2話 追放された錬金術士 2
私はユリウス殿下から追放されたその日、知り合いのアミーナさんのところへ行くことにした。宿屋を経営されている未亡人の女性で、私が国家錬金術士をしていた時から、お世話になっている。
辺境の村から首都リンクスタッドに出て来た私にとっては、頼れるお姉さんといった人だ。
私はアミーナさんに事情を話すことにした。
「……ということで、錬金術士をクビになってしまって……」
「そんなことがあったの……?」
「はい……」
「そんな無慈悲な追放を、第二王子様が……」
ユリウス殿下の無慈悲な追放か……確かにそう呼べば聞こえはいいかもしれない。というより、その通りだと思うし。流石に首都の外への追い出しはなかったけれど、私に与えられたのは、少しばかりの素材を含めた着替えなどの荷物だけだ。
それらを用意して追い出される猶予もほとんどくれなかった。ユリウス殿下のクビ宣言から1時間もしない内に、私は貴族街の外へと出されてしまったんだから。アミーナさんの宿屋で泊まらせてもらえるけど、もちろん無料というわけにはいかない。
何日も泊まれるほどの資金は持ち合わせてはいなかった……。
「とにかく今は、クビになったことよりも、新しい仕事を見つける必要があって……」
「そうよね、働き口は決まっているの?」
アミーナさんは心配してくれている。正直な話、すぐに思いつく仕事はなかった……強さに自信があったり、魔法適性なんかが高ければ、冒険者や護衛の仕事で稼いだりするんだろうけど。
「と、いうより、アイラは錬金術士じゃない。それだったら、やることは一つよね」
「あ、そっか……そういえば、そうでしたね……」
身近にある物は却って見えにくいっていう言葉があるけれど、私は錬金術士だったわ。「国家錬金術士」はクビになってしまったけれど、大元に変化があるわけはない。ただ、問題もあって……。
「設備がないと、調合は難しいんですよね……それに、素材も少ないので……」
設備や素材は冒険者たちに依頼して、調達してもらう必要があるかな? 大釜とかその他、諸々も……。掛かる費用は後払いで……て、そんなこと出来るかどうか分からないけれど。
結構、前途多難な気がしてきた……。
「設備ね……一応、古い設備でいいなら、宿屋の奥の部屋に備えてあるわよ?」
「えっ、本当ですか……?」
どういうことだろう……? アミーナさんが錬金術士だとは聞いたことがないけど。いえ、それよりも……私はアミーナさんに頼んで、その設備を見せてもらうことにした。光明が見えて来たかもしれない。