第186話8-11ドドス共和国
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
うーん、お兄ちゃん♡
むにゃむにゃ~(タルメシアナ談)
ドドス共和国はイージム大陸の南方にある国。
共和国制度を取っているのは古来より亜人であるドワーフ族が南の険しい山に住んでいて、人間たちと和平を結びその盟約により不可侵をうたったため共和国と言う形になっている。
実際にはドワーフたちはドドス共和国に入っているつもりはないらしく、共和国が近隣の諸外国に対して侵攻が有れば仲間のドワーフが黙っていないぞと言う意思表示であったとか無かったとか。
そんな少々複雑なドドス共和国だけど今は周辺国とも仲良くやっているらしい。
「見えて来たな、あれがドドス共和国の首都だな」
「他の街と同じくやっぱり城壁が有るんですね?」
リュードさんがそう言って見ている前には他の街と同じく強固な城壁が見える。
とうとうドドス共和国に着いたんだ。
ここでドワーフが作ったという「鋼の翼」を借りてタルメシアナちゃんが知っている呪文を唱えれば世界の何処かにうごめいている「天界」への道しるべが現れ、そしてそこへ「鋼の翼」で飛んで行けるらしい。
やっとエルハイミねーちゃんに会いに行けて、そして姉さんを取り戻せそうだ。
「う~ん、お兄ちゃぁ~ん。むにゃむにゃ」
僕の膝の上にはタルメシアナちゃんが寄りかかりうずくまって寝ている。
あのあと何回か竜の姿になる特訓を受けていたタルメシアナちゃんは二回目で完全に竜の姿でも意識を保ち、更に無詠唱でかなりの魔法が使えるようになっていた。
そして保有魔力にも目覚めたようでセキさんの話だともうセキさんを越えてしまったらしい。
なのであのミーニャでさえタルメシアナちゃんには一目置いている様だ。
「くっ、ソウマ君の膝の上を占領するなんて! あたしだってソウマ君に膝枕してもらいたいのに!」
「ソ、ソウマ君。ずっとタルメシアナちゃんを抱っこしているのは大変ですわよね? 私が変わりますからタルメシアナちゃんをこちらによこしてですわ」
ミーニャもエマ―ジェリアさんもさっきからタルメシアナちゃんをどうにかこうにか僕から引きはがしたがっている。
でも、気持ちよさそうに寝ている子を起こすのもかわいそうだ。
「大丈夫ですよ。タルメシアナちゃん軽いし、気持ちよさそうに寝ているのを起こすのも可哀そうですからね」
僕はそう言ってにこやかに笑うとミーニャもエマ―ジェリアさんもぶつぶつ言ってから黙る。
「だいぶソウマになついたわね、この子?」
『ソウマ君もおこちゃまの世話ばかりしてないであたしと良い事しない?』
『私はいくら何でもこんなに小さいと触手が動きませんね~』
セキさんやリリスさん、ソーシャさんが覗き込んでくる。
可愛らしい顔のタルメシアナちゃんは安心して寝息を立てていた。
「さてと、ドドス共和国つったらこの街の鍛冶屋には魔鉱石を取り扱った武器も売っているんだよな。ドワーフの職人もいる店もあるからちょいと立ち寄らせてもらうぜ?」
「珍しいわね、あんたが男の子以外に興味持つなんて?」
「うるせー。最近俺の出番が少ないんだ、この剣もそろそろ駄目になってきているからな、ここいらで大枚叩いてでも良い剣が欲しいんだよ。鎧はご先祖様のこいつが有る限り自己修復も回復も微小だがしてくれるんでいいんだけどな」
そう言ってあの黒い鎧をこつんと叩く。
セキさんはそれを見て懐かしそうに言う。
「そう言えば、それもエルハイミ母さんが作ったんだっけ。ゾナーへのプレゼントとか言ってね」
「だからですの? その鎧からは魔力を感じますわ」
「だわね、やっぱりお姉さまがらみだったか」
セキさんのその言葉にエマ―ジェリアさんもミーニャも混じって来る。
そしてミーニャは独り言のように言う。
「お姉さまはこの世界でいろいろなものを作り上げ、あたしたちの生活を便利にする反面、便利すぎるモノは量産できないようにもしてたのよね」
「ああ、それはあまりにも進化が早いと人間は滅亡の道をたどるとかなんとか言っていたっけ? だからかな、この千三百年の間エルハイミ母さんはシェルたちのシーナ商会にも便利すぎるモノは開発させなかったって言ってたもんね」
うーん、なんか難しい事言っている様だけど、エルハイミねーちゃんだよ?
きっと自分が下界にいないから手を抜いてるんじゃ……
「ま、とにかく替えの剣が欲しい。いいよな?」
リュードさんは馭者の席から振り返りそう言う。
特に断る理由も無いので僕たちは頷くのだった。
* * * * *
ドドスの街はいたるところで煙が登っていた。
あちらこちらで鉄を叩く音が聞こえる。
リュードさんの話だとここは沢山のドワーフの職人がいるそうだ。
そう言えば僕ってまだドワーフの人見た事無いんだっけ?
「おお、あそこだあそこ! 前にこの剣を買った店なんだよな。もう十年近く経つか」
リュードさんはそう言って一軒のお店の前で馬車を止める。
そして馬車から降りてその店に入ってゆく。
「オヤジ、久しぶりだな! 元気にしていたか!?」
そう言いながらお店に入ってゆく。
僕も興味が有るので一緒にお店に入るのだけど、そこには壁一面武器や防具が並べられていた。
「誰じゃ? ん? お前さんは確か‥‥‥」
「リュードだよ、リュード! 久しぶりだなオヤジさん。相変わらずだなぁ」
リュードさんは嬉しそうにそう言ってお店の人の前に行く。
低めのカウンターの奥に座っていたのは真っ白な髭を邪魔にならなように結んでいるドワーフの人だった。
本当に樽のような体形で立派な髭が有るんだ。
「って、あんたウスターじゃん!」
「ん? 誰じゃこっちの嬢ちゃんは?」
そのドワーフを見たセキさんは驚きの声を上げる。
そして自分を指さして言う。
「あたしだよ、セキだよ! って、あの時はまだちびっこだからわからないか?」
「セキ? セキと言えばだいぶ昔に女神様の連れでそんな名の女の子がおったの?」
「はぁ? セキ、お前この名工ウスターと知り合いなのかよ?」
リュードさんは驚きの声を上げるのだった。
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