65話 家族会話 1
「アイラ、久しぶりね!」
「ひゃあ! 母さん……!?」
ニーニャこと、私の母さんはいきなり私に抱き着いて来た。それから力いっぱいその身に私を抱え込んでくれる。二人きりの時ならともかく、近くにはシスマやライハットさんも居るんだから……!
「母さん、恥ずかしいから……!」
「何を言ってるのよ? 数か月ぶりの再会だっていうのに……急に仕送りの額が倍増したから、もしかしたら、夜の店とかで働いていないか、母さん心配だったんだからね?」
心配する矛先が違う気がするけど、まあ心配してくれるのは素直に嬉しい。父さんもそんな私達を見て大きく笑っていた。
「はっはっは、錬金術士としてこんな立派な薬屋を経営できるようになったか。入口にある看板も立派な物だし、父さん、鼻が高いぞ」
しっかり者ではあるんだけど、二人ともどこかお気楽な雰囲気を持っている。そんな愛すべき家族でした……。
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「シスマ・ラーデュイと申します。アイラとはその……友達、です」
照れながら言っているシスマの表情がなんだか可愛かった。
「あらあら、シスマちゃんね。アイラの母のニーニャです、よろしくね」
「同じく父のジーニアスです、よろしく」
「はい、よろしくお願いいたします」
お互いの挨拶は簡単に終わったように思う。その後、ライハットさんとも挨拶を交わした父さんと母さんだけど、彼が伯爵令息だと知ってとても驚いていた。
「なるほど、伯爵令息様でしたか……これは失礼いたしました。ライハット様、とお呼びしないといけませんわね」
「よしてください。アイラ殿のご両親にそのように呼ばれては、私の立つ瀬がありません。私はアイラ殿のお店の従業員でしかありませんから……」
「まあ、そうなのですね……アイラ、あなた凄いわね!」
「あはは、まあ……凄いのかな……?」
照れ隠しもしながら、私は適当に相槌を打っていた。ライハットさんはあくまでも、クリフト様の命令で従業員をしてくれているわけだしね。本当に凄いのは、クリフト様なわけで……父さんと母さんがクリフト様に会った時の反応が楽しみだわ。
「さて、万能薬とエリキシル剤の陳列も終わったし、私は一旦、宮殿へ戻るわ」
「わかったわ。ありがとうね、シスマ」
「ええ、それではまた……」
シスマは私の両親に改めて頭を下げると、そのまま桜庭亭から出て行った。富豪平民とは思えないほど礼儀正しいわよね、あの子。侯爵令嬢であるテレーズさんはもっと驚きだけれど。
「ところで、アイラ……あなた」
「な、なに? 母さん……?」
シスマが去った後、母さんが私の方に視線を合わせ、急に話しかけて来た。
「急に月に1万スレイブも仕送りをしてくれるなんて、どうしたの?」
あ、その話か……母さんの顔が怖かったから、何のことだと思ってしまった。確かに私は毎月1万スレイブを実家に送っている。何回も言ったことがあるけど、1万スレイブって言えば、一般人の1か月分の給料だ。結婚している家庭だとしても、1万スレイブあれば生活はできると思う。
母さんも父さんも主に農業で生活をしているから、決して楽な生活というわけじゃないけど……今まで育ててくれた分、少しでも楽な生活をしてもらいたくて送っていた。通常の稼ぎに1万スレイブが足されれば、結構な余裕が生まれるだろうから……。
「親孝行よ、ただの。毎月それくらい送っても平気なくらいの稼ぎはあるから、安心して受け取ってよね」
「アイラ……確かに、娘の成長は嬉しいが1万スレイブの仕送りは少し高すぎないか? 父さん達はお前に対して見返りなど求めてはいないぞ?」
「それでもよ、私がしたいからそうしてるだけ。迷惑でもないでしょ?」
「迷惑ではもちろんないが……」
「そうね……1万スレイブあれば、生活が楽になるのは間違いないことだし……」
父さんも母さんも困惑はしているみたいだけど、迷惑には思ってないみたい。今はそれだけで十分だわ。ふふふ、今後、売り上げを伸ばしてさらに仕送り金額を増やしてやる計画だけどね!
「ほほう、楽しい面子が集まっているようじゃな……」
「あれ、オディーリア様? どうしたんですか急に?」
本日は訪問客が多い気がする。父さんと母さんの来訪が一番驚いたけれど、このタイミングでオディーリア様まで現れるとはね。なんだか和やかにオディーリア様をもてなそうとしてたんだけど……。
オディーリア様の姿を見た瞬間、父さんと母さんの様子が変わっていた。
「オディーリア様……こちらにいらしていたんですか」
「うむ、まあ色々あっての……」
あれ? お互いに顔見知りなの? そんな話は聞いたことがなかったけれど……なんだか、この時の私は置いてけぼりを食らっているようだった。




