48話 オディーリアの出店
「なるほど、キース姉弟のお店が目の前に建ったわけね」
「そういうこと。あの二人って双性錬金とかいうのでアイテム数も増やせるみたいだし、私達も種類は増やしておいた方がいいかもね」
「いえ、既に蘇生薬も含めて40種類あるんだし、必要ないと思うけどね……」
調合室を訪ねていたシスマと私は話している。彼女がこの場所に居るのは、最近では特に普通のことだった。
エミリー・キースとローランド・キースの二人が、目の前の鍛冶屋を改装して薬屋を経営する……相手がどのくらいの強さか分からないけど、油断は禁物だしね。
「さてと、キース姉弟は心配だけれど、私のやることは1つよ!」
「エンゲージの経営ね」
「その通り!」
シスマは私の考えを分かってくれているのか、笑顔になっている。さてさて、彼女の笑顔で嬉しくなり、やる気がさらに満ちていた。
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「ほほう、ここがお主の店エンゲージか」
「いらっしゃい……あれ? オディーリア様……?」
お店が繁盛している中、予期せぬ人物が現れた。ランドル女王国の次期女王様であるオディーリア様だ。周囲には護衛の人の姿がないのが気になったけど、大丈夫なのかしら?
「アイラが店を出しておると聞いたのでな……様子を見に来たんじゃ」
「あ、そうでしたか……」
う~ん、この気さくな話し方は彼女の性格なのかな? 私は別に馴れ馴れしく話されても嫌な気はしないけど。オディーリア様とは昨日会ったばかりよね?
「各種回復薬から、攻撃系のアイテム。冒険者には必須の物が並んでおるの。売り上げも好調なのではないか?」
「あ、いえ、それは……あはは……」
あんまりハッキリと言うのもどうかと思ったので、私は適当にごまかしていた。でも、エリクサーなどを置いたこともあり、どこかの建物を借り上げて営めるレベルにはなっていると思う。このまま行けば首都カタコンベどころか、王国一の薬屋にだってなれるかもしれない。
「超上級回復薬も見事じゃが……ほほう、エリクサーと蘇生薬を並べておるとはの」
「……!」
流石と言えばいいのかしら? オディーリア様は一目見ただけで、エリクサーと蘇生薬の希少性に気付いていた。
「1万スレイブに設定していますが、高かったでしょうか?」
「いや、効力から察すればむしろ安いくらいじゃろう。上位の冒険者であれば、価格が2倍でも購入するじゃろうしな」
2万スレイブ……相当な高額だけど、それでも売れる可能性があるなんて、夢が広がるわね。別に守銭奴じゃないから上げるつもりはないけど。
「価格帯については考慮してみます。それよりも……オディーリア様は一人でここに来てるんですか? 大丈夫なんですか?」
彼女を狙う刺客にでも襲われたら大変だと思うけど……しかし、オディーリア様は平然としていた。
「心配はない、わらわはこう見えても、魔法やその他、武芸にも長けておるからの」
オディーリア様の発言はどこか超然としていた。刺客など現れても余裕で対処できると言っているみたいなものだ。オディーリア様って美人だし、女王様内定してるし、錬金術の才能もあって武力面にも長けている……なんだろう、この劣等感は……。
「それに、優秀な護衛がわらわを守ってくれているでな」
「えっ、そうなんですか?」
「うむ、そうじゃ」
辺りを見渡してもそれらしい人影は見当たらないけど……アミーナさんの宿屋のお客さんが変装しているとも思えないし。私が観察した限りでは、少なくともそれらしい人は見分けられなかった。
「わらわも実は、この裏手の辺りで薬屋を開業しようと思ってな。本日はその挨拶にやってきたのじゃよ」
「オディーリア様がお店を……?」
「うむ、どのみち、しばらくは女王国に帰る用事もないからの」
あ、完全に自由人だこの人。今頃、ランドル女王国は頭を抱えていそうね……。でも、キース姉弟だけでなく、オディーリア様まで店を開くことになると……下手をすれば、激戦区になってしまうかもしれない。
「ふふふ、それではの、アイラ。わらわはこの辺りで失礼するとしよう」
「はい……またいずれ。私もオディーリア様のお店には向かいたいと思いますので」
「うむ、いつでも待っておるぞよ」
宣戦布告とでも言えばいいのか……オディーリア様は不敵に笑うと、そのまま桜庭亭から出て行った。
「アイラ……今のお方って、ランドル女王国のオディーリア・カッサバルト様じゃないの!?」
「あ、はい。そうですね」
「やっぱり……! すごい人と知り合いなのね」
オディーリア様が去った後、やや興奮気味にアミーナさんが尋ねて来た。フルネームで知っているなんて、結構、アミーナさんは物知りだと思う。
それにしても……キース姉弟にオディーリア様か。一筋縄ではいかなさそうな商売敵が現れたわ。負けるつもりは勿論ないけど、私も相応の覚悟を持った方が良いかもしれないわね。




