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第194話8-18天界

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


二割増しですの!?(エマージェリア談)


 るぎゃぁおおおおおおおぉぉぉぉっ!!


 ぐるがるるるるるるるるぅぅぅっ!!



 二体の竜は吠えながら相手を追うように飛び回る。

 そして最初にセキさんが仕掛けた!


 真っ赤な炎を吐き出しまるで炎の剣の様に真っ直ぐにそれを伸ばす。

 しかしサンダードラゴンはそれを軽く避け体にまとわりつかせた雷を口に集め一気に吐き出す。


 

 カッ!

 びかびかびかっ!!


 

 空気を焦がし放たれたその光はセキさんの炎より数段早い。

 それでもセキさんは体をひねらせその雷を避ける。

 そしてもう一度今度は炎の玉を連続で吐き出す。



 ずぼぼぼぼぼぼぼぼぉっ!

 


 まるで超強力なファイヤーボールのような炎弾はサンダードラゴンを追いながら雲や海面に到達すると大きな爆発音と共に弾ける。



 『あんたの雷は次まで時間がかかる、こっちはまだまだ炎を吐ける! 覚悟しなさい!!』


 『ふん、じゃじゃ馬が! すぐに雷が吐けなくともこう言う事も出来るのだ!!』



 炎の玉を吐き出すセキさんにサンダードラゴンは大きく弧を書いて突っ込んでくる。

 勿論セキさんもそれを迎え撃つためにまた連続で炎の玉を撃ちまくる。

 しかしサンダードラゴンは普通のドラゴンの三倍くらいの速さでそれをよけながらセキさんに迫る!



 『当たらなければどうと言う事は無いのだよ!』


 『くっ!』



 どがっ!



 そしてサンダードラゴンはセキさんの懐までやって来て後ろ足でセキさんのお腹を蹴る。



 『ぐっ!』


 『なにっ!? 我の蹴りが効かぬのか!?』



 サンダードラゴンに蹴られ弾かれたセキさんだったけどすぐに立て直して宙に留まる。

 そして器用に前足で口元をぬぐいペッっと血を吐く。



 『流石サンダードラゴン。速さだけはあたしたち古竜の中で一番。でもその一撃が軽いわ!!』


 『ぬかせ! 再生した赤竜は化け物か!? だが、これならどうだ!!』



 サンダードラゴンは上空に高く飛び上がりそこから体に雷をまとわせる。

 そして足から急降下をしながら叫ぶ。

 


 『必殺、稲妻雷撃キーックぅっ!!』


  

 飛び込む様に器用に片足を伸ばしバチバチと雷をスパークさせてセキさんに迫るサンダードラゴン!


 しかしセキさんは両の翼と前足を広げ叫ぶ。



 『退かない! 媚びない! 省みない! あたしにもう逃走の文字は無いのよ!!』



 どぼごがぁああああぁぁぁぁぁぁんっ!  



 サンダードラゴンの蹴りがセキさんの胸に炸裂する。

 しかしその蹴りはセキさんの厚い胸板に受け止められてしまう。



 『な、何だと!? 我が必殺の一撃を!?』


 『舐めるなぁ! エルハイミ母さんたちのお陰であたしの胸は再生前の二割増しよ!!』



 ぐぐぐぐぐぅ……


 ばんっ!!



 サンダードラゴンの蹴りはセキさんの胸で受け止められただけでなくそのままはじき返してしまった。

 確かにセキさんの胸は僕の姉さんより大きかった!

 なるほどね!!



 「な、何ですってぇ!? セキそれは本当ですの!?」



 そして何故か此処でエマ―ジェリアさんが過剰反応する!?



 「凄いわね、これが女神戦争で争い合った古龍たちの戦い……」

 

 「すげぇ、まるで神話を見ている様だ……」


 「むぅぇぐわぁみぃ様のお力は世界一ぃいいいいいいいぃぃぃっ!!!!」


 ミーニャもリュードさんもただ茫然とその戦いの行く末を見ている。

 そしてフォトマス大司祭様は両の手を大きく上にかかげびしぃっとしながら涙にそう言う。


 

 「凄い、これが竜同士の戦い…… こんな、こんな事が、お兄ちゃん!」


 タルメシアナちゃんは僕にしがみつきセキさんたちの戦いを見ながら叫ぶ。

 なんてすごい戦いなんだろう。

 まさしく神話が目の前で行われている。

 そして僕たちはその生き証人となる。



 『くうぅ、それでも、それでも我は負けるわけにはいかぬ! たとえこの身が滅びようとも女神様に救っていただいたこの命、今ここで使おうぞ!!』


 『ならばこちらもあたしの最大最強の技で応える! 唸れあたしのハート、燃え尽きるほどのヒート!』



 セキさんは胸を大きく膨らませ僕でもわかる程の魔力を高めている。

 サンダードラゴンも体にまとう雷をさらに増やしバチバチと体全体をスパークさせる。



 「次の一撃で決まりますわ!」


 「セキちゃん!!」


 「セキのやつ、行けるのか!?」


 僕たちが見守る中二体の竜はそれぞれどんどんと魔力を高めて行く。



 「駄目です、お兄ちゃん! あれではここら辺すべてが破壊される、すべてが消し飛んでしまいます!!」



 タルメシアナちゃんはガシッと僕にしがみつきそう訴えるけど、僕にどうにかできる訳も無い。



 「でもどうしたら!?」


 『古竜たちの吐き出す炎と雷がぶつかり合った瞬間横から本船の魔力増幅波動を照射する事によりその破壊的衝撃のベクトルを天空に放出する事が可能です』



 僕たちがなすすべもなく右往左往していたら「鋼の翼」がそう言ってくる。



 「『鋼の翼』、それは本当ですか!? どうやれば良いの!?」



 タルメシアナちゃんは急ぎ椅子に戻り「鋼の翼」にそう問いかける。

 すると「鋼の翼」はタルメシアナちゃんに答える。


 『双方の力がぶつかり合う場所を算出、本船の先端にある魔力増幅波動を打ち込めば破壊衝撃のベクトルを天空高くに飛散させられます。照準及びその照射タイミングは手動となります。水晶全面にトリガーを展開します。照射タイミング及び照準は指示します。しかし魔力増幅波動照射後に本船の魔力消費は著しく大きくなり一時的に本船は機能が停止します。よろしいですかマスター?』


 「それでもこの辺が塵となるよりはましです! ソウマお兄ちゃん、トリガーを!!」



 「ソウマ君!」


 「ソウマ君ですわ!」


 「ソウマ!!」


 『わわわわぁ、大変な事になっちゃた、ソウマ君あたしまだ消えたくないよ!』


 『そうですね、まだミーニャ様をいただいていませんものね、私もまだ消えたくないです』


 「女神様のお力は世界一ぃいいいいいぃぃっ!」


 ぴこぴこっ!



 みんなが僕を見る。

 僕は頷いて水晶の前に飛び出たボーガンのような取っ手を握る。



 「逃げちゃだめなんだ、逃げちゃ!」


 『予測地点、発射タイミングを指示します。中央の啓示点に丸い指示表示がされたらトリガーを引いてください』



 「鋼の翼」が僕にそう指示をしてくれる。

 僕は心の中で中央の啓示に丸い点が表示されたらトリガーを引くと何回も自分に言い聞かせながら発射のタイミングを待つ。



 「ソウマお兄ちゃん、この船の全ての魔力を託します、『鋼の翼』お願いです!」


 『イエス、マスター。予測地点表示、照射まで後五秒、四秒、三秒……』



 「鋼の翼」が秒読みに入った。

 僕は中央に表示されている点にふらふらとうごめく丸い支持表示が重なるのを待つ。


 そして窓の外では大きく咢を開いた赤竜のセキさんとサンダードラゴンがそのすべての力を解き放ちお互いに最大最強の竜の炎と雷を吐き出す。


 一直線に伸びる赤い炎と光る雷、それがぶつかる瞬間「鋼の翼」が秒読みを終える。



 『零!』



 くんっ!



 僕はその瞬間に中央の啓示点と丸い支持表示が重なった場所へトリガーを引く。

 すると「鋼の翼」の全ての魔力が先端の穴から波動となって照射された!



 カッ!


 どごぉがぁあああああぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!



 波動が照射されセキさんの炎とサンダードラゴンの雷とそして「鋼の翼」から放たれた魔力増幅波動が同じな所に重なる。

 一瞬時間が止まったのではないかと思うほどの光を放ちその破壊の衝撃波は一気に天空高くに放たれた。

 

 そしてそれはあの嵐をかすめ天空高くに飛び去って行き、しばらくするとまるで真っ暗な世界にいきなり花火が上がったかのように天空を白く光らせた。


 

 ぱぁああああぁぁぁぁぁん!

 


 『な、なにっ!?』


 『これはっ!? ソウマたちの仕業!? みんなは!?』



 二体の竜が驚きの声を上げる中、「鋼の翼」が大きく揺らぐ。

 そしてそれはあの嵐をはぎ取った方へと落下し始める。



 「にょひゃぁあああああぁぁぁっ! 『鋼の翼』落ちてます、落ちてますぅっ!!」


 『イエス、マスター。機関全停止、魔力伝達炉回復まで三十秒。本船は現在【天界】に向けて落下中です。魔力増幅波動により嵐の結界が消滅しました。本船はこのまま【天界】に向けて不時着を試みます』



 「鋼の翼」はそう宣言して航行不能になったこの船体を何とか制御している様だ。





 僕たちは悲鳴を上げながら天界へと落下していくのだった。


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。


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[一言]  この回はネタが多過ぎて拾いきれぬ……(白目)
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