幼馴染
夕焼け時。
学校帰り。
私の半歩先を歩く彼。
隣に立つには気恥ずかしくて、彼の首元のほくろを愛しく思いながら歩く。
彼が急いでいるのはわかっていても、少しでも長く一緒に居たくて、ほんの少しだけ速度を落とす。
「もう子供じゃないんだし、一人で帰れるよ。」
そう悪態をつく。
「心配したいんだよ。そうやって邪険にするなよ。」
少し困ったように優しい声で彼は言う。
「予備校あるんでしょ?お母さんから聞いたよ。学校から直接行った方が早いじゃん。」
「そうなんだけどさ。」
その言葉に胸の奥がぎゅっとなる。
「こうやって送ってやるのもそのうち難しくなると思う。それこそ直接行かないと間に合わなくなるし。卒業したら会えなくなるでしょ。だからさ。」
「会えなくなるなんて大げさでしょ?休みの日は会えるじゃん。」
「おかえり!」
大切な時間が終わる合図。
「おう!ただいま。待たせたな。」
さっきとは違う、少し甘さの滲む声。
私の知らない甘い声。
終わりを告げた声の主を見れば、落ち着いて優しそうなきれいな人。
私に少し微笑んで、おかえりなさいと言いながら会釈した。
思いがけないことに戸惑って、会釈を返すだけで精一杯だった。
「俺、卒業したら、家出るんだ。」
・・・家を出る?
「だから出来なくなるまでは送り迎えさせてよ。最後の妹孝行的な?」
悪戯っぽい笑みでそう言って、いってきますと私の頭をひと撫でしてから彼女の方へ向かっていく。
私を置いて行ってしまう背中を見送る。
鉛を飲み込んだように胃の当たりが重くなっていく。
私を撫でた手が彼女の手を拾い上げるのを見たくなくて目をそらした。
行ってらっしゃいなんてまだ言わない。言ってやらない。
本当に離れるその日までは。