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39話 ユリウスの決意 (ユリウス殿下視点)

 くそ……! くそ……! なぜなんだ? なぜ、こんなことに……! あの錬金勝負以来、私は苦悩に苛まれていた。



 手に入れたいと願っていたテレーズからは見限られたような視線を浴びせられ……後日、アイラ追放に関しての追及にも来ると言われる始末だ! これも全て、アイラのせい……! 



「ユリウス殿下……恐れながら、申し上げます」


「なんだ……?」



 オーフェンが話しにくそうに私に問いかけて来る。



「はい……テレーズ様の訪問は既に御存知かと思いますが、議会からも出廷の依頼が来ています」



 議会から……? ノルマは達成したし、次のノルマまでは時間があるはずだが……。



「内容はどういったものだ?」


「はい、端的に申し上げますと、アイラ殿を追放した件になります」


「なに……!?」



 不味い……議会にもアイラを追放した時の詳細が知れ渡っているのか? いや、そうでなくても……テレーズを通して伝わった可能性もあるのか。いや、もっと言えば兄上が告げ口を……! くそ、卑怯者め!



「ユリウス殿下……如何なさいますか? クリフト王子殿下は、ヘッドハンティングの後処理もなさっていますが」


「ヘッドハンティングだと?」


「ええ」



 そうか……各地の取りこぼしをしていた錬金術士を集めるための作業か。



「それだ……!」


「……? ユリウス殿下……?」



 テレーズからの追求や議会からの追求……これが本格化してしまえば、私は現在の王子の地位を失うかもしれん。だが、ヘッドハンティングの件を上手く利用すればあるいは! いや、もうこれしか手段は残されていない!



「オーフェンよ、すぐにヘッドハンティングで集められるメンバーを調べるのだ。休んでいる暇などないぞっ!」


「ゆ、ユリウス殿下……しかし……! ここは、しばらく静養という形で政治から退いた方が賢明では?」


「何を言っている……そんなことをすれば、兄上やアイラたちの思うつぼではないか!」


「ユリウス殿下、しかし……」



「いいから、お前はすぐに錬金術士に接触する要員を集めろ! 最大限に信頼できるメンバーをな!」



「しょ、承知いたしました……」



 簡単な話ではないか……現在の錬金術士を総替えにしてしまえば良い! テレーズは惜しいが、私に逆らうようでは、そこまでの女だったということだ。



 新たにやってくる錬金術士……そいつらが、現在の錬金術士たちを打ち破ってくれれば、私の面目は立つというものだ! そのためには、兄上より早く、新しい錬金術士たちに接触する必要があるな。



 議会は所詮は実力主義でしかない……他国も含めたより広い範囲での錬金術士を集め、シスマやアイラ以上の者を探せばいいだけだ! そうなれば、後の始末はいくらでもつけられる……これしかない。これは我が王国だけの問題ではない……世界中に存在する錬金術士という者達の会合になるのだ。



 アイラめ……せいぜい、井の中の蛙を楽しんでいるが良いわ! すぐにその自信のほどを打ち砕いてやるからな!



「ですが、ユリウス殿下……それとは別に、テレーズ様や議会からの追求は避けられませんが……」


「そちらはなんとか上手くやってみせる。この私を誰だと思っているのだ?」



 私は次期国王になる存在だ……こんなところで足踏みをしているわけにはいかないのだ。

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