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28 手当する


 窓から月明かりが差し込んでいる。今日の月は本当に綺麗ね。

 2人を椅子に座らせて手当するのに、明かりがいらないんじゃないかって思うくらい。


「いっ……」

「我慢して。手酷くやられたわね」

「す、すみません……」


 カノンはしゅん、と項垂れた。隣のルベルに至っては計画がうまくいかなかったことがショックなのか、ぼんやりと虚空を見つめている。2人が時間になっても帰ってこないので見に行ってみれば、2人仲良く路上で気を失っていた。子供たちがいたというあばら屋はもぬけの殻で、シリウスたちの行方はいまだ不明。


「で、でも、これであいつらが変なのと手を組んでるのは明らかですよ!」

「変なの……ねえ」

「俺、気を失う直前に聞いたんです。突然現れた男が、シリウスとなんか仲良く喋ってたの……」

「仲良く?」

「すみません、何話してるかはよくわからなかったです……。ただ、危険な男がシリウスたちと接触してるのは確かかなって……」


 私は思わずため息をついた。

 どうやら私が思っていた以上に事態は深刻だったみたい。

 シリウスはステラの心臓が悪いことを知らない。明らかに異常で弱々しくて、いつ止まってもおかしくないような状態だったのに。バーバラが言っていたことは本当だろう。詳しい病名はよくわからなかったけれど、手術か何かが必要なくらい、大変な状況だ。

 で、このままだともう長くない。

 それでもって、多分姉とは関係のないところで、シリウスが何を企んでいるのかはまだわからないけれど、子供たちを連れて怪しい男とつるんでいるらしいというのはわかった。


「子供の人身売買が行われているという噂は……もしかして本当なのでしょうか」


 ルベルの言葉に、私は「かもね」と返した。

 ただの噂だし、信憑性はない。子供が突然いなくなるなんてよくある話と言えばそれまでだしね。

 でも……


「だとしたら許せません。この国で人身売買は極刑に処されてもおかしくない重罪です」

「シリウスは騙されてるんじゃないか? 確かにちょっとヤンチャそうな奴だったけど、極悪って訳じゃないと思うんだよな。なあ、城下町管轄の近衛兵に伝えた方がいいんじゃないか?」

「だが……まだ俺たちの推測の域を出ないだろ。もっと逃げようのない証拠が必要だ」


 カノンとルベルの言葉を聞きながら、人身売買について考えていた。


 正直、私には関係ない。死にかけの病弱な女の子も、その子を必死に守ろうとする男の子も、脱走した他の子たちも、謎の怪しい男のことも。


 だけどどうしても気になってしまった。関わるべきでないと思っていながら、結局2人を向かわせた。ステラに関しては、あの病気のために早めに保護した方がいいと思ったから。





 特にシリウス……

 


 何か引っかかるのよね……

 もしかして小説の主要人物だった? うーん……正直、ルカのことを思い出したのは奇跡みたいなものだから。昔ちょろっと読んだ小説の細部を思い出せるほど、私の記憶力はよくない。

 


 もしそうであってもそうでなくても、まあ、あの子が危険なものに首を突っ込んでいることがわかった今、やっぱり私たちは何もすべきではないわね。正義感に燃えるルベルとカノンには悪いけれど、実際に怪我を負ってしまった以上、これ以上は放っておいた方がいい。




「とにかく、あなたたちはよくやってくれたわ。あのでたらめな地図と情報で、あの辺りに詳しいはずのシリウスを追い詰めた訳でしょう? もう一歩だったわね」


 正直あまりうまくいくとは思っていなかった。街で買った地図もあの辺りの路地裏は正確性に欠けるし。この短時間でよく居場所まで見つけられたなと思う。相当聞き込みやらなんやらしたのだろう。


「…………」

「ルベルがいろいろ指示してくれて準備したんです! こいつは頭がいいんです!」


 なぜかルベルよりカノンの方が嬉しそうな顔をする。


「でも、今回の話はこれっきりにしましょ」

「えっ……」

「危険だもの。現にこんなに怪我を負っている訳じゃない。明日、ジーク殿下がいらっしゃるから一応話はしておく。後は近衛兵に任せましょう」

「けど……」


 カノンは不満顔だ。でも、ルベルは納得したように頷いた。

「得体の知れない男だった。俺たちでどうにかできる相手じゃないだろう」

「うーん……でも……」

「私も、子供相手ならと油断していた。悪かったわね。軽率な判断で、あなたたちを危ない目に遭わせてしまった。……命があってよかったわ」


 まあ、いきなり従者2人が殺されたらさすがに平常心ではいられないからね。

 素直にそう言うと、2人はくりくりと目を丸くした後、顔を赤らめて逸らした。


「さ、もう寝て。明日は大変な目に遭うかもしれないし」

「ごほんっ……あの置き手紙は恐ろしいですからね」

「あ、あー! でも殿下なりのジョークだろ? ……え、違うの?」


 処刑、なんて言葉を仮にも婚約者の手紙に使うなんてジョークだとしてもドン引き。

 

 もしほんとに処刑って言われたら……

 全力で逃亡生活。そう簡単に私の首は斬らせないからね。


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