表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/286

29話 錬金術士の邂逅 3

「……」



 テレーズさんは何て言ったんだっけ? ええと、私の家族が病気だから、ユリウス殿下がそれを案じて追放という形を取ったと……? えっ、なにそのとんでも展開……駄目だ、頭が付いて行かない。



「アイラ……? どうかなさいましたか?」


「いえ、なんでもないです……」



 テレーズさんの問いかけに、私はなるべく平静を装って答えた。ユリウス殿下に視線を送ると、彼は明らかに狼狽えている。おそらく、お気に入りのテレーズさんに良い格好をしたかったんだろうけど。とりあえず、どのように返答しようか……多分今回は、私の好きにやってもクリフト様やライハットさんは許してくれるはず。


 今、視線を合わせてみたら、静かに頷いてくれたし……よし。



「ユリウス殿下」


「な、なんだ……アイラ?」



 弱々しいユリウス殿下の言葉……最早、蛇に睨まれたカエル状態なのかもしれない。



「どういうことでしょうか? テレーズさんには真実を話していないんですかね?」


「い、いや……それはだな……!」


「それは……なんでしょうか?」



「う……あう……!」




 私を身勝手にも追放しただけでなく、それまでの給料だってまだ渡してもらっていない。クリフト様がいなかったら、完全に取り上げたままで終わってたわよね? 考えたら、本当に腹が立ってきたわ……。



 どうしてやろうかしら……。そう考えていた時、私の目の前に立っていたテレーズが、口を開いた。何やら真剣な目をしながら。



「ユリウス殿下、どういうことでございますか? アイラとのことで、以前におっしゃっていただきましたのは、真実ではなかったのですか?」



 意外にもテレーズの口調は強いものだった。怒っているのがすぐに分かる態度だし、ユリウス殿下としてもそれは意外だったのか、すっかり怯えてしまっている。



「テレーズ……! それは……!」



 最早、弁解の余地はない。だって、当の本人が目の前に居て、「真実ではない」ってはっきり言ったんだもの。私はそんなユリウス殿下に追い打ちを掛け、止めを刺すべく動き出した。



「私の家族は病気になんてなってませんよ? ユリウス殿下が私を追放した理由は、平民の私が宮殿内で仕事をしていると虫唾が走るからだそうです」



「そ、そんな……! そんなことが……!?」



「はい、そうですね」



 私はユリウス殿下が惚れているであろう、テレーズさんの前ではっきりと言った。彼女は想定外の事実だったのか、口を両手で覆い隠していた。でも、それが真実……テレーズさんの中に居た、優しいユリウス殿下の姿は、見事に打ち砕かれたことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 言っちゃいましたね、ついにこの時がきましたか、評価入れておきます [一言] 話の最後で思わず読者の私も口を両手で覆い隠してしまいました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ