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6話 クリフト第一王子殿下 3

「では……実は私、ここの宿屋で錬金術士として働いておりまして」


「ああ、そう言えば薬が幾つか並んでいたな」


「はい……ですが、素材が足りないのです。設備については、今のところ問題はないのですが」



 設備は問題がないと言えばウソになってしまうけど、せっかくアミーナさんが貸してくれた場所を悪く言うなんてできない。とにかく、素材が今は何よりも必要だった。こんなこと、クリフト様にお願いして良いのかわからないけれど、お言葉に甘えることにする。



「つまりは、調合用の素材を供給をしてほしい、ということか」


「左様でございます。お金は売上が安定しましたら、必ずお返ししますので……頼めないでしょうか?」


「素材費用については気にしないでくれ。それを請求してしまっては、何のための協力か分からないからな」


「で、ですが……」



 素材の供給を無料で行ってもらうのは流石に不味い気がする。それだと、売り上げの全てが利益になってしまうし……。しかし、クリフト様は「気にするな」の一点張りだった。



 ほ、本当にいいのかな……?



「他に協力してほしいことはあるか? 例えばここの設備の拡張などは?」


「先ほども言いましたが、そちらに関してはすぐには必要ないかと思います。定期的なメンテナンスだけしていれば、使えますので」



「そうか、なら私は調合用の素材調達をしてくれば、問題はないな?」



「は、はい……ありがとうございます、クリフト様」



 なんだか信じられないくらいに、スムーズに進んでいる。設備の拡張についてはアミーナさんの許可も必要だから、今は置いておいて。ユリウス殿下に追放された時はどうしようかと思ったけれど、人生一寸先に光明が見える時もあるのね。




「それにしても……ユリウスの奴は」


「ユリウス殿下がまさか、あのようなことをされるとは思っていませんでした」


「そうだな……」



 私とクリフト様の間に微妙な空気が漂い始める。クリフト様の前でユリウス殿下の悪口は言いたくないけれど。二人は兄弟になるんだし。



「ユリウスが平民と貴族との格差に固執していることは分かっていたが、そんなことではダメなんだ。あの頭の固いユリウスに、次期国王の座を譲るわけにはいかないな」


「と、いうことは、クリフト様が次期国王陛下になられるのですか?」


「まだ決定というわけではない。その……もしも、私が国王になれたとしたら……」


「はい?」



 ついさっきまで重たい空気が流れていたように感じたけど、今はまた空気が変わっている。ちょっとだけ爽やかなものになっているような……?



「私の隣で錬金術を……いや、今言うことではないな、忘れてくれ」


「クリフト様……?」



 声が小さかったから、詳細には聞こえなかったけれど、隣で錬金術を、とか言ってなかった? どういうこと? でも、これ以上聞くのは失礼になりそうだから、今はやめておくわ。



 それにしても……クリフト様の協力を得て、素材の安定供給は達成できそう。よ~し、張り切って薬屋の営業に励むわよ! 暗い雰囲気は私の性に合わないしね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 物語としては王妃にとか…。 でも錬金術だけの王妃もなぁ
[一言] 給料返して貰えよw
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