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31話 シスマ・ラーデュイ 1

「あなたが……シスマさん?」


「ええ、そうだけど」



 美人……っていうのはもういいけど、彼女の雰囲気には正直、見惚れている自分の姿があった。雪女……本当に居たんだ。畏怖の念を抱いているとも言えるのかしら? 私と同じ17歳の少女。



「さん付けはお互いに無しにしましょう。特に、国家錬金術士の先輩であるあなたに、シスマさん、呼称されると申し訳がないので」


「先輩って言われると、なんだか変な気分だけど」



 国家錬金術士はとっくに辞めたわけだし、ユリウス殿下のことを思い出して微妙な気分にもなるし……。



「でも同じ17歳同士だし、変に気を遣うのは変だしね。シスマって呼ばせてもらうわ」


「なら、私もアイラと呼ばせてもらうわ。よろしくね、アイラ」


「ええ、こちらこそ、シスマ!」



 焦点が定まっていないような、不思議な視線を私に送って来るシスマ。テレーズさんとは別の意味で浮世離れしている印象もあった。確か、富豪平民に該当するんだっけ?



 ユリウス殿下の一件がまだ決着していないけれど、テレーズさんもすぐに続ける気がないようだったので、私は早速、本題を切り出すことにした。



「ねえ、シスマ。早速で申し訳ないんだけど、エリクサーを作れるんだって? それは本当なの?」



 これが本日、ここまでやって来た本当の目的。テレーズさん達に会いたいというのもあったけど、それはあくまで可能なら会いたい程度のものだったし。それぞれの都合もあるからね。



 いきなりの本題にシスマはやや戸惑っているようだった。感情の起伏があまりないので、驚いているのかどうなのか、読み取りづらいけど。



「いいんですか、ユリウス殿下? なにやら立て込んでいたようですけど」



 シスマはユリウス殿下に許可を取っているようだった。彼女は国家錬金術士だしね、自分の上司が目の前に居るわけだし、お伺いを立てるのは当然か。問われたユリウス殿下は激しく首を縦に振っている。



「も、もちろんだ……! 錬金術士としての天才二人の邂逅でもあるんだからな。私のことは気にせず、話を続けてくれ。それが王国の未来の為にもなるからな!」


 いくらさっきまでの問い詰めから逃れる為とはいえ、恐ろしいくらいの二枚舌だわ。私のことを散々、平民って馬鹿にしてたくせに。天才二人、だってさ……はあ、なんだか疲れて来た。



 私はユリウス殿下のことは無視して、テレーズさんの方向に目を向けた。彼女は質問内容が分かっているのか、私よりも先に口を開いた。



「私も大丈夫ですわ、アイラ。ぜひ、シスマさんとの話を進めてください。先ほどの一件に関しては……後でじっくりと行う、ということで」



 テレーズさんはそう言いながら、ユリウス殿下を睨みつけていた。睨まれたユリウス殿下は「ひっ!?」と声をあげている。これは逃げられる感じではないわね。浮世離れしていると思っていたテレーズさんからの、思わぬ反撃といったところかしら。


 まあ、私だって許してるわけないし、後でとことんまで追い詰めてやりたいけど。


 ユリウス殿下の一件はとりあえずは保留ということにして……私はシスマに向き直ることにした。


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