第178話8-3クロエ
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
主様の関係者ばかりでいやがります(クロエ談)
四角い箱から出てきたのは年の頃エマ―ジェリアさんくらいの少女で、黒い長い髪にメイド服姿と言う、美人だけど何処かきつそうな感じのする人だった。
クロエさんと呼ばれたその人はタルメシアナちゃんの姿を見つけるとすぐにやって来て跪く。
「タルメシアナ様よくお戻りになりました。今迷宮は黒龍様と主様が夫婦喧嘩をしていてとても危険な状態でいやがります」
「はい? お母さんとお母様が喧嘩ですか?」
タルメシアナちゃんはびっくりして瞳をぱちくりしている。
「久しぶりね、クロエ。それでエルハイミ母さんとコクが喧嘩って何よ?」
「セキでいやがりますか。ちょうどいい、あのお二人の喧嘩を止めてもらいたいでいやがります!」
クロエさんはすくっと立ち上がりセキさんに向かってそう言う。
そして初めて僕たちに気付く。
「と、その前にこちらの方々はでいやがります?」
「ああ、エマ―ジェリアは前にコクと一緒にユーベルトに来た時に会ってたわよね? 彼らはジルの転生者のソウマに、ゾナーの子孫リュードよ。それとこっちの子は前世がイオマでミーニャって名前、つい先日まで魔王をやってたの。」
ぴこっ!
セキさんの紹介にアイミも片手を上げて挨拶をする。
クロエさんはアイミに同じく片手をあげ挨拶を返すと僕たちに向き直る。
「主様の関係者ばかりでいやがりますね。私は黒龍様に仕えるクロエと言いやがります」
「あ、ソウマです」
「リュードだ。しかし伝説の黒龍と女神様の分体が喧嘩だと? どう言うこったい?」
「クロエさんか、変わりないようね。元イオマで今はミーニャね。よろしく。ああぁ、後こいつらはあまり気にしなくていいわよ、あたしの下僕でサキュバスのリリスとソーシャだから」
『うわぁ、あたしたちの扱いぞんざい!』
『でもそんな仕打ちのミーニャ様もステキ♡』
クロエさんはリリスさんとソーシャさんをちらっと見る。
そして僕たちの挨拶を受け、リュードさんの質問に答え始める。
「どうやら主様の本体に何か有った様でいやがりますが、こちらにいる主様はどうやら天界に行く事が出来ないようでいやがります。そして何かそわそわして知っているようでいやがりますが、その様子を見て黒龍様も何かを察した様でいやがります。それからでいやがります、主様と黒龍様が言い争いを始めて……」
「お母さんとお母様が喧嘩だなんて初めてですね? 何時もお母様がお母さんにべったりで、夜寝る時なんかも子供は早く寝なさいとか言って別の部屋で眠らさせられていたのに」
タルメシアナちゃんは首をかしげながらそう言っているけど、エマ―ジェリアさんは真っ赤になって騒いでいる。
「で、原因は分からないとしてその喧嘩ってまだ続いているって訳ね? 珍しいわねこんな長い間喧嘩しているなんて……」
「そうなんでいやがります! しかも今回の喧嘩はかなり本気で、おかげで迷宮はめちゃくちゃでいやがります!」
うーん、本当にセキさんの言う通りだ。
何やっているのだろう、エルハイミねーちゃんは。
奥さんであるそのコクさんてのとそこまでの喧嘩なんてエルハイミねーちゃんにしては珍しい。
「分体のお姉さまが天界に行けないなんて…… タルメシアナの言ってた話からすると、本体のお姉さまがティアナさん、今はフェンリルさんか。それを独り占めにする気なのかしら?」
「ちょ待つでいやがります、今ティアナとか言いましたでいやがりますか?」
クロエさんはミーニャを見て聞き直す。
「ええ、ティアナさんの転生者でフェンリルさんてのが魔王だったあたしを連れ戻す為に魔王城に来たのだけど、そこへお姉さまも現れてあっさり魔王との魂の連結を切られたわ。今はしがない村娘だけど、魔王になった事ですべての記憶は戻った。でもそんな事をしたお姉さまはティアナさんの転生者をさらって天界に行ってしまったわ」
「そうなんですよ! それで、黒龍さんなら天界に行く方法を知っていると思ってここまで来たんです。お願いです、天界に行く方法を教えてください!」
ミーニャが今までのいきさつを簡単に言った後、僕もここへ来た目的を話す。
クロエさんは僕を見て、そしてミーニャを見てから聞いてくる。
「その辺の話、もっと良く聞かせるでいやがります」
僕たちはもう一度今までのいきさつを詳しく説明するのだった。
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