63話 圧倒的 1
「アイラ・ステイト、ご希望の素材だ」
「シグルドさん、ありがとうございます!」
キース姉弟と本格的に宣戦布告状態になった翌日、シグルドさんの採取作業が完了し、私のところへ彼は訪ねてくれていた。片手に大きな袋を携えて。
「そっちの袋の中身が万能薬関係の素材ってことですよね?」
「そうなるな、まあ、探索が長引いたから他の素材も取って来てやったが……」
「えっ?」
そう言いながら、シグルドさんは私に素材の入った袋を渡してくれた。確かに……蘇生薬などにも使える素材もあるわ。ていうか、その新ダンジョン便利すぎない? ここから20キロしか離れてないのに……。
「便利なダンジョンが見つかりましたね……すごい」
「便利は便利だが、そのメビウスダンジョン、敵の強さや迷いやすさなど含めて、難易度は相当に高いぞ。冒険者ギルドでも中級者までは迂闊に入るなと警告が出ている程だ」
「そうなんですね……」
まあ、これだけの素材が取れるダンジョンだものね。今回の依頼もシグルドさんだから可能だったってことか。7万スレイブの価値は十分だわ。
「アイラ、ちょっと大丈夫かな?」
「クリフト様!」
「ほう、王子殿下の登場か。謎の医者と言い、ずいぶんと横の繋がりがあるな」
「え、ええ……そうですかね」
ちょっとだけ照れながら、私はクリフト様のところへ向かった。彼も小包を持参しているようだった。まさかこれって……。
「エリキシル剤の素材を持ってきた。今後の安定供給もおそらくは可能だろう」
「本当ですか、クリフト様!?」
「ああ」
「ありがとうございます!」
「なに、君の為だからな。気にしないでくれ」
謝礼については後でしっかりとお支払いするとして……さてさて、これで必要素材については完璧ね。
「よ~し、これで大々的に宣伝が出来そうですね」
「宣伝? アイラ、一体何を始めようと言うんだ?」
そういえばまだ、誰にも言ってないんだっけ。エリクサー、万能薬、蘇生薬の3大秘薬に加えて、エリクサーの全体化と言われるエリキシル剤の販売。これらのアイテムが1つの店で買えるとなれば、それはもう、とんでもない程の集客力、訴求力に繋がるはず。実際に購入をしなかったとしても、それだけインパクトの強い薬が売られていれば、一度は目を通してみたくなるはず。
そのついでに目薬とかを購入してくれるだけでも、私の店の売り上げに繋がるしね。
「はい、大々的な看板を作りたいと思います。薬屋エンゲージでの目玉商品を列挙した」
「なるほど、それは面白そうだ。ぜひ、私にも手伝わせてくれ」
「クリフト様、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、任せておいてくれ。キースファミリーに負けないほどの立派な看板を作り上げるとしようか」
費用面ではそれなりにかかると思うけど、それは後で回収すれば問題ないし。確実に売り上げ向上に繋がるであろう看板の設置は必須項目ね。
さてさて、私は早速、万能薬とエリキシル剤の安定供給に努めないとね! もちろん、エリクサーと蘇生薬もだけれど。
圧倒的な売り上げの差を見せつけてやるわ! なんちゃって……なんだか、悪者のセリフみたいね。




