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第167話7-22アポロス

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


アポロス様ぁ~♡(ラーミラス談)


 僕たちがレッドゲイルの郊外にたどり着くと城壁の近くの平原で「鋼鉄の鎧騎士」同士の戦いが起こっていた。



 リュードさんは急ぎ馬車をそちらに向かわせる。


 

 「いいか、既に『鋼鉄の鎧騎士』たちが戦争を始めている。各軍は被害を押さえる為に両陣営に別れその戦いの行く末を見守っているはずだ。俺たちは一旦レッドゲイル側に合流するぞ!」


 「あによ? ちゃっちゃと片付ければいいじゃない?」


 「あの中の正規イザンカ軍の『鋼鉄の鎧騎士』がどっちがどっちか分かんねーだろうが! 間違ってレッドゲイル側をやっちまうわけにはいかねーだろう!! それにいち早くラーミラスをそのアポロスとか言う将軍に預けて魔王軍がいなくなった事を宣伝しないとクーデター起こした連中の大義名分は崩せねえだろうに!」



 ミーニャは考えなしに力技でこの戦いを押さえようとしているけど、リュードさんの言う通りクーデターを起こした連中の大義名分は崩さないと根本的にはこの戦争は終わらない。

 それに正当な王位継承者であるラーミラスちゃんがこちらにいるのだ、それがレッドゲイルに入り立ち上がればブルーゲイルのクーデターも力を失う。



 「アポロス様は無事でしょうか……」


 「大丈夫ですわ。戦闘はまだ始まったばかりのようですし、『鋼鉄の鎧騎士』どうしの戦いが落ち着くまでは両陣営の被害は広がらないでしょうですわ」


 心配するラーミラスちゃんにエマ―ジェリアさんはそう言って優しく抱きしめる。


 

 いよいよ馬車はその戦場に近づくけど、こっち側から行くとクーデター側の陣営の近くを通る事となる。


 「いいか飛ばすぞ! エマ―ジェリアは防御の魔法を! ミーニャは向かってくる連中をどこかに転移させてくれっ!」


 馬車の馬に鞭を入れ気合を入れながらリュードさんが叫ぶ。

 馬が一声鳴いて馬車の速度がぐっと上がる。



 「たく、面倒なんだから!」



 言いながら早速こちらに向かってくる兵士をミーニャは他の場所へ転移させる。

 するとすぐに矢が飛んでき始めた。



 「【絶対防壁】!!」



 しかしすぐにエマ―ジェリアさんも防壁魔法を展開してその矢が馬車に届くことを防ぐ。

 さらに速度を上げるリュードさんだけど、馬車がの揺れが酷くなり壊れてしまうのではないかと思う程だった。


 「よしっ! もう少しだ!!」


 リュードさんがそう言った時だった。

 ほかの「鋼鉄の鎧騎士」とはあからさまに違う汚れた後方にいた「鋼鉄の鎧騎士」が動いて僕たちの馬車を止めようとする。



 ぴこっ!



 アイミが途端に馬車から飛び降り緑の光る粒子をまき散らしながらその「鋼鉄の鎧騎士」に体当たりをする。

 身の丈三メートル近いアイミのその一撃は流石に「鋼鉄の鎧騎士」とは言え動きを止め、よろめかせる。

 しかし驚くのはその後だった!



 ぴこぴこぉ!


 まるで「こんなおんぼろの『鋼鉄の鎧騎士』一つ、私が押し返してやる!」とでも言わんばかりにアイミはがっしりと「鋼鉄の鎧騎士」を掴んだまま更に緑の光る粒子を大量に噴射して「鋼鉄の鎧騎士」を宙に持ち上げひっくり返した!



 ごがぁあぁああぁん!



 土煙を上げてその巨体が倒れる。

 アイミはそのままこちらの馬車に並走して飛んで戻って来る。


 ぴこっ!


 親指を上げてこちらに合図をする。

 するとリュードさんも同じく親指を上げて返事をする。


 「よくやったアイミ! よぉしぃっ、このまま突っ切るぜ! 何人たりともこの俺の前は走らせないぜ!!」


 言いながら更に馬に気合を入れる為に手綱をピシッと叩き付ける。



 こうして僕たちは戦場をかすめるかのようにレッドゲイル側の陣営にまで駆け抜けるのだった。



 * * * * *



 「ラーミラス様がいらっしゃったとは本当か!?」



 甲冑に身を包んだ三十路を過ぎた男性が飲み物を渡されて休んでいる僕たちの下へ慌ててやって来た。



 「アポロス様ぁっ!!」


 「おおぉ! ラーミラス様、よくご無事で!!」



 ラーミラスちゃんは持っていたカップを落としてその男性に抱き着く。

 そして爆発したかのように泣き出した。


 「アポロス様ぁっ! お父様が、お父様がぁっ!」


 「お辛い思いをされましたな、しかしラーミラス様だけでもご無事で何よりです。もう大丈夫です、このアポロスがラーミラス様を命をかけてお守りいたしますぞ!!」


 はたから見ると親子にしか見えない感じだけど、この人ってラーミラスちゃんの婚約者なんだよね?



 「犯罪者ね……」

 

 「こんな小さな子をここまで手懐けるとはですわ……」


 「うーん、親子にしか見えない……」



 ミーニャもエマ―ジェリアさんも、そして僕も思わずその光景に唸ってしまう。



 「さてと、とりあえずは皇女殿下は目的通り安全な場所に届けた。それであんたがアポロス将軍様か?」


 「如何にも。と、聖女様に『爆竜のセキ』様までご一緒でしたか。これは失礼をしました。ところで貴殿は?」


 「俺はリュード。それより重要な事だ。魔王軍はこの世から消滅した。女神様が現れ魔王軍をこの世界から消し去った」



 「なに?」



 挨拶もそこそこにリュードさんはそう言ってアポロス将軍にその事実を伝える。

 いきなりな事で流石にアポロス将軍も驚き聞き返す。



 「間違いありませんわ。女神様が現れ魔王の魂を持つ者もその力を奪われ、そして魔王の配下の悪魔たちもこの世界から消し去ってしまいましたわ」



 エマ―ジェリアさんがアポロス将軍にそう答えるとアポロス将軍は目を見開きエマ―ジェリアさんを見る。


 「エマの言っている事は本当よ?」


 後ろに立っていたセキさんもそう言うとアポロス将軍は頷いてから言う。



 「それは何よりの朗報。これであの者たちの発起した理由がなくなる。良し、伝令! 女神様による魔王軍消滅を確認した! この事を戦場に伝えまくれ!!」



 アポロス将軍はそう言って控えていた兵士に大声でそう言う。

 そしてまだ泣き止まらないラーミラスちゃんを抱き上げ背中を軽くたたきながら僕たちに言う。


 「感謝いたしますぞ、聖女様、セキ様、そして『黒の牙』よ。ラーミラス様も無事、そして何よりも懸念されていた魔王軍の消滅。まさしく女神様の加護である!」


 「ちっ、もう俺に気付いたか……」


 なんかリュードさんが言っているけど、アポロス将軍はそう言いながらもう一度優しくラーミラスちゃんの背中を軽くたたく。

 まだ完全には泣き止んではいないラーミラスちゃんだけど、だいぶ落ち着いたようで涙でぐちゃぐちゃになった顔のままこちらを振り向く。


 「み、ひっぐっ、皆様のお陰で、ひっぐっ、無事アポロス様にお会い出来ました。えっぐっ、ありがとう!!」


 「良かったですわね、皇女殿下」


 「まー、ちびの割には頑張ったわよ」


 「良かったですね、ラーミラスちゃん」


 僕たちは泣きながらお礼を言って来るラーミラスちゃんを見てほほ笑む。

 まだまだこれからも大変だろうけど、まずはこれで一安心だね。



 「伝令! 『鋼鉄の鎧騎士』どうしの戦闘が止まりました! 相手側の軍がいったん引く模様です!!」



 僕たちが話していると伝令の兵士が此処へ駈け込んで来た。

 どうやらアポロス将軍が伝達させたことが伝わった様だ。



 「良し、ならば奴等に停戦を要求し、会談を申し込め! こちらにはラーミラス皇女殿下がおられる。その事も伝えよ!」


 「はっ!」



 どうやらこれ以上戦争を続ける事は無くなりそうだ。


 僕はアポロス将軍に抱っこされまるで実の娘のようにその首に抱き着いて嬉しそうにしているラーミラスちゃんを見て思う。




 うん、どっから見ても親子にしか見えないなと。 


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


蚤の心臓の私たちですのであまりいじめないでください。

どうぞ、日本海のような広いお心と生暖かい目で見ていただけますと助かります。

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[一言] >まるで「こんなおんぼろの『鋼鉄の鎧騎士』一つ、私が押し返してやる!」とでも言わんばかりにアイミはがっしりと「鋼鉄の鎧騎士」を掴んだまま更に緑の光る粒子を大量に噴射して「鋼鉄の鎧騎士」を宙に…
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