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第193話8-17防人

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


あんにゃろめっ!!(セキ談)


 「おい、あれ見ろよ!」



 リュードさんはそう言って前を指さす。


 既に十日が過ぎていた。

 セキさんの話では竜が飛翔するよりは速い速度で飛んでいるという「鋼の翼」だったけど、それでも天界へはまだつかない。

 

 流石にみんな十日も何もしないで飽き飽きして来た頃にリュードさんが何かを見つけた様だ。



 「積乱雲? だいぶ凄いわね?」


 「竜巻……いえ、台風のようですわ」


 「凄いわね、この規模だとかなりのモノね」



 バチバチと雷とを伴う大地から天空高くまで巻き上がっている渦巻きをミーニャもエマ―ジェリアさんもセキさんも見上げて思わずそう言う。


 

 「でも、天界への道しるべである光はそこを指していますよ?」



 タルメシアナちゃんが見る細く絞られた一筋の光が指し示すその先がリュードさんが見つけたあの大嵐の中を示している。


 「まさか天界ってあの中にあるんですか?」


 「はて、以前私が行った時はあんな物は無かったはずですがな、むんっ!」


 フォトマス大司祭様は最近常に上半身を裸でその盛り上がった筋肉をぴくぴくさせながらポージングを決めてそう言う。


 「お姉さまの事だから、通常は外からの侵入者を阻むために嵐の結界を張っているのかしら?」


 「つまりそのままじゃ入れないって事?」


 ミーニャのその推測に思わず聞いてしまう僕。

 だってどう考えてもあの中を突き進むのは大変そうだ。



 「『鋼の翼』、天界へ行くのにあの嵐って大丈夫なの?」


 『ノー、マスター。本船でのあの嵐の結界を超える事は出来ません』 


 タルメシアナちゃんはあの椅子に座り「鋼の翼」に聞くとそのままではいくらこの「鋼の翼」でもあの嵐を超える事は無理らしい。

 でもこのままじゃ駄目だし、何とかしなきゃ。


 僕がそう思っているとセキさんが髪の毛を逆立てる。



 「何、このザラっとした感じ!?」


 「凄いプレッシャーです!」



 タルメシアナちゃんまで何かに気付く。

 セキさんは怖い顔をして窓にへばりつきその先の嵐を見る。



 「あれは‥‥‥ まさか!?」



 「どうしたって言うんですか、セキさん!?」


 「お兄ちゃん、来る! 禍々しい気を持った破壊の権化が来る!!」


 セキさんは窓の外に何かを見つけ、タルメシアナちゃんは震えながら僕に抱き着いてくる。


 「何が起こっているのですの、セキ!」


 「なんかすごい魔力量…… 空間でさえ歪みそうね?」


 エマ―ジェリアさんはセキさんに何が有ったか聞き、ミーニャも何かを感じ始めている。


 「って、何かこっちに飛んでくるぞ!」


 『あわわわわわ、あれって……』


 『ミーニャ様、お下がりください!!』


 ぴこっ!


 「な、何と言う事じゃ! あれはっ!?」


 リュードさんが、リリスさんが、そしてソーシャさんもそれに気づく。

 アイミは僕たちを守るように窓際に立つけどフォトマス大司祭様はその姿をはっきりと確認した。

  

 「あれってドラゴン!?」


 僕が見たそれは真っ黒な身体にバチバチと雷をまとわせる大きな竜の姿だった。





 「あいつはサンダードラゴン!! 生きていたの!?」




 

 セキさんは驚きにわなわなと震えてそう言う。

 サンダードラゴンって、そうすると雷の竜って事?


 「セキ、何なのですのあの竜は? あなたと同じくらい大きくてそして感じるこの怒気は!?」


 「あいつはあたしと同じ古竜、風の女神メリル様に仕えていた雷をまとう竜よ! 女神大戦で死んだとばかり思っていたのに!!」


 

 ばさっ、ばさっ!



 そのサンダードラゴンは既に「鋼の翼」の前まで飛んで来ていてその場で止まる。

 そして血走った目で体にバリバリと雷をまとわせながら問いただしてきた。



 『貴様ら何やつだ? 祭事まではまだ数年あるはず、なのに【鋼の翼】を動かしここへ来るとは!?』



 ぐるるるるるるぅ



 唸りながらも人の言葉で聞いてくる。

 するとセキさんは窓を開け、大声で応える。



 「あたしだ! 赤竜だ!! 訳有って女神であるエルハイミ母さんに会いに来た! 道を開けろ、そしてあの嵐を止めてくれ!!」


 『赤竜だと? あのじゃじゃ馬か? 生きておったか。女神様に何用だ?』



 今は人の姿のセキさんを睨みつけながらサンダードラゴンは聞いてくる。

 するとセキさんはまたまた大声で応える。



 「娘が母に会いに来るのに理由が必要か? そこを退け!」


 『娘だと? 貴様、人の姿になり気でも狂ったか?」


 「この体はエルハイミ母さんとティアナ母さんにもらった新たに再生された身体だ! 故に二人は私の母となる。道を開けろ!」


 『否っ! 女神様は何人たりともここを通す事を許されぬ。通りたければ……』



 サンダードラゴンはそれでもセキさんの要求を拒みニヤリと笑ったように見えた。



 「是も非も無いか…… 二万年ぶりにあんたとやり合うとはね、いいわ! 退かないなら力ずくでもどかして見せる!!」



 セキさんはそう言って服を脱ぎ捨て窓から飛び出す。

 そして体を大きく膨らませ真っ赤な色の竜の姿になる。



 『ふははははははっ! いいぞ、二万年前の決着今つけてやる!!』


 『ふん、今のあたしはあの頃のあたしじゃないぞ!? 二万年前の屈辱晴らさせてもらう!!』



 がおぉおおおおおぉぉぉん!


 ぎゃおぉおおぉぉぉぉん!!    

 




 僕たちが見守る中、大空に赤と黒の大きな竜たちが舞飛ぶのだった。


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。

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― 新着の感想 ―
[一言] >セキさんの話では竜が飛翔するよりは速い速度で飛んでいるという >僕たちが見守る中、大空に赤と黒の大きな竜たちが舞飛ぶのだった。  …………セキが完全においてけぼりになりましたな。  風の…
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