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第174話7-29ユエバの町へ

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


師匠かぁ……

ま、いっか(ミーニャ談)


 僕たちはイザンカ王国とジマの国の国境付近にある大迷宮を目指している。

 

 この迷宮は太古の龍、黒龍ことコクさんと言う今の女神様の伴侶でもある人……ではなく、セキさん同様に竜らしいのだけど今は人間の姿をしている人の住む大迷宮。


 セキさんの話だと元々は今の女神様であるエルハイミねーちゃんの前に古い時代の女神様たちがいて、その中の暗黒の女神ディメルモ様の居城だったらしい。

 そこの従者である黒龍さんが今はエルハイミねーちゃんの伴侶だなんて、しかもエルハイミねーちゃんの子供を産んだっていうのだから驚きだ。


 そしてエルハイミねーちゃんの本体が連れ去った僕の姉さんを取り戻す為に天界への行き方を教えてもらわなくっちゃならない。



 そんな僕たちは次のユエバの町へと向かっている。



 「ユエバの町かぁ。まだ残っているとは驚きだけど、あの辺は冒険者も多いからかな?」


 ミーニャはそう言いながら僕にのしかかって来る。

 そしてツンツンと僕のほっぺを突く。


 「ミーニャやめてよ」


 「うん? どうやらもう大丈夫みたいね? ラーミラスにお兄ちゃん呼ばわりされて嬉しそうだったけど、何も言わないで出て来ちゃって気落ちしていたのも、もう大丈夫みたいね?」


 「え? そう見えたの??」


 「ソウマ君は今まで年上の女性ばかりと接していましたからね、年下の女性にはかなり甘いですわよ?」


 エマ―ジェリアさんもそう言いながらこちらへ来る。

 確かにラーミラスちゃんみたいな妹がいたら僕も兄としてもっと頑張らなきゃいけないだろうな。


 兄妹かぁ。


 今まで姉さんやミーニャたちばかりで年下の仲の良い子っていなかったからなぁ。

 村でも僕より年下の子の方が強い子ばかりだったし。


 そう言う意味では僕は初めて自分より弱い年下の女の子の為に動いたわけだ。



 「これが終わったらまたラーミラスちゃんに会いに行きたいですね」


 「そ、それはぁ‥‥‥」


 「か、彼女も多分忙しいでしょうからあまり邪魔しない方がいいですわ……」



 僕はまたラーミラスちゃんに会いに行こうと提案するとミーニャもエマ―ジェリアさんも嫌そうな顔をする。

 なんでだろうね?



 「と、この辺は‥‥‥ まあ、あの研究所もまだ残っているか分からないからいいか……」


 そんな話をしているとミーニャが街道から離れた方角を見る。

 それにセキさんは気づいてミーニャに聞く。


 「うん? 良いの行かなくて?」


 「前のあたしじゃないからね。記憶はあってもあの村も師匠の研究所も今は関係ないしね……」


 そう言いながらミーニャはため息をつく。


 「どうしたのミーニャ?」


 「うん、前世のあたしはイオマって女性だったんだけどね、孤児でこの近くの村でその当時の魔道の師匠に拾われて育てられていたのよ。まだ魔王に覚醒していない時だったから生きる為に色々と苦労もしたのよねぇ~」


 あっけらかんとそう言うミーニャ。

 僕も少しは昔の記憶が戻ったけど、今の僕とは違う人物だからピンと来ない。

 でもミーニャは魔王の覚醒をしたから当時の事がまるで昨日のように思い出せるらしい。


 「そっか、僕の知らないミーニャなんだもんね」


 「なに? もしかして心配してくれているのソウマ君? もう、大丈夫だって、あたしはあたし、ミーニャだよ? ソウマ君の旦那さんのね♡」


 「誰が旦那様ですか! ソウマ君は私の旦那様になるのですわ!!」


 そう言ってエマ―ジェリアさんがミーニャの反対側の腕を取る。

 そしてまたわいわいと騒ぎ始める。



 「いいなぁ、俺もソウマといちゃいちゃしたいってのによ~」


 「あんたはいろんな男の子と楽しんできたでしょうに?」


 「いや、やっぱソウマみたいのが好みかな! ソウマぁ、俺とも仲良くしようぜぇ~」


 ぴこぴこ!



 馭者の席にいるリュードさんやセキさん、そしてアイミまでも一緒になって騒ぎ始める。

 ラーミラスちゃんの事は気にはなるけど、きっと上手くいくよね?


 僕はそう思いながら道の先を見るのだった。



 ◇ ◇ ◇



 「何あれっ!?」


 「おかしいな、もうユエバの町に着くはずなのに……」


 ミーニャが驚きの声を上げ、そしてリュードさんも目の前の光景に声を上げる。

 そこには次の目的地であるはずのユエバの町が有ったはずだ。

 しかし僕たちが見たものは瓦礫の山と化した廃墟だった。


 「一体何が有ったというのですの?」



 「ちっ! この感じ、みんな気を付けてっ!!」




 セキさんの警告の声に僕たちは一斉に身構えるのだった。


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