第173話7-28英雄
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
ソウマお兄ちゃん♡(ラーミラス談)
「皆さんには何とお礼を言ったらいいのか!」
ラーミラスちゃんは明日戴冠式を行う事になった。
あれから一週間ほどごたごたはあったけどオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を従え、宿敵であった魔王を女神様のお力を借りた聖女様と一緒に倒したことでここイザンカ王国はラーミラスちゃんを中心にさらに結束を固める事になりそうだった。
あのオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」は結局魔力量の高い人ならだれでも動かせる中身はイザンカ製旧型だったのでその事は秘密にして今はお城の大広間に鎮座している。
ミーニャに言わせれば僕を英雄扱いにしてもっと自信を持たせたかった事もあるらしいど、もう二度とあんな怖い思いはしたくないよ。
やっぱり怒ったミーニャは危ないな……
そして今、僕たちはブルーゲイルの城にいる。
クーデターを引き起こしたとはいえ、実害が大きかったのは城の中だけで街自体はさほど被害が無かったらしい。
交易やら何やらもまた再開していつも通りの風景が戻って来ていたようだ。
「皆様には本当に何とお礼を言ったらいいものか」
アポロス将軍も今はラーミラスちゃんが側にいて欲しいという事でレッドゲイルは部下の者に任せて当分こちらでラーミラスちゃんを手助けする事になった。
「まあ、あれだけ大立ち回りしたんだしね。はぁ、ソウマ君にも見られちゃったし、出来ればもっと雰囲気あるところで見られたかったな、そしてそのまま二人で初めてを‥‥‥」
「なっ、何を言っているのですの! ソウマ君にはこれが終わったら私の実家に挨拶に来てもらわなければならないのですわよ!?」
この一週間散々ミーニャに文句言われていたけど、ミーニャの裸なんてもう何度も見ているし、少し前までは一緒にお風呂とかも入っていたのになに大騒ぎしているのだろうか?
エマ―ジェリアさんも最近は将来について何やら僕といろいろ話したがるし、何なのだろうね?
「まあ、これでラーミラスの嬢ちゃんも落ち着けたって訳だし、俺たちもそろそろ行かなきゃだよな?」
「そうね、コクの所まではまだまだあるもんね」
リュードさんもセキさんもそう言いながら荷物をまとめている。
「あ、あの皆さんはこの後どちらへ行かれるのですか? 出来ればせめて戴冠式が終わるまでいて欲しいのですが……」
ラーミラスちゃんはそう言いながら僕をちらりちらりと見る。
ん~、明日の戴冠式はいいとしてもそれ以上は長居できないよね?
「嬢ちゃんの戴冠式までいるがその後はすぐにでも出発するぞ」
リュードさんにそう言われてラーミラスちゃんはしゅんとする。
まあ、同じ年頃の僕たちと一緒にいたラーミラスちゃんは大変そうだったけど笑顔も多かった。
だけどラーミラスちゃんは意を決したように言う。
「そ、その、ソウマさんにはオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』で最後に魔王を仕留めたという事で英雄として我が国にいてもらいたいのですが……」
頬を赤く染めてラーミラスちゃんはそう言う。
するとアポロス将軍もうんうんと頷きながら僕を見る。
「たとえ演技であったとしてもあれ程の攻撃をしのいだのだ、到底うちにいる『鋼鉄の鎧騎士』団など太刀打ちできるものでは無かった。オリジナルとは言え、あれはやはりソウマ殿の功績であるな。まさしく英雄と称されても遜色無い立ち回りだった。我が国に英雄として迎え入れたい」
「いや、でも僕には目的が有ってですね……」
「そうね、ソウマ君にはやらなきゃならない事が有るわ」
「そうですわよ、そしてその後は私を幸せにしなければならないのですわ!」
僕たちがそう言うと、アポロス将軍はすいっと僕だけ引っ張って来てコソコソ言う。
「ソウマ殿、悪い話ではないぞ? ラーミラス様はいたく貴殿を気に入っておる。便宜上儂が婚約者となっておるがそれは先王が余計な虫がついたり政略結婚に娘が心痛めるのを防ぐため、ソウマ殿ほどの英雄ともなれば儂も安心してラーミラス様をおあずけできると言うモノ。考えてもらえんかのぉ?」
「はいっ!? な、何ですかそれは!!!?」
「そう言う事だったんかよ、まあ普通に考えれば自分の娘くらいの婚約者なんて願い下げだもんな」
「ふーん、王家って面倒なのね?」
「ちょっと、何それ! 駄目よ、ソウマ君は私のお嫁さんなんだから!!」
「何を言っているのですの? ソウマ君には責任を取ってもらわなければならにのですわよ!? ソウマ君は私の面倒を見る義務が有るのですわよ!」
「馬鹿言ってんじゃないわよ! あたしだってソウマ君に見られてるわよ! しかも全裸、それにちょと前なんかいろんな所を触られちゃった仲なのよ!!」
「なっ! そ、ソウマ君それって本当ですの!? 私と言うモノが有りながら他の女に手を出していたのですのぉっ!?」
「えっ? ええっっ!? ちょ、ちょと、ミーニャ、エマ―ジェリアさん!!」
何時の間にやらひそひそ話を聞きに来ていたリュードさんやセキさん、ミーニャにエマ―ジェリアさんまで今の話を聞いて大騒ぎになる。
ミーニャとエマ―ジェリアさんに両腕を引っ張られそして何とそこへラーミラスちゃんまで抱き着いてくる。
「ソウマさん、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」
「「だ、だめぇ(ですわ)っ!!」」
にこにこ顔のラーミラスちゃんに二人同時に叫ぶミーニャとエアージェリアさんだった。
* * * * *
「本当にいいのか?」
「ええ、アポロスさんには言ってありますし、ラーミラスちゃんの戴冠した所も見れましたしね」
僕は遠くで頭の上に王冠をかぶっているラーミラスちゃんを見る。
これからまだまだ式典は続くようだけど、僕たちには目的が有る。
「いいの、いいの、あの子は立派な女王様になるでしょうから。あたしたちにはあたしたちのやらなきゃならない事が有るんだから! さあソウマ君すぐにでもここを離れましょう!」
「そうですわね、彼女はもう大丈夫ですわ。だからすぐにでもここを出発ですわ!」
なんかミーニャもエマ―ジェリアさんも先を急ぐ。
確かにこんな所にずっといる訳にもいかないし、早く姉さんを取り戻さなきゃだしね。
僕は最後にもう一目ラーミラスちゃんを見る。
緊張の表情でいるけどきっと大丈夫だよね?
僕たちはひっそりとこの式典を抜け出しブルーゲイルを後のするのだった。
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