44話 集う錬金術士たち 1
シスマとキース姉妹による錬金勝負……調合室の雰囲気はまさに、それが実現しそうになっていた。その雰囲気を破ってくれたのがクリフト様。
「あ、兄上……! なぜここに……!?」
「なんだユリウス? そんなことも分からないのか? 後ろの彼らを見れば、わかるだろう?」
「……錬金術士たちを、連れて来たのか……」
「ああ、そうだ。当たり前だろう? 私はお前のヘッドハンティングの後始末をしているんだからな」
ユリウス殿下の言葉に、クリフト様は相槌を打っていた。やや、皮肉が入っているように見えたけど。数人の錬金術士たちを調合室に入れた。
「ここがホーミング王国の国家錬金術士の調合室か……!」
「広い……それに、見たこともない設備だらけだわ!」
私が初めて国家錬金術士として、この調合室に入った時と同じリアクションをする彼ら。クリフト様が連れて来た錬金術士は全部で5人だった。おそらくその内の4人はシスマと同じような立場の、各地のスカウト漏れの人達だと思う。主にその4人が調合室の内装に驚きを見せていた。
「……」
ただ一人……20代、かな? 紫色のストレートヘアの髪を有した女性。赤い瞳のシスマも雪女を思わせる出で立ちだったけど、この女性も負けず劣らずの不思議な雰囲気を漂わせている……漆黒の瞳。明らかに他国からの人間だと、なにも話す前から物語っていた。
「ふむ……ここがホーミング王国のな。素晴らしい設備が整っておるようじゃな」
想像以上の話し方だった。いえ、ある意味、正しい話し方なのかもしれないけれど。これはもう、完全に他国の人間だわ。
「お主がアイラ・ステイト、じゃな?」
驚いた……私が視線を送っていたからかもしれないけれど、私の名前を知っているの? ただの一般錬金術士の私なんかを。どこかで会ったっけ?
「は、はい、そうですが……ええと、あなたは……?」
「ああ、これは失礼したの。わらわの名前はオディーリア・カッサバルトじゃ。年齢は……まあ、非公開にしておこうかの」
意外と冗談が得意そうな話し方だ。でも、カッサバルト……? どこかで聞いたような気が……。
「オディーリア殿はライドン女王国の次期女王陛下になられるお方だ」
「ええっ……!?」
ていうことは、クリフト様やユリウス殿下クラスの立場? いえ、次期女王陛下が決定しているなら、もう一つ上になるのかな。し、信じられない……! 他の4人の錬金術士達も、オディーリア様の素性には度肝を抜かされているようだった。
「ど、どうして、そんなお方が……!?」
「なに、わらわにはどうやら、錬金術の才覚があったようじゃからな。ホーミング王国の募集に応募してみただけじゃよ」
さらっと言ってみせるオディーリア様だけど、次期女王陛下が錬金術をホーミング王国でやって大丈夫なのかしら……? 私はまず、そこが信じられなかった。
「ふむぅ、良いよい。しっかりと芯のとおった美少女に成長したようじゃな。一人でも生き抜ける能力……そんな余裕をひしひしと感じるぞ」
「ええと……?」
オディーリア様は周囲の驚きの声とは裏腹に明らかに私を見て話しているようだった。キース姉妹も個性的だったけど……この方はまた、別のベクトルで個性的だわ。錬金術士ってちょっと不思議な人がなりやすいのかな?




