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第177話8-2迷宮へ

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


そ、そんな方法が有ったの!?(ミーニャ談) 


 タルメシアナちゃんが竜の姿になって自我を失い、このユエバの町を破壊してしまったという事は分かった。

 そして住民の人たちは逃げ出していたというのも分かった。



 「しっかし、そうするとユエバの町の連中は何処へ行ったんだ? この規模だ、なんだかかんだ言ったって何万人かはいただろう?」


 「クロエさんとクロさんが何処に連れていったかは分かりませんが、お母様とやりあっている間は空中戦がメインでほとんど逃げ終わった頃に地面に叩き付けられてましたから、その頃には人はいませんでしたね」



 もにゅもにゅ。



 タルメシアナちゃんは三つ目の保存食を食べていた。

 やっぱいお腹空いていたのだろうか?


 にこにこしながら僕のあげた保存食を嬉しそうに食べている。



 「で、町の人間は無事ってのは分かったけど、これどうするつもりよ?」


 「お母さんが後で直すとか言っていたのでお母様もそのつもりなんでしょう。でもだいぶ時間が経っているのにまだ来ないなんて、どうしたのだろう?」



 もきゅ、ごっくん!



 タルメシアナちゃんはそう言って保存食を食べ終わり飲み込む。

 手をパタパタと叩いて僕に向かって頭を下げてお礼を言って来る。


 「ご馳走さまでした、お兄ちゃん。人間の食べ物は久しぶりだったのでうれしかったです」


 「良かったね、もういらない?」


 僕はまだまだある保存食を引っ張り出すとタルメシアナちゃんは喰いついてくるけど、ううぅ…… とか言って我慢している。


 「欲しいですけど、これ以上ご迷惑をかける訳にはいきません。それにそろそろ迷宮に戻らないとお母さんもお母様も本気で迎えに来ないでしょうから」



 「そんな、自分の子供を放置だなんてですわ!」


 「あー、まあコクならやりかねないわね。あたしら竜族は基本生まれたら放置ってのがあたりまえだからね。近くにいれば多少は面倒見るけど」


 「竜って淡白だな…… しかし流石に人の形していりゃぁそうもいかないだろうに?」



 タルメシアナちゃんはあっけらかんと言うけど、みんなやはり心配している。

 だってどう見ても三歳児くらいなんだもん。

 こんなちっちゃな子がこんな所に置き去りなんて可哀そうだよ。



 「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。自我が戻れば自分で帰れますので」


 「っと、ちょとまってタルメシアナ。実はあんたの母親であるコクに用事が有るんだけど」


 

 タルメシアナちゃんはすくっと立ってお辞儀してから馬車から降りようとする。

 しかしそれをセキさんが慌てて止める。



 「はい? お母様に?」


 「まあ、エスハイミ母さんがいるならそっちに話付けてもいいけど、どうも本体と連結斬られているみたいだからやっぱりコクに聞く方がいいかな?」



 セキさんは呼び止めていたもののそう言って腕組みして悩む。

 確かに分体であるエルハイミねーちゃん、ああ、ここにいるのはエスハイミねーちゃんになるのか?

 とにかく、もし姉さんを連れ去ったエルハイミねーちゃんと連絡が途切れていれば状況を把握していないかもしれない。

 それにこっちのエスハイミねーちゃんが納得してもあっちのエルハイミねーちゃんがダメだったらやっぱり説得に行かなきゃならない。



 「そうですか、じゃあ家に来てください。そうだ、助けてもらったお礼もしなきゃですね!」


 「うん、とにかくコクの所へ行ってからだわね。タルメシアナ、案内お願いできる?」


 「はい!」


 タルメシアナちゃんは元気に返事をするのだった。



 * * * * *



 「やっぱり一番近い入り口はここかぁ~」



 ミーニャはそう言いながら嫌そうな顔をする。

 どうやら迷宮の入り口を知っていたようだ。


 「ミーニャは迷宮の入り口知っていたの?」


 「今のあたしでもトラウマものよ。前世のイオマの時に冒険者の駆け出しで仲間と迷宮に入って浅い層の鉱石採取のクエストだったんだけど、トラップに引っかかって深層にまで飛ばされ、召喚獣を呼んだら運命の出会い、お姉さまたちに助けられたんだけどね……」


 ミーニャは眉間にしわを寄せて昔の事を話す。



 「結局お姉さまにはフラれるし、力をつけるまでにいろいろとあったからね……」



 そう言ってため息をつく。



 「えっと、そのまま迷宮に入ると迷うのでこっちです」


 そんなミーニャを他所にタルメシアナちゃんは迷宮の入り口の横へ行く。

 そしてごそごそと脇の壁を探り始める。



 「ええぇとぉ~、確かこの辺だったと思うんですけど…… と、あった!」



 言いながら壁の一か所を引っ張るとちょうつがいの様に開く。

 そしてその奥にはボタンの様なものが有ってタルメシアナちゃんはそれをぐっと押す。


 

 ぴんぽぉ~ん♪



 何処から鐘の音がしてしばらくするとごそごそと音がして女性の声がして来た。



 『はい、どちらさまでいやがりますか?』


 「ああ、クロエさん! 私です、タルメシアナです! 酷いですよ、ずっとあのままで私の事忘れてたでしょ!?」



 タルメシアナちゃんはそう言って口をとがらせるとその女性の声は慌てた様子で応える。



 『タルメシアナ様! 今お戻りになられると危ないでいやがります! クロ様でも手を焼いていやがるのです!!』


 「はい? どうしたんですか? とにかく玄関を開いてください、赤竜のセキさんも来てますよ?」


 『なんですとぉ!? セキが来ていやがりますか!? だとすると‥‥‥ 分かりましたでいやがります、すぐにお迎えに行くでいやがります!!』



 ぶつっ!



 そう言ってその声は聞こえなくなった。

 なんかだいぶ慌てていたようだけど、お取込み中だったのかな?



 「な、なあ、確かこの迷宮って世界最大の迷宮だよな?」

 

 「そうね、一番奥にはコクちゃんたちの居住区が有るけどね」


 「そこまで行くのは至難の業と聞きますが、こんな訪問の仕方が有ったとはですわ」



 リュードさんもミーニャも、そしてエマ―ジェリアさんもそのやり取りにあっけにとられている。

 でも、自分の家に呼び出しのベルってあるよね?


 僕は元通りに壁のふたを閉めたタルメシアナちゃんを見る。



 「もうすぐ迎えが来ます。もうしばらく待っててください」



 そう言って迷宮の入り口を見ているといきなり地面がせり上がって来て、ちーんっ! と言う音と共に長方形の箱が出て来た。


 そしてそれは僕たちの目の前で左右に扉らしきものが開いて中からエマ―ジェリアさんくらいの歳の女の子が出てくる。



 「タルメシアナ様、セキは何処でいやがりますか!?」




 メイド姿のその黒髪の女の子はそう言って慌てて出てきたのだった。


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。

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