24話 新しい錬金術士 1
「新しい錬金術士ですか?」
「ああ、その通りだ……しかも、かなり優秀な子でな。年齢は君と同じく17歳だ」
私はいつも通り、薬屋「エンゲージ」を経営していたけれど、様子を見に来てくれたクリフト様から、興味深い話を聞かされた。どうも最近、宮殿に新しい国家錬金術士が来たみたいだけど。
「私と同じ、17歳の女の子……辺境地でのスカウトミスになってた子ってことですよね?」
「そういうことになるな」
そんな子が、ユリウス殿下の推薦で国家錬金術士になったというの……? 才能はあるみたいだけど、ちょっと信じられないというか。
「平民の子ですよね?」
「そ、そうだな……うん、平民出の女性になる」
クリフト様は少しだけ言いにくそうにしていた。多分、私に気を遣ってのことだと思うけど。まあ、エンゲージも順調に売り上げを伸ばしているし、今はとても楽しく薬屋を経営しているから、今さら文句を言うつもりはないけど……。
まさか、ユリウス殿下が「虫唾の走るはずの平民」を雇うなんてね……。
「議会で定められたノルマ達成の為に、仕方なく雇ったって感じですか?」
「そうなるな……ユリウスは、今回のことで自分の評価を落とすことを避けたかったようだ」
何それ……それだったら、最初から私を追放なんてしなければ良かったのに。結局、後釜の3人では目的が果たせなかったから、才能ある別の錬金術士を雇ったってことでしょ。しかも私と同じく平民出身の子で。人件費のむだというかなんというか……。
まあ、そんなユリウス殿下のことはどうでもいいとして……その新しい錬金術士のことは気になるわね。
「新しい子の能力はかなり凄いんですか?」
「ああ、そうだな。私も直接見たわけではないが……名前はシスマ・ラーデュイ。辺境地では豪農の家系だそうだ」
ていうことは……平民ではあるけれど、富豪家系に属しているってことか。
「シスマは現在、12種類のアイテムの精製が可能らしい」
「一人で12種類も……」
その数に私は素直に驚いてしまった。だって、他の3人の錬金術士は合わせても7種類って、お客令嬢から聞いてたから。薬士や錬金術士という職業は、アイテムの質も重要だけれど、どれだけの種類を一人で作れるかでランクが決まってくる傾向にあるし。そっか……12種類のアイテムを作れる子が、宮殿内に居るんだ。
「シスマの助力もあり、10種類のアイテム調合のノルマは達成できた。ユリウスの評価は保たれたということになる」
「そうですか……」
個人的には嬉しいことでもないけど。まあ、クリフト様の手前だし、その辺りは態度に出さないようにしなきゃね。
「それから……シスマの凄いところがもう一つあってな」
「はい……?」
神妙な顔つきでクリフト様は語っている。一体、何を言うつもりなんだろう、私はとても気になっていた。
「エリクサーの調合ができるらしい」
「エリクサーの調合を……ですか?」
「ああ、私も最初は信じられなかったが……」
私は一瞬、固まってしまっていた。エリクサーと言えば、万能薬、蘇生薬に並ぶ回復薬の頂点3種の内の1つのはず。そんな神々しいアイテムを調合できるなんて……。




