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第168話7-23オリジナル鋼鉄の鎧騎士

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


なんで魔王出なくなったのにミーニャ様ってあんなに強いのよ!?(リリス談)


 「なんだと? 会談の申し込みを断ってきただと!?」


 

 どうにかこうにかレッドゲイルにたどり着いた僕たちは目的であるラーミラスちゃんを送り届け、そして魔王軍消滅の事実を伝えた。


 内乱、クーデターを起こしていた国王の弟たちはその根底に魔王軍の侵攻に対して国王派があまりにも無策であると批判し、それを理由にクーデターを起こした。

 しかし僕たちの情報により根底である魔王軍が女神様によって消滅したからこのクーデターの大義名分が無くなった。


 そしてこちらには王位継承権第一位のラーミラスちゃんがいる。

 さらに王家の正当性を知らしめるオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」も王が代々密かに隠し持っている。


 こんな状況下であれば本来なら会談を申し込めば大人しく応じるはずなのだけど……



 「一体どう言う事だ? 何故会談を拒む?」


 「はい、どうやら連中はラーミラス様がこちらに来られたという事、魔王軍が消滅したという事を信用できないと言い張っているそうです」



 配下の人にそう言われアポロス将軍は手に持った杯を机にたたきつける。



 「愚かな! それではまだこのレッドゲイルを攻め入るというのか? そのような事をしても民は納得しないぞ? それに魔王軍の噂も風のメッセンジャーで徐々にこの地にも知れ渡るだろうに!」



 どかっ!



 アポロス将軍は近くに有った椅子に脱力したかのように身を投げ座る。


 

 「なぜそこまでこのレッドゲイルにこだわる?」


 「アポロス様……」



 予想と違った相手側の行動に目論見が崩れアポロス将軍は目を手で覆う。

 それはこの戦いがまだ続くという事の表れであった。



 「なに? 結局まだ続けるっていうの?」


 「そう言う……事になりますわね」


 腕を組んで呆れているミーニャにエマ―ジェリアさんはラーミラスちゃんを見ながら心配している。


 「しっかし、エルハイミ母さんが魔王軍を消滅させたことは事実だってのにどう言うつもりよ?」


 「さあな、だがあの騎士の話だと国王は既に殺害され、こちらに連れて来た皇女殿下を認めないという事となれば強引に政権を手に入れるつもりなんだろうよ」


 「でもなんでこのレッドゲイルにこだわるんですか?」


 どうもその辺が良く分からない。

 首都であるブルーゲイルを制圧できればこちらのレッドゲイルをそんなに急いでなにがなんでも制圧する必要はないはずなんだけど……




 「オリジナルの隠された場所に感づいたのかもしれません……」



 ラーミラスちゃんのその言葉にみんな一斉にそちらを見る。

 そんな中、ラーミラスちゃんはあのペンダントを持ち出し、みんなに見せながら話始める。



 「実はオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』はこのレッドゲイルに隠されているのです。千年前にこの国の守護者となるオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』、それはドドス共和国との戦争に対しての抑止力として国境の砦に在りました。が、その後ドドス共和国と和平が成立し我が王家が代々その正当性を誇示する為に保有をしてきました」



 そしてラーミラスちゃんはその首飾りについている宝石を回して外す。

 するとそれは簡単に抜け落ち、手のひらに収まる。



 「これはオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を起動させるための宝珠です。これがなければ我が王家が隠し持っているオリジナルは起動できないと聞いています」


 「ラーミラス様、何時そのような事を?」


 「お父様が私をブルーゲイルから逃がす時にこの首飾りと一緒に教えてくれました……」



 そう言ってその宝珠をぐっと握るラーミラスちゃん。



 う~ん、それがなければ動かせないならラーミラスちゃんがそれを動かしてしまえばその正当性が示せるのではないのかな?



 僕はそう思い、聞いてみる。


 「それじゃあラーミラスちゃんがそのオリジナル『鋼鉄の鎧騎士』を動かして相手の前に姿を現せばいいんじゃないですか?」


 「ソウマ君、もしそれが本物のオリジナルだったら普通の人では動かせないのよ……」


 僕のその問いにミーニャが先に答える。


 「あたしとお姉さまが作った『鋼鉄の鎧騎士』は最後にお姉さまがいじった物を含め零号機以外は相当な魔力量がないと動かせないわ。そしてそれを動かす為には血のにじむような訓練が必要なの。それこそ『心眼』が使えるくらいの事が出来ないといけないわ」


 言いながらミーニャはラーミラスちゃんの手からその宝珠を取り上げ見る。


 「でも分からないのはなんでこんな宝珠が必要かって事ね? お姉さまが安全の為に追加で仕掛けでもしたのかな?」


 「失礼だが、そちらのお嬢さんは何故そんな事を知っている?」


 アポロス将軍があたりまえに疑問を持って聞いてくる。

 するとミーニャは臆することなくはっきりと答える。



 「それはあたしが魔王の転生者で先代の魔王の時代にあたしがこの『鋼鉄の鎧騎士』を女神様であるお姉さまと作り上げたからよ」


 「なっ!? で、ではお前が魔王だというのか!?」



 驚き立ち上がるアポロス将軍。

 するとその前にすっとリリスさんとソーシャさんが立ち塞がる。

 しかしミーニャはその二人を手で制し下がらせる。



 「残念ながら元魔王ね。今は普通の村娘。ただ、普通の軍隊に負ける気はしないけどね」



 ニヤリと笑う。


 アポロス将軍は思わず腰の剣に手が伸びそうになるのをエマ―ジェリアさんが制する。


 「おやめください、アポロス将軍! 彼女はもう魔王ではありません。それに今の彼女でも将軍たちが束になってもかないませんわ」


 すっと手を差し出しその剣を掴もうとする手を押さえる。

 慌ててラーミラスちゃんもアポロス将軍を押さえるけど、ミーニャはつかつかとラーミラスちゃんに近づきあの宝珠を返す。



 「どちらにせよ、まずはそのオリジナルに会わせて。十体いるうちのどの子かわからないけど、もしかしたら動かせるかもしれないわ」



 ミーニャはそう言って僕を見る。



 

 その顔はいつもの悪戯をしようとしている表情だったのを僕は見逃さなかったのだった。

 

  

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