表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/286

176話 自分に出来ること 3


「超万能薬だと? アイラ、超万能薬と言ったのか?」


「え、ええと……た、多分……」


 私も無意識に頭に浮かんだので、分からなかったけれど、確かにアルファさんにもそう聞こえていたようだ。超万能薬って何かしら? 私は聞いたことがなかった。


「超万能薬のことを知っているとは、流石にアイラは博識だな」


「いえ、ええと……は、はい、ありがとうございます……」


 本当は知らなかったけれど、アルファさんの手前、言葉を濁すことにした。それよりも話を進めた方が良いと判断したからだ。


「超万能薬……1000年前に失われたとされている幻の薬だが、確かにあの薬ならば、未知の瘴気といえど完治させられるかもしれないな。まあ、現代の技術では作ることは不可能なようだが……」


 そんなに凄い薬だったのね……万能薬を超える解毒薬みたいな立ち位置かしら? でも、現代の技術で作れないんじゃ意味がないわ。冒険者間でも、入手は不可能なんだろうし。


 同時に寒気がしてしまった……まさか、クレスケンスが脳内で話しかけて来た、とかじゃないわよね? うん、大丈夫大丈夫……私は正常だわ、何もおかしなことなんてない。


「とにかく今は、万能薬に賭けてみませんか? 上級毒消し薬でも効果が薄いなら、万能薬しかありませんし……」


「そうだな……」


 アルファさんも乗り気になってくれたようだ。アルファさんは生来の強さから、私は防毒マスクでなんとか体調を保っているけれど、周囲の状況は先ほどよりも悪化している。あまり、普通に会話していて良い状況でもなかった。抵抗力の弱い人から順に悪化して行っているのは間違いないだろうし……近隣の村々ではもしかしたら、死者が出ているかもしれない。


 この状況を打破するにはどうしたら良いのだろうか? 私が持っている携帯錬金セットでは明らかに足りない。というより、私一人では明らかに足りないけれど……でも、今はやれることをやるしかないわね。


「マラーク神官長が帰って来たようだ」


「あ、本当ですね」


 シグルドさんの姿は見当たらないけれど、あの人のことだから、瘴気の発生場所に残ったのかもしれないわね。


「マラークさん! どうでしたか!?」


「おお、これはアイラ様! ご無事で何よりでございます……! シグルド殿の話では、やはりメビウスダンジョンからの瘴気のようです。地下で繋がっているみたいですね」


「やっぱりそうだったんですね……」


 面倒なことになってきたわね……「未知」の毒であることがほぼ確定的になったわけだ。上級毒消し薬でも効果が薄い理由はそこにあるんでしょうね。


「マラーク殿、事態は急を要します。サンスクワット大聖堂の錬金設備を使わせていただけませんでしょうか?」


「な、なんと……あの神聖な錬金設備をですか……!?」


「王都ヴァレイの人々の命が掛かっているんですよ? そんなことを言っている場合ではないでしょう? それに、信仰の対象であるアイラが使用するのであれば、誰も文句を言えないはずです」


「そ、それは確かに……わ、分かりました。聖王には事後報告をしておきます……こちらへどうぞ」


「は、はい!」


「感謝いたします」


 サンスクワット大聖堂に錬金設備が入っていたなんて、驚きだった。でも、よく考えたら錬金国家を崇拝している国だし、その象徴たる大聖堂に設置されているのは、むしろ自然なのかもしれない。


 と、いうより……マラークさんが躊躇する程、その場所は神聖不可侵な場所ってことよね? おそらく、氷漬けのクレスケンスに直接触るくらい不可侵なはず。そんなところに私が入って、本当に大丈夫なんだろうか? ああ、でも今は人命が最優先ね。それ以外のことを考えても仕方がないわ。


 私は苦しんでいたお年寄りや子供達の顔を思い浮かべながら、マラークさんについて行った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ