から下がって僕たちに道を開ける。
「エルハイミが何をしようとしているかは分かりませんわ。しかし同じ私である彼女が連結を切ってまでティアナを覚醒しようとしているのです、きっとその覚醒はかなりの苦戦をしているはずですわ。三百年前の約束が有るので本体のエルハイミも今度こそティアナを自分のモノにしようとしているはずですわ。きっとかなり強引な手段を使ってでも……」
言いながらエムハイミねーちゃんはぐっとこぶしを握り歯ぎしりをする。
もしかしてティアナ姫の魂を持つフェンリル姉さんを心配してくれているのかな?
「く、悔しいですわ! きっとティアナを覚醒させるためにあーんな事やこーんな事をして楽しみまくっているのですわ!! 今度のティアナの初めてだってもう奪っちゃたかもしれませんわ!! くぅうぅぅぅ、せめて連結してもらえていれば全ての感覚も共有出来てこの私だって我慢できたのに! ずるいですわエルハイミぃっ!!」
「へっ?」
「とにかくずるいのですわ! ソウマ、私はシェルの取り分としてティアナに触れる事が出来ませんが、感覚共有させてもらえないのなら邪魔してやるのですわ!! この私はティアナに触れないのだから感覚共有させてくれないエルハイミもティアナを奪われて辛い思いをすればいいのですわ!!」
憤然と怒こるエムハイミねーちゃん。
しかしそんなエムハイミねーちゃんをガシッとつかみシェルさんは言う。
「はいはい、それじゃあソウマたちは頑張ってね。私は私の取り分であるエムハイミと子作りしなきゃだから。さあ、エムハイミ! 今度こそ成功させるわよ! 朝までしっかりしてもらうんだから!!」
「シェ、シェルぅっ! ああぁ、ソウマお願いですわ、エルハイミにぎゃふんと言わせてやってくださいですわぁぁぁぁぁっ!!!!」
ずるずるずる……
そう最後に言いながらエムハイミねーちゃんはエスハイミねーちゃんの時と同じくシェルさんに連れ去られてしまった。
後ろで相変わらずエマ―ジェリアさんがキャーキャー言っているけど、僕たちはすぐにでもその「女神の間への道」へ行かなければいけない。
僕は目の前にある大きな鏡に飛び込むのだった。
* * * * *
鏡の中はとても不思議な感覚だった。
浮いているような、落ちていくような何とも言えない感覚。
歩いているのか立ち止まっているのかもわからないその感覚はしかしそれほど長くは続かなかった。
僕が気付けば磨かれた石畳の通路に立っていた。
そしてその通路の先に扉が見える。
これがガーディアンのいる場所なのかな?
「ソウマ君! よかった、急に行っちゃうんだもん」
「ソウマ君、ここはですわ……」
「お兄ちゃんおいてっちゃ嫌ですよ!」
「ふぇええぇぇ、ここが『女神の間への道』かよ? なんか普通の城か宮殿の通路みたいだな?」
『あ、あのぉ~あたしたちなんかが来て役に立つとは思えないんですが、ミーニャ様……』
『でもあのままあそこにいても女神様の気が変わって消されちゃうのも嫌ですしね』
ぴこぴこ~
「ああっ! 緊張のあまりお願いが出来ませんなんだ! しかし、女神様も御姿を初めて拝ませていただきましたが、聖女様とそっくりではありませぬか? だいぶ女神様象やその肖像画に比べお若かったですの?」
「ソウマ、気を付けて。この感じ、只者では無いわ!」
セキさんが最後にそう言うと目の前の扉が勝手に開いた。
そしてその奥にたたずむ人影が見える。
これが最初のガーディアン?
僕たちはその扉の向こうに行くのだった。
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