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61話 キース姉弟の策 3


「アイラちゃん、マインドポーション5個と中級回復薬5個くれ」


「はいは~い、ただいま」


 冒険者の人の注文通りの薬を袋に詰めて渡した。今日も売れ行きは好調だ。シグルドさんに仕事の依頼をしてから4日……私とライハットさんの二人はその日も忙しく仕事をしていた。


「しっかし、ここの品揃えは冒険者にとっては、必需品ばかりで助かるぜ」


「本当ですか? 嬉しいですっ」


「ああ……各種回復薬から、状態回復薬……攻撃系のポーションもあるんだからな」


「えへへ」


 私はついつい舌を出して喜びを現わしてしまった。冒険者たちに喜んでもらえるのは本当に嬉しい。お店を始めた当初は生活費の獲得の為、という意味合いが強かったけれど、やっぱりこうして人々に触れ合って遠巻きながらでも命を救う役に立っていると思うと嬉しくなってしまう。


 自分が社会の歯車として役立っている実感……17歳の今だからこそ、こういう経験は必要なんじゃないかと強く思えてしまっていた。


「ただまあ……エリクサーとか、蘇生薬の1万スレイブには手が出ねぇけどな。超上級回復薬の2000スレイブでも、俺クラスでは厳しいか」


 2000スレイブの超上級回復薬でも一般家庭の1か月分の給料の5分の1になる。魔導士を仲間にしていない冒険者パーティには特に需要は大きいけれど、単独冒険者にはこの額でもおそらくは高いと思う。ましてや、一般人が買うにしては敷居が高すぎるというか。


「でも、シグルドさんなんかはエリクサー複数とか買っていきますけど」


「あの人は別種なんだよ……アイラちゃん。シグルドさんを含む一部の冒険者の収入は異次元だからな」


「なるほど……やっぱり、そうなんですね~」


 分かってはいたけど、こうして他の冒険者から話を聞くと、シグルドさんの強さがより分かってしまう。私の店の売り上げで最も貢献してくれているのは彼だ。そういう意味でも感謝しか出来なかった。



「それにしても、先ほどから外が騒がしいですね。また、キース姉弟がサーカス紛いのことをしているのでしょうか?」


 ライハットさんは先ほどから聞こえていた、外のざわめきを気にしている様子だった。ユリウス殿下が私のお店の売り上げを必ず超すと言っていたし、何かしらの策を講じてもおかしくはないけれど。あれから数日以上経過しているし、そろそろ本格的な動きがあってもおかしくない頃合いだ。



 双子のコンビネーションを活かした双性錬金……本日もそれを行っているみたいだけれど、冒険者の集まり方が今までとは違っていた。今までは一般人の割合が多かったように見えるけど……。


「はい! 見て行ってや~~! 私達双子の双性錬金!」


 盛り上げ上手のエミリーが明るく振る舞い、周囲にお客さんを集めている。ローランドはあまりしゃべらずに、錬金をしているといった具合だ。それ自体は特におかしなところではないんだけれど……。


 彼らが錬金しているアイテムにおかしな点が見受けられた。おかしな点というか、今までとは明らかに違う相違点。


 それは……錬金窯から剣や槍、斧といった各種武器や防具が出て来ている点だった。


「まさか……直接的な武器や防具の錬成をするなんて……!」


 やられた……! おそらくだけど、供給源はシンガイア帝国そのもの。そこからユリウス殿下を通して素材の調達がフルに行われているはず。武器や防具の需要は冒険者には当然、一般人や兵士達にもあるはず。


 私の店では取り扱っていない種類のアイテム……これがキース姉弟の切り札というわけね。

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