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第185話8-10タルメシアナの特訓

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


なんか最近暇だな、俺……

ぴこぴこ~ (リュード&アイミ談)


 「それじゃぁ始めましょうか。エマ、危ないと思ったら迷わず【絶対防壁】を張りなさい。アイミ、エマたちが危なくなったらサポートお願いね」



 今日はここらへんで野宿となるけど、野営の準備を始めるとセキさんはそう言いながらかなり広い場所へタルメシアナちゃんを引っ張って行く。

 涙目のタルメシアナちゃんは首の後ろをがっしりとつかまれて連れていかれる。



 「いやぁあああああぁぁぁっ! 殺されるぅっ!!」


 「死ぬ寸前で止めておくから大丈夫だって、エマもいるから治療も出来るし。さて、始めるわよ!」


 

 騒いでいるタルメシアナちゃんを無視してセキさんは、ぽーいっとタルメシアナちゃんを宙に放り投げる。


 そして自分もばっと服を脱ぎ捨て、一気に身体を膨らませ竜の姿に変わる。



 ぼんっ!



 現れた竜の姿のセキさんは小さな丘くらい大きかった。

 

 『ほら、タルメシアナも竜の姿になりなさい。でないと焼け死ぬわよ?』


 言いながらセキさんにしては小ぶりな炎を吐き出す。



 ずぼぼぼぼぼぼぼっ!



 「ひゃぅっ! 危ないですってば! 本気で焼け死にます!!」


 『だったらすぐに竜の姿になりなさい!』


 言いながら又タルメシアナちゃんに向かって炎を吐く。


 

 ずぼぼぼぼぼぼぼぉっ!!



 「ひゃぁっ! ううぅ、こうなったら仕方ありません!」


 言うと同時にタルメシアナちゃんは服を脱ぎ捨て一気に身体を膨らませる。

 そして、ぼんっ! と言う音と共に小さい龍の姿に変わる。


 『ぐるるるるるぅ……』


 幼竜とは言えその体は牛や馬より大きい。

 そして唸るタルメシアナちゃんは瞳の色がだんだん赤くなって唸り声もどんどん大きくなっていく。



 『ぐろろろろぉろぉおおおおおおおぉぉっ!』



 『意識が無くなったか、さてじゃあどっちが上かその本能に叩き込んであげる!』


 セキさんがそう言うと同時にタルメシアナちゃんの竜はセキさんに飛び掛かる。

 体の大きさだって全然違うのにそれでもタルメシアナちゃんの竜は炎を吐きながらセキさんの竜に飛び掛かる。


 『まずは力の違いを教えてあげるわ!』



 ぶんっ!



 セキさんはそう言いながら太い尻尾を回してタルメシアナちゃんに叩き込む。



 ばちーんっ!



 奇麗にその尻尾はタルメシアナちゃんに当たって弾き飛ばされる。

 しかしすぐに体制を整えまたセキさんに突っ込んで行くタルメシアナちゃん。

 それは小竜にしては驚くほど素早い。



 『やっぱりか、竜になって本能だけで動いているけど流石にエルハイミ母さんとコクの娘! 既に老竜並みの力を持っている!!』



 言いながらセキさんは飛び上がり炎を吐く。

 しかし今度は容赦ない吐き方。

 一気に吐き出すからまるで炎の玉を討ち出したかのようになる。


 しかしタルメシアナちゃんもそんな炎を寸での所でかわして、こちらも炎を吐く。

 同じように溜め込んだ炎を玉の様にして吐き出すも威力が弱くてせっかくセキさんに当たっても全くダメージになっていない。



 『戦闘のセンスもなかなか! しかし動きが単純よ!!』



 セキさんはタルメシアナちゃんに直接炎を当てるのではなく、飛んでいるその先に予測して炎を吐き出す。

 それは炎の玉を連打して発しているので休む暇も与えずタルメシアナちゃんを襲う。

 

 何度か避けれてはいたものの流石に数が多く、とうとうその炎はタルメシアナちゃんに直撃する。



 『ぎゃうぅぅぅぅっ!』



 直撃を喰らったタルメシアナちゃんの体は炎に包まれたが、すぐに地面に転げまわり何とかその炎を消す。

 ぶすぶすと体中から煙を上らせ焦げ付いている。



 『さあ、かかってきなさい!』


 『ぎゃうぅうううううぅ!!』



 セキさんに言われタルメシアナちゃんは咢を開き噛みつきに行く。

 しかし体の大きさが違い過ぎるので簡単にのされてしまう。

 それでもタルメシアナちゃんはあきらめず何度も何度も突っ掛かっていく。



 『ぎゃうんっ!』



 何度セキさんに殴り飛ばされたか、タルメシアナちゃんはセキさんの尻尾で殴り飛ばされ地面に叩き付けられる。


 『ぐ、ぐるるるるるるぅぅぅ……』


 『何度でもかかってくるその根性は良し! しかし本能のままでかかって来てもこのあたしには傷一つ付けられないわよ?』


 そうセキさんに言われるけど、流石にこれはやり過ぎなんじゃないの?

 タルメシアナちゃんの竜は傷だらけになり地面に横たわっている。


 流石に体力の限界か、立ち上がるのも難しくなってきたようだ。



 『さあ、どっちが上か思い知りなさい!』


 言いながらセキさんは上を向いて胸元を大きく膨らませる。

 喉の辺が膨らんできてうっすらと光っているからまたあの業火の炎を吐き出す気だ!


 タルメシアナちゃんはぐったりとして動かない。

 流石にこれはまずいと思った瞬間身体が勝手に動いていた。

 僕はタルメシアナちゃんとセキさんの間に立っていた。



 「セキさんもう十分でしょう!! もうタルメシアナちゃんは動けないんですよ!?」



 喉を膨らませたままセキさんは頭をこちらに向けて言う。


 『ソウマ、退きなさい。竜族としての上下関係は重要なの。死ぬ寸前まで追い詰め完全に敗北を味あわせないと本能だけで動いている竜は屈服しないわ。今タルメシアナは意識がない。だからその本能をこのあたしに屈服させるの!』


 「でも、それでも分かり合えるはずです! でないと、それは悲しすぎます!!」


 僕はそう言いながらぐったりとしているタルメシアナちゃんの竜に抱き着く。

 体中に傷を覆い、息も苦しそうにしている。



 もう十分だ。

 これ以上したら本当にタルメシアナちゃんが死んでしまう!



 『おにい……ちゃん……』


 「タルメシアナちゃん!? 意識が戻ったのっ!?」



 抱き着く小竜は間違いなくタルメシアナちゃんの声で「お兄ちゃん」と言った。

 


 『退きなさいソウマ!』


 「タルメシアナちゃん!!」


 『だ、だめ、お兄ちゃんじゃ…… あの炎は‥‥‥防げないぃっ!!』


 

 ごばぁっ!!!!



 セキさんはそれでも炎を吐き出した。

 いや、これ以上それを止める事が出来なかったのだろう。

 赤く光り始めた喉は爆発するのではないかと言うくらい光り輝いていたが、その光は押さえていた咢を開かせ僕たちにその炎を浴びせる。



 『だめぇぇええええぇぇぇっ!!』



 カッ!



 タルメシアナちゃんのその叫び声がしたと思ったら体が輝き、魔力があふれる。

 女神様でさえ焼き払うセキさんの炎が僕たちに降りかかる前にタルメシアナちゃんの体が小さくなって人の姿になる。

 そして両手を上げてその魔力を迫る炎にぶつける。



 「お兄ちゃんは死なせない!!」



 「うわっ! こ、これは【絶対防壁】!?」


 タルメシアナちゃんは詠唱も無しに【絶対防壁】を展開する。

 


 ぼんっ!



 セキさんの炎は僕たちを包み、燃え盛る。

 何とかタルメシアナちゃんが展開した【絶対防壁】で炎を防げたけど、その熱量が半端ない。

 途端に体中から煙が登り始める。



 「ソウマ君!! 【耐火魔法】ですわっ!!!」


 「ちょっと、ソウマ君っ! くっ! 空間転移っ!!」


 エマ―ジェリアさんもミーニャも大慌てで叫んで【耐火魔法】をかけてくれて熱に対しての耐性を上げてくれる。

 そしてミーニャがまだ炎に包まれている僕とタルメシアナちゃんを空間転移で自分のすぐそばまで転移してくれる。



 「ソウマ君! エマ、治癒魔法して!!」


 「はいですわ! ソウマ君っ!! 【治癒魔法】!!」



 ぶすぶすと体から煙が上がっている僕たちにエマ―ジェリアさんが慌てて【治癒魔法】をかけてくれる。


 【回復魔法】は自分の回復力を促進させる魔法だけど、【治癒魔法】は術者が込める魔力量に比例して体を治してくれる。

 術者の力によっては失った手足ですらまた復活できるほどの魔法。

 その魔法をエマ―ジェリアさんはいつの間にか瞳を金色にしてあふれるほどの魔力を放出して僕とタルメシアナちゃんを治癒していく。


 焼けただれてはがれた皮膚がどんどん元に戻っていってちりちりの髪の毛も元通りになる。

 タルメシアナちゃんの肌も焦げた所が無くなり、黒みがかった金髪も元通りのつややかさを取り戻す。




 「ふう、危なかったですわ。もうこれで大丈夫ですわ……」


 完全に元通りに戻った皮膚は何事も無かったかのように奇麗になっている。

 僕はエマ―ジェリアさんの方を向いて頭を下げながらお礼を言う。



 「ありがとうございます、エマ―ジェリアさん」


 「あ、ありがとう、お姉ちゃんたち……」



 僕に抱きしめられているタルメシアナちゃんはそう言いながら恥ずかしそうにしている。


 

 「ちょっと、ソウマ君、タルメシアナから離れなさいよ!」


 ミーニャはそう言って僕をタルメシアナちゃんから引っ張って離す。

 そしてどこからか取り出した毛布をタルメシアナちゃんに放り投げる。



 「いくら小さな子だって、女の子なんだから何時までも裸のまま抱きしめないの!」


 「え”っ?」



 今まで夢中で気付いていなかったけど、そう言えばタルメシアナちゃんは裸だった。

 タルメシアナちゃんは毛布を体に巻き付けながら少し赤くなってもじもじと言う。



 「お、お兄ちゃん、私たちにはまだ早いですよ。でも、お兄ちゃんいなら……ぽっ♡」


 「ソ、ソウマ君とうとうお姉さんキラーだけでは無く年下キラーにもっ! だ、駄目ですわぁっ!」


 「ちょっとタルメシアナ、あんたには早すぎる! ほら、もっと他にお友達作って……」


 タルメシアナちゃんのその言葉にエマ―ジェリアさんもミーニャも大慌てになる。

 と、人の姿に戻ったセキさんがやって来た。



 「大丈夫二人とも? いやぁ、流石にあの場で炎を止めるのは出来なかったわ。タルメシアナならかろうじて生き残れるとは思ったけど、まさかソウマまで巻き込んじゃうとはね」


 「セキ、本気で危なかったですわ。もし私のソウマ君に何か有ったらどうするつもりですの!?」


 「こらエマ、いつの間にソウマ君があんたのモノになったのよ! ソウマ君はあたしのなんだからね!?」


 「うーん、お兄ちゃんには裸で抱きしめられちゃった。そう言えばお母様も裸でお母さんに抱きしめられていると必ずこう言っていたっけ、『ちゃんと責任取ってください』って! じゃあ、お兄ちゃん責任取ってくださいね!」


 そう言ってタルメシアナちゃんは僕に抱き着いてくる。




 途端にエマ―ジェリアさんとミーニャが大騒ぎを始めるのだった。  

 

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蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >それでも分かり合えるはずです! でないと、それは悲しすぎます!!  なんか種とか運命とか、そんな感じのシリーズ三大悪女候補にそんな台詞が有ったような? [一言] >流石にエルハイミ…
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