表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/220

第188話8-13女神神殿

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


残念です、これが名物料理とは‥‥‥(タルメシアナ談)


 ウスターさんは僕を見ながら話し始める。


 「お前さんの姉がティアナ姫の転生者であるとして、女神様の下へ行っても返してもらえる保障は無いぞえ? それでも行くのか?」


 「はい、僕にとって姉さんは最後の家族なんです!」


 僕がそう言うとウスターさんは大きくため息をつく。

 そしてペンと紙を引っ張り出し何やら書き始める。

 書き終わったそれを封筒に入れて蝋で封印をしてから僕に渡す。



 「『鋼の翼』は女神神殿にしまってある。これは儂からの紹介状じゃ。大司祭にそれを渡せば『鋼の翼』を貸してもらえるやもしれんからな。儂が手伝えるのはここまでじゃ」


 「ありがとうございます、ウスターさん」


 僕はその手紙を受け取り、ウスターさんにお礼を言うとうウスターさんは初めて僕に向かって優しい笑顔になる。

 そして髭を撫でながら僕に言う。


 「家族は大切にするもんじゃよ。いくらティアナ姫の転生者でも生まれ育った血肉はお前さんと同じものだ。血の縁とは決して切っても切れんもんじゃからなぁ。リーリャもそうじゃった……」


 そう言いながら遠くを見るような眼差しになる。



 「リーリャって、確かイパネマの転生者‥‥‥」


 「ダークエルフの娘っ子が来てひと騒ぎあった様じゃが、なんだかんだ言ってガリーの村を豊かにしおった。今ではあそこの名産物はドーナッツとか言う菓子が有名になっておるぞ? 時間が有れば食ってみるがいい、あれは温かい味がするでな」


 セキさんが何かを思い出しつぶやくとウスターさんは更に優しい目でそう言う。

 なんか遠い昔に色々あったかのようだ。


 でもウスターさんがそう言ってくれる。

 いくらティアナねーちゃんの生まれ変わりでもフェンリル姉さんはフェンリル姉さんなんだ、僕の姉さんなんだ。


 僕はもう一度お礼を言ってその手紙を懐にしまってお店を出て行くのだった。


 

 * * * * *



 「ドドスの女神神殿ですの? でもここはユーベルトともあまり縁がないのですわ」


 「だからウスターさんの手紙が役立つじゃない? ユーベルトの聖女様もここではその威光が薄いか?」


 リュードさんが新しい剣をウスターさんからもらって喜んでいるのを他所にエマ―ジェリアさんとミーニャが僕の所でそう話している。


 エマ―ジェリアさんの話だとこちらのイージム大陸では女神教の浸透が薄い所がまだあるらしく、古い女神様を祀っている所もあるそうだ。

 流石にドドスの首都ではエルハイミねーちゃんを祀る今の女神教が主流らしいけど、ユーベルトとの関係はあまり濃くないらしい。


 「とにかく女神教の神殿に行って見ましょう? と、その前にお腹が空いたわね。せっかくだから先に何か食べていきましょうよ!」


 悩んでいても仕方ない。

 セキさんの言う通りまずは腹ごしらえをしてから神殿に向かおう。

 僕たちは近くの食事が出来そうなお店を探すのだった。



 * * *



 「ドドスの名物料理? だったらあれだな」


 リュードさんはそう言ってお店の人に注文をする。

 ここドドスでは初めて見る人は驚くような名物料理が有るらしい。

 リュードさんやセキさんは知っているので「ああ、あれね? でも骨付き肉も忘れないでね?」とか言っている。



 「ドドスの名物料理ですか、私迷宮以外でお食事するの久しぶりですから楽しみです!」


 「あれ? タルメシアナちゃんって人間の食べ物って食べさせてもらえないって言ってなかったっけ?」


 前に勝手に人間の食べ物食べると怒られるとか言っていたような気がする。

 でも、あの時にあげた携帯食はやたらと美味しそうに食べていたしな。


 「お母さんたちと人間の街に出かけると食べさせてもらってましたから、何が出て来るか楽しみなんですよ。だからここも楽しみです!」


 にこにことお行儀良くテーブルに座ってしかもナプキンを首に付けて待っている。

 するとお店の人が大きなお皿を持ってやってきた。



 どん!



 僕たちのテーブルにここドドスの名物料理と言われるものが置かれエマ―ジェリアさんが悲鳴を上げる。



 「のっひゃぁーっ! なんなのですのこれはぁっ!?」



 「あー、あんたは知らなかったっけ? イージム大陸の迷宮や山岳部ではこいつが良く取れるのよ。見た目はこうだけど味はいいわよ? そう言えば今のあたしは初めて食べるのか? ソウマ君、こいつ捕まえたらあたしが料理してあげるね!」


 叫ぶエマ―ジェリアさんに対してミーニャはひょいっと取り皿にそれを取って僕の前においてくれる。



 「ふう、これが名物料理でしたか。うちの迷宮にもいっぱいいます。もう食べ飽きましたよ……」


 言いながらタルメシアナちゃんはそれをひょいっとフォークで刺して殻をむきながら口に運ぶ。

 思わず僕もエマ―ジェリアさんも、うっ! となってしまう。

 だって、あれってどう見てもロックキャタピラーなんだもん!



 「こ、これって食べれるもんなんですか?」


 「あら、結構おいしいわよ?」


 「迷宮なんかで食料無くなった時にはこいつに出会うと俄然やる気が出るんだよな、毒攻撃には注意だけどな」



 思わずそう聞いてしまった僕にセキさんもリュードさんも平然と殻を剥きながらそれを食べる。


 僕はお皿に載せられたこいつを見るけど、背中は岩のような感じなんだけどお腹が紫とか緑とか赤とか黒い斑点とかとにかく見た目が気持ち悪い。






 僕とエマ―ジェリアさんはしばしこいつとにらめっこをするのだった。


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >イージム大陸の迷宮や山岳部ではこいつが良く取れるのよ。見た目はこうだけど味はいいわよ? >あれってどう見てもロックキャタピラーなんだもん!  こいつってダンジョンとそれ以外の土地で質………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ