33話 錬金勝負 1
「勝負はエリクサー級のアイテム製造ってことでいいの?」
「ええ、そちらは構わないのであれば」
「別にいいけど、どうやって勝敗を決めるの? 数?」
「そうね……どうしましょうか」
シスマは深くは考えていなかったのか、悩んでいる様子を見せていた。その神秘的な外見からは想像できない態度だけに、ちょっと可愛かった。
「とりあえずは、数でいいんじゃない? あとは品質とか色々あるだろうけど……まあ、その辺りはどちらに軍配が上がるかは、クリフト様たちの評価に一任するってことにして」
「そうね、そうしましょうか。でも、本当に良いの?」
「なにが?」
シスマは私が勝負を引き受けたことが意外と感じているのか、首を傾げながら尋ねて来た。
「あなたに不利な条件だと思うけど……エリクサー等を作った経験はないんでしょう?」
シスマは最初から私が不利だとわかってたみたいね。
「そうだけど……ここで、国家錬金術士をしていた時に、作れるんじゃないかと考えたことはあるわ。不利かもしれないけれど、問題ないし」
「そう……なら、私も遠慮せずに全力を出しても、問題なさそうね」
「ええ、ていうか手加減とかされたら困るんだけど。私は、シスマのエリクサー調合を見に来たようなものなんだから」
調合勝負になったのは意外だったけれど、概ね私の予想通りに事は運んでいると思う。想像ではエリクサー調合を教えてもらおうと思ってたんだけど、勝負になったのは丁度いいわ。やっぱり、勝負事って燃えるしね!
「クリフト様、調合勝負なんですが……させていただいても、問題はないでしょうか?」
私はとりあえず、ユリウス殿下には視線を合わせず、クリフト様に聞いてみた。
「ああ、問題ない。アイラの好きにして構わないさ」
「ありがとうございます、クリフト様」
よ~し、クリフト様からの許可も頂いたし、これで心置きなく調合勝負が可能ね。最新設備の使用が可能とはいえ、私は未知なる物を作ることになるけど……一応は先輩になるんだし、丁度いいハンデだわ。
私とシスマはクリフト様やテレーズさん達が見守る中、それぞれスタンバイを開始した。大丈夫……調合レシピ自体は頭の中に既に浮かんでいるわ。後はそれを実践するだけ……負ける気がしない。
私は紛れもない天才のはずのシスマを相手にとっても、100%勝てると確信していた。




