97話 テレーズ達との出会い 2
「アンドレア・ホープと言います。以後、お見知りおきを」
「レグナント・ウォールっす! 前にも挨拶していますが、改めてよろしくっす!」
礼儀正しい人物と、テンションの高い男性の2名が私に挨拶をしてくれた。私も彼ら二人に頭を下げる。以前に見た記憶はあるけれど、流石にかなり前のことなので名前までは覚えていない。挨拶の時期としては丁度良かったのかもしれないわね。
「シェーナ・ミカヅチです」
「レイア・カルバルです……よろしくお願いいたします」
シェーナさんとレイアさん……この二人の女性にも見覚えがあるわ。ユリウス殿下のヘッドハンティングに掛かった人達で取りこぼしていた面子……。
「あの、シンガイア帝国最強と謳われていたキース姉弟……売り上げ勝負だけじゃなくて、錬金勝負でも勝ってしまうなんて。一時期は、この調合室でもその話題で持ち切りでしたよ」
「いえ、そんな……」
テレーズさんからの賞賛の言葉だけど、やっぱり私は面と向かって褒められるのが苦手みたい……自然と照れてしまっていた。
「いや、謙遜する必要はないと思いますよ? それがあなた……アイラ・ステイトの実力なんでしょう?」
「そうっすよ、謙遜なんてする必要ないっす。アイラさんはマジで凄いっすよ!」
アンドレアとレグナントからの賞賛の言葉も混じり始めた。私の顔はどんどん赤くなっている……こういう雰囲気はちょっと苦手かもしれない。と、そんな時に……。
「でも……あの、キース姉弟の双性錬金と戦っても、自らの上限値がまだ分からないのは異常な気もしますけどね……」
シェーナと名乗る人からの、ある意味で厳しい指摘……私は一瞬だけど固まってしまった。そう……彼ら、シンガイア帝国最高の錬金術士コンビの最高のコンビネーションを普通に超えてしまっているのは事実だ。
私は心の中に、少しだけ暗雲が立ち込めていた。シグルドさんもこんな感情を持っているのかな? だとすると、彼が私の店に来てくれる理由としては良く分かる気がする。無意識か意識的なのか……自分と同じ境遇の者を求めているのだ。
前々から何度か考えていたことだけれど、改めて考えさせられてしまった。
「まあ、異常も何もアイラの錬金術の才能が凄まじいことくらい、誰もが知っていることさ。今更、それを異常と言うのも変だろう?」
「申し訳ありませんでした、クリフト王子殿下。確かに言葉が過ぎましたね。アイラさんもごめんなさい……」
クリフト様の助け舟かしら……? 彼の言葉にシェーナさんはすぐに分かってくれたみたい。私に頭を下げて謝罪している。
「いえ、気になさらないでください。私としても、自らの錬金術の上限が見えないのは不安ですから……」
「ふふ、では私なりに協力させてもらえますか?」
「テレーズさん……?」
そう言えばテレーズさんの用件が、具体的に何か聞いていなかった。友人に会いたいというのは嘘ではないと思うけど……そもそも、ヘッドハンティングの錬金術士を初めとして、シスマまで揃っているし。
「東のエコリク大森林に、ホーミング王国の大部隊を送るという話は聞いていますわよね?」
「ええ、そうですね……聞いています」
「冒険者ランキング2位のシグルド様も参加していただけるらしいのですが……私達は決行の日までに、必要アイテムを揃えるというノルマが課せられていまして」
そういうことか……まあ、確かに大部隊をエコリク大森林に送るなら、必要アイテムは多くなるわね。錬金術を駆使して大量にアイテムを製造した方が、コスト面でも安くなりそうだし。シグルドさんに使うアイテムはほとんどなさそうだけど。
「よろしければ、アイラにもお手伝いいただけませんでしょうか? ほら、自らの限界を知れる場面になるかもしれませんよ?」
「なるほど……クリフト様も、最初からそのつもりだったんですね?」
「い、いや……この前のデートに関しては、本当に君とデートをしたいという思いからだよ……」
クリフト様は明らかに焦っている様子だった。おそらくこの人は嘘を吐くのが苦手だ。私にはそれが分かっていた。
「分かっていますよ、クリフト様。是非、協力させてください」
「そうか、そう言って貰えると非常に助かるよ。ありがとう、アイラ」
「いえいえ、クリフト様にはお世話になっていますし。気にしないでください」
そう……クリフト様には本当にお世話になっている。未払いの給料も全額+αで返還してもらえたし、素材供給は追放から数か月経った今でもしてもらえているし……感謝しかないわけで。
大部隊を送る上で必須になるであろうアイテム類の確保……その調合に参加するくらい、楽に思えるほどだった。自らの限界は未だに見えないけれど……この作業もきっかけくらいにはなれば良いと思っている。




