74話 アイラと言う才能 1
ユリウス王子殿下の断罪……それが一段落ついた後、私はキース姉弟の店を訪れていた。理由はもちろん、二人に錬金勝負を持ちかける為だ。よくよく考えたら、エミリーと初めて会った時は錬金勝負を挑まれかけてたしね。
同行者として、クリフト様も居る。
「はっ、俺たち二人に錬金勝負を持ちかけてくるとはな!」
「それも、ウチらは双性錬金でアイラは一人で挑むつもりなんか? いくらなんでも舐め過ぎと違う?」
もちろん二人を舐めているつもりなんてこれっぽっちもない。この錬金勝負の発端はクリフト様にあるんだから。やろうと思えば、シスマに協力を仰いで2対2の戦いに持ち込めたとは思う。でも、それでは意味がなかった。
この錬金勝負は自分の限界への挑戦みたいなものだったから。シンガイア帝国でも最高クラスの二人と同時に戦えば、流石に自分の限界が見えると思っていた。負けるつもりは到底ないけど、例え負けたとしてもそれはそれで……。
私はこの勝負をきっかけとして、自分の限界点を知りたいと思っている。3大秘薬とエリキシル剤の調合まで可能にしてしまった……私に錬金術を教えてくれた師匠は、はるか彼方で抜き去っているのが現状だ。オディーリア様やシスマを天秤に掛けても、まだ軽いくらいだった。この状態は非常に不安でもある……だから、私はキース姉弟の双性錬金に挑みたい。
「まあ、勝負は受けたるわ。懸けるものは、お互いの国の錬金術の秘密ってことでええんやな?」
「ああ、それで構わない。君たちが以前に行った錬金勝負での勝利は無効にはならないから、安心してくれ」
クリフト様はキース姉弟を安心させる言葉を述べる。私達の錬金勝負の結果がどうであれ、彼ら二人にはホーミング王国の最新設備の幾つかを晒すということだろう。まあ、キース姉弟は信頼できるしその辺りはクリフト様も分かっているみたいね。
「錬金勝負の件は承諾するわ。ウチらも、アイラとは一回、勝負してみたかったしな。単独ではとても勝たれへんのは分かってる……だから、ウチらは二人で挑む。それで文句ないねんな?」
「ええ、それで構わないわ」
決して彼らのことを侮っているわけじゃない。特に双子のコンビネーションである、双性錬金で挑まれるのであれば、最大限の警戒すら必要と言える。この双性錬金は以前に戦った、シスマ以上の相手であることは間違いない。
お互いの協議の結果、高レベルの薬品の質、数を考慮する勝負ということで合意に至った。
「そう言えば、ユリウス殿下は投獄されたってホンマなん?」
「そうだな、事実だ」
「うわ~~、それは大変やな。あの王子様、これから大変やろ?」
「かもしれないな」
他人事のようにユリウス殿下のことを話している、エミリーとクリフト様。確かに罰が決定してからの彼は、色々と大変でしょうね。風評被害じゃないけど、兄弟であるクリフト様や国王陛下にも、少なからずダメージはいくだろうし。そう考えると、キース姉弟は無傷で済むのよね……下手に手を出して、シンガイア帝国を敵に回すのは得策じゃないだろうし。
ん? もしかして、この二人ってその辺りも計算して、ユリウス殿下に協力していた? もしも、それが事実なら、かなりしたたかで計算高いわね……。
まあ、細かいことは置いといて、キース姉弟との錬金勝負に集中しないとね。私は気持ちを切り替えて挑むことにした。絶対に負けないんだから!




