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第165話7-20刺客

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


もう、ソウマ君たら♡(ミーニャ談)


 「そこの馬車とまれっ!」



 いきなりそう声をかけられリュードさんは静かに馬車を止める。

 幌の影から覗き込めばそこには馬に乗った騎士のような人たちがいた。



 「一体何なんだい?」


 「冒険者か? 貴様らは何処へ行くのだ?」



 きつめな口調に鋭い視線を送るその騎士の人にリュードさんは軽く両の手を上げおどけて言う。


 「なに、イザンカは傭兵を常に募集しているだろ? ノヘルじゃ仕事がなくてね」


 「‥‥‥ブルーゲイルに行くのか?」


 「いや、レッドゲイルにでも行こうかなとね……」



 「馬車の中を確認させてもらう!」



 そう言っていきなり僕らの馬車を取り囲む。

 騎士団にしては鎧が全部同じじゃない。

 僕はミーニャとエマ―ジェリアさんを見る。

 そしてセキさんを見てから首を縦に振る。


 ばっと幌を開いた騎士は中を見て驚く。



 「貴様はっ!?」



 あれ?

 僕の顔を知っている??



 「まさか、聖女様までご一緒か? と言う事は『爆竜のセキ』様もいらっしゃるのか!?」



 エマ―ジェリアさんもセキさんも知っている?

 と言う事は、この人って魔王軍と戦っていた人?



 「いたぞ! お前らその少女をこちらに引き渡してもらおう!!」


 反対側から馬車の中を見ていた騎士がラーミラスちゃんに気付いた。

 セキさんの陰に隠れていたけど、流石に見つかってしまう。



 「すまんがその少女を渡してもらおう」


 「出来ると思いますの? お断りしますわ」



 僕たちを知っているその騎士はエマ―ジェリアさんにそう言うけど拒否される。



 「仕方ありませんな……聖女様、御免!」



 言いながら剣を抜き斬りかかろうとする。

 が、僕は既に動き出していて同調をしながらその剣をショートソードで叩き折る。



 きんっ!



 「なっ!?」


 「いきなり何するんですか! それにその子に何の用ですか!?」


 僕に剣を叩き折られその騎士は大きく引き下がって仲間たちに号令をかける。



 「仕方ない、やれっ!」



 どっと周りを囲んでいた騎士たちは抜刀して襲い来る。

 しかしすでに僕やセキさん、そしてリュードさんは動き出していて騎士たちの剣を叩き折ったりぶっとばしたりしている。


 「く、くそっ!」


 最初にエマ―ジェリアさんに斬りかかったその騎士は振り返り逃げ出す。

 しかしすぐにミーニャが手を向け空間転移してリュードさんの目の前に移動させるとリュードさんは何も言わず拳をその騎士の顔面に打ち込みぶっ飛ばす。



 ばきっ!



 殴り飛ばされたその騎士は地面に転がり意識を失うのだった。




 * * *


 

 ぐるぐるに縛りあげた騎士たちを取り囲んでエマ―ジェリアさんが【回復魔法】をかける。

 程無くみんな回復をして気が付いたようだ。



 「さて、どう言う事か説明してもらおうじゃないか?」


 リュードさんは腕組みをしながらあの騎士にそう問いかける。

 しかしリュードさんを睨んでいたその騎士は一旦目をつぶりそしてラーミラスちゃんを見る。


 「‥‥‥殺すがいい」


 「あんたなんか殺したって何の得になんてならないわよ?」


 一言殺せという騎士にミーニャはすぐに答えた。

 そしてリリスさんを呼ぶ。


 「吐かないとこのリリスをけしかけるわよ? いいのこんな所で醜態さらけ出しても? 騎士として汚名を残してブルーゲイルにここにいる連中全部飛ばしてやるわよ?」


 『ちょっ、ミーニャ様あたしに選択権はないんですか?』


 「搾り取ればいいじゃない? 補給も出来るし」



 一体どう言う事だろうか?

 リリスさんにこの騎士の血を吸わせるの?

 それが辱めになるのかなかなぁ?



 良く分からないけど騎士の誇りって理解できない時が有るからそう言うモノなのだろう。

 でもなんかエマ―ジェリアさんは分かっているようで赤い顔してキャーキャー騒いでいる。



 「くっ! そこの少女が何者なのか知っているのか?」

 

 「ああ知っている。そしてうちの聖女様が約束しちまったんでな、レッドゲイルに届ける事にした」


 「ならば尚更国を変え、そして我が国も『鋼鉄の鎧騎士』をもう一度復活させ魔王軍など蹴散らさなければあの惨事が繰り返される! だから我が君は腰を上げたのだ! 皇女殿下、あなたも国を思うならお分かりだろう! 先王は既に亡くなられた、もう後戻りはできないのだ!!」



 騎士から聞かされたその言葉にラーミラスちゃんはジワリと涙をためる。

 しかし声をあげる事無く、泣き崩れる事も無い。

 自分のスカートのすそを両手で握って震えながら耐えている。



 「‥‥‥お、お父様は女神様のお言いつけを守った。オリジナルは人の世に出てはいけない。女神様のお許しがなければ封印を解いてはいけない。お父様はそれをご立派に守りました……」



 それだけ言って、きっ!っとその騎士を睨む。

 そして九歳とは思えない程のしっかりとした物言いでいう。



 「私ラーミラス=エルグ・ミオ・ド・イザンカはお父様の遺志を継ぎ王家の秘宝、『鋼鉄の鎧騎士』の封印を守り続けます! 大人しく城を解放しなさい!」



 「もう遅いのですよ…… 既に傭兵団を含む『鋼鉄の鎧騎士』大隊がレッドゲイルにも向かっている。もうじきレッドゲイルも落ちるでしょう。如何に我が国の『鋼鉄の鎧騎士』がスピードに優れていても他国の強力な『鋼鉄の鎧騎士』には敵わない。力が軽すぎるのです。だからオリジナルを解析し、新たな守りの刃を作らなければならないのです!!」


 どうやらいろいろと事情が有るらしいけど、確かにうちの村に有った「鋼鉄の鎧騎士」みたいのが更に強力になったらすごいんだろうな。

 僕は何となくミーニャを見る。

 そんなすごい物をミーニャは前世で作ったんだ。



 「話にならないわね。もしそのオリジナルが有ったとしてもあなたたちにマネなんて出来なわよ? 私の知る限りあれはお姉さまでなければ作り上げる事は出来ない。ましてや今は失われた技術の連結型魔晶石核の制作なんて出来ないでしょうし、エルリウムガンマの素材だって作れる人なんかいないでしょうに?」


 ミーニャはそう言ってその騎士を見る。



 「‥‥‥何故そんな事を知っている?」



 「あれはあたしが作ったの。前世のあたしがね」


 それを聞いた騎士の人はしばし呆然としていたがミーニャを穴が開くほど見ている。

 それはそれは信じられない物を見るかのように。



 「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』は魔王が作ったと言われている‥‥‥ それを前世の自分が作ったというお前は‥‥‥」



 「あたしは元魔王、魔王ミーニャよ!」



 ぶわっ!



 言いながらミーニャは魔力を放つ。

 そして手をかざし騎士たちに何かをしている様だ。



 「ぐっ、何と言う威圧!」


 「良い事教えてあげる、あたしは魔王をやめたわ。女神様であるお姉さまに魔王の魂は封じられた。既に異界の下僕である悪魔たちは強制送還され、魔王軍はこの世から消滅したわ」


 「なっ!? そ、それは本当か!?」


 「そう、だからあなたたちのやって来た事は無意味。あたしは魔王をやめてソウマ君の為にお料理を覚えてラブラブな未来の家庭を築くのよ!!」



 「へっ!?」



 ミーニャはそう言って騎士に対してかけていた威圧を解く。

 途端に威圧もなくなり、解き放っていた魔力も消えて両の手で頬を押さえ腰をくねくねさせて頬を赤らめさせ、いやんいやんしながらミーニャは続ける。



 「だってソウマ君が旅を続けてあたしの手料理食べたいって言ってくれたんだもの! もうこれって毎朝君のスープが飲みたいってプロポーズでしょ!? あのソウマ君がはっきりとあたしにそう言ってくれて料理が出来ないあたしの手料理食べたいだなんて! ソウマ君はあたしが守るのは勿論だけど、あたしに甘えてくれるなら何だってしちゃうわよ!!」



 そんなミーニャにあの騎士は首だけこちらに向けて聞いてくる。


 「え、ええぇとぉ…… こ、この娘、本当に魔王なのか?」


 「元だな。間違いない。俺も女神様に魔王の魂が封印されるの見たしな。魔王軍は女神様があっさりと消し去ったよ」


 「まあエルハイミ母さんだもんね、面倒事はちゃっちゃと片付けてティアナ母さんの説得をしたいだろうしね」


 「エルハイミねーちゃんらしいと言えばらしいけどね……」



 リュードさんもセキさんもそして僕も口々にそう言いながらまだいやんいやんしているミーニャとその騎士を見比べる。



 「そ、そんな…… では我々がやって来た事は‥‥‥」


 「無駄ですわね。女神様のお言葉に背いた罰ですわ。そしてこんないたいけない少女の親を殺した。あなたたちは許されるべきではありませんわ! あ、それとミーニャ!! ソウマ君は私と将来を共にしなければならないのですわ! 責任とってもらわなければならないのですわよ!!」


 エマ―ジェリアさんもびしっと騎士に向かって指をさし言い放つけど途中からミーニャと喧嘩になっている。

 そんなエマージェリアさんとミーニャを尻目にリュードさんはこの騎士に聞く。


 「それよりレッドゲイルに『鋼鉄の鎧騎士』大隊が攻め入っているって本当か?」


 「それは…… アポロス将軍が我が君に従うのを拒否された。だがレッドゲイルの戦力も必須。故に我らに従うよう説得をしていたのだが……」


 「おいソウマ、急がないとやばいぞ!」


 「そうね、急ぎましょう!!」


 リュードさんとセキさんはそう言って騎士たちの縄を解く。

 そして僕たちに急ぎ馬車に乗るように言う。


 「邪魔はするなよ? お前さんらはブルーゲイルに戻り、魔王軍が消滅した事を伝えるんだな。そしてこの無意味な戦いをやめさせることだ!」




 そう言いながら僕たちの馬車は動き出すのだった。 

 

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