186話 解決への道筋 3
「……」
オディーリア様は明らかにクレスケンスに話しかけているような気がした。周囲にはインビジブルローブを外した状態の五芒星の姿もあるけれど、あの人達に話しかけているわけではないと思う。なんだか意味深なワードが聞こえて来たけれど……一体、どういう意味だろう?
それに「あの子」ってまさか……。
「アイラ、盗み聞きは良くないぞ」
「は、はい!」
もう少し聞いていたかったけれど、しっかりとバレていました。
「す、すみません、オディーリア様……盗み聞きするつもりはなかったのですが」
「それは分かっておる。わらわとしても、お主に聞かれて困る内容を話していたわけではないからの」
「で、でも今の話って……」
私は瘴気が発生していた時、確かにクレスケンスから超万能薬のことを聞いた気がする。あの頭の中に入って来た言葉はそういうことなのだろうか。
「オディーリア様、クレスケンスは確かに私に超万能薬のことを教えてくれたような気がするんです……これって一体……」
「うむ……今のわらわでは答えを紡ぐことは難しいの」
「でも、憶測であっても真実は分かっているんですよね?」
「……しばらくは考えさせてくれんかの? お主もこの数カ月以上の間で、気になったことはあるじゃろうがな」
そう言われると確かに……そもそもの問題として、私が故郷を離れてリンクスタッドに行ったのも運命を感じてたし。オディーリア様とお母さんやお父さんが知り合いなのも、変に思ってはいた。オディーリア様の発言内容から予測すると、全ては繋がっているように感じられる。
「話せる時期になれば、全てを話すと約束しよう。アイラよ、それまでは待っていてくれんかの?」
「分かりました。オディーリア様には本当にお世話になっていますし、無理強いをする気なんてありません。いつでもお声を掛けてくださいね」
「ありがとう、アイラ」
「いえいえ」
オディーリア様はめずらしく迷いを持っているようだった。その状態の彼女を相手に、無理に聞ける程、私は恥知らずではない。彼女が話しても大丈夫と思えるその時まで、待ってみようと決意した。
「ときにアイラよ、お主もかなり人脈を広げたようじゃな」
「えっ? いきなりどうしたんですか」
「わらわが王都ヴァレイに向かう時に、一緒に行きたいと言った者がどれだけ居るか想像できるか?」
「え、えと……それは……」
話の流れが一気に変わったような気がした。オディーリア様と一緒に来る予定だった人達か……。
「クリフト王子殿下は勿論、シスマにライハット殿、キース姉弟にカエサル殿も志願していたのだぞ」
「そ、そんなにですか……?」
「それだけではない。各冒険者の者達も志願しておった。しかし、今回は未知の瘴気が蔓延しているという情報だったからの。まずは、わらわ達が向かうことになったのじゃ」
「な、なるほど……」
結果的にオディーリア様達が来てくれて、本当に助かったけれど、賢明な判断だったんだと思える。瘴気が蔓延しているところに無闇に何人も送るのは得策ではないのだし。
「アイラ……お前はこの短期間の間に、本当に多くの関係を築き上げて来たな。本当に喜ばしいことじゃ、これからもどんどんと広げていくが良かろう。わらわが言うまでもないだろうがな」
「はいっ! 分かりました!」
今回の瘴気の件は流石に焦ったけれど、解決への道筋は見えて来ている。神官長のマラークさんとの関係が築かれたわけで、この件でも私の人脈は広がったわけだ。
私のことを無条件で崇拝してくれる人達も大勢居た気がするけれど……まあ、その人達は人脈に数える必要はないかな……なんてね。