79話 冒険者ギルド 2
「アイテムの重要性は高いと思うんですけど……」
「はあっ? 何言ってんの、こいつ?」
生意気な小娘が反論してきた……そのように感じたのか、カミーユはあからさまに目つきが変化していた。私はその迫力に、思わず仰け反ってしまう。
「アイテム士なんか、優秀な魔導士の前ではお荷物でしかないんだけど? 命の掛かってる冒険で、戦闘能力にも期待できない回復要員って邪魔でしかないしね」
「アイテム士……」
私は先ほどから彼女が言っている、アイテム士という言葉に違和感を覚えていた。
そう、アイテム士という言葉は私としては初耳に近い。冒険者の中ではもしかしたら、錬金術士や薬士のことを、アイテム士と言うのかもしれない。アイテムを作って供給する係……まあ、そのまんまだけど。
「回復魔法にしても、腕の立つ教会出身の神官を同行させればいいのよ。アイテム士の立つ瀬ってこの時点でないじゃない? そう思わなくて?」
「は、はあ……」
物凄く高圧的な態度だ。こういう態度は、一部の貴族にもされたことはあるから初めてってわけじゃない。ただ、一番の違いは……カミーユの物理的な強さだ。この人はおそらく、物凄く強いはず……五芒星の護衛が私には居るけれど、彼女たちでもおそらくは敵わないくらいに。
私はその場から逃げ出したい欲求が出て来てしまった……私、一般人なんだし、そろそろ勘弁してくれないかな~っていう。
と、そんな時だった。
「アイラか? 何やってんだ、こんなところで?」
「シグルドさん……!」
天の助けのような瞬間だった。普段はその鬼のような形相と気迫で、恐怖すら感じてしまう人だけれど……なんだか今は、天使の降臨のようにシグルドさんに近づきたい思いだった。
「えっ、どういうこと? この小娘ってシグルドの女なの?」
カミーユの様子が変わっている。私とシグルドさんを交互に見比べながら、おかしなことを言っていた。兄妹とかなら、まだ分からなくもないけど、恋人同士にはあんまり見えないんじゃないかな?
「どういう目をしているんだ、お前は……」
案の定、シグルドさんは物凄く呆れたようにため息を付いていた。ここまで完全否定されるのは、それはそれで良い思いはしないけど、まあ、私のことは恋愛対象に入ってないでしょうしね。
「はあ? じゃあ、どういう関係だってのよ?」
「……この女は俺の必要とするアイテムの供給源だ」
「へっ? あ、あははははははははっ!! マジで? ちょ、ちょっと勘弁して……お腹痛い……!」
カミーユは大胆なスリットの入ったドレス姿のまま、腰をくねらせて笑い出していた。いやらしい物が見えそうで、私は緊張してたけど、冒険者の何人かの視線は明らかにその「いやらしい物」を見ようと必死だったのは見過ごしてない。
シグルドさんは予想通りというか、そういう視線を送っていた男性冒険者の枠からは外れていた。この人、なんだかんだ言っても美人な人を見慣れているだろうしね。
「あの単独行動で冒険者界隈を賑わせていた、シグルド・バーゼルがまさか、こんな小娘の店を利用するようになってたなんてね……あはははは、ホントにお腹痛い……! ひょっとして、ロリコンに目覚めたんじゃないの?」
「……」
年齢的に言えば、シグルドさんは28歳、私が17歳だから別にそこまで離れているわけじゃない。これは完全にカミーユの挑発なんだろうけど、シグルドさんは無言になっていた。
「役立たずのアイテム士なんかお抱えして、あんたもいよいよ限界が見えて来たんじゃないの? な~にが実力の上限を知りたいよ、格好つけた割には雑魚だったんじゃない」
上限を知りたい、か。それって多分、シグルドさんに言っているのよね? 私もまあ、同じようなことは考えたことあるけれど。いえ、現在進行形で考えているかな。
「どうでもいいが、こいつにとってアイテム士という言葉は聞き慣れんだろう。錬金術士と呼んでやれ。それから……お前は錬金術士の重要性を低く見積もり過ぎだな」
「はあっ!? あんた、喧嘩売ってんの?」
シグルドの冷静な返答に、カミーユは激昂したみたい。彼女の周囲を取り巻いていた雰囲気が一変した。彼女の冒険者仲間二人も傍らから早急に退避していた。こら、あんたらは何とかする側でしょう?
アイテム士=錬金術士っていうのが分かったのはいいけれど、この雰囲気は正直、今すぐにでも逃げたくなる……。
「そこまでだ。シグルド、カミーユ! サイモン殿も困っているだろう!」
また私の知らない冒険者パーティが現れた。重武装をしているけれど、二人に話しかけたのは女性だと思う。4人パーティかな? 全員、重武装をしているわ。
多分、シグルドさんとカミーユに意見出来るということは、トップ5に入る冒険者ってことよね。なんだか、ギルド内がどんどん危険なんだけど、安全地帯になって行っているような気がする。今、強盗とかが入ってきたら瞬殺されるでしょうね……。




