159話 アルファ・ルファ 1
ロンバルディア神聖国の神官長マラークさんを始め、神官将様や神官の方々、総勢50名がホーミング王国の首都カタコンベに来ていたと知ったのは、あの一件の次の日のことであった。
私はその事実をオディーリア様との会話の中で聞かされた。今、エンゲージの前に居るお客さん? はオディーリア様だけだ。彼女は5万スレイブ分の買い物をしてくれた。昨日、マラークさんに薬の品揃えだけを見るのは遠慮してください、と言った手前、オディーリア様は気を利かせて買い物を先にしてくれたのだ。
そこまで気を使ってもらうのも悪かったけれど、オディーリア様的には必要なアイテムだったそうで、ちょうど良かったとのこと。まあ、それなら大丈夫なのかな。
「実はわらわは、冒険者登録をしようと考えておるんじゃ。冒険者になった後は、アイラの店のアイテムが役に立つじゃろうて」
「えっ、本当ですか!?」
「うむ、本当じゃぞ!」
衝撃の事実な気もするけど、オディーリア様はドヤ顔で自然と言ってのけている。ええと……次期女王様が店を出しているだけじゃなくて、冒険者活動までするの? 完全に道楽な気がするけど、大丈夫なのかな……?
「オディーリア様……次期女王様なんですよね?」
「うむ、それはその通りじゃが。まあ、そっちは特に問題はない」
問題ないんだ……オディーリア様はまったく気にしている様子を見せていなかった。でも、いくら実力者と言われているオディーリア様でも、冒険者活動は厳しいのでは? なんて思ってしまうけど。
「気を付けてくださいね……私が心配するようなことではないかもしれませんけど……」
「うむうむ、済まぬな。心配を掛けるようじゃが、簡単なダンジョン攻略から行うので心配は無用じゃぞ」
「それならいいんですが……」
まあ、オディーリア様のことだから、いきなりメビウスダンジョンとかには行かないと思うけど。
「そういえばオディーリア様……昨日、私に言いかけていたことがありましたよね?」
「言いかけていたこと? はて……何のことじゃったか」
「ほら、神聖国が来る前に……崇拝じゃなくて、から続けようとしてませんでしたか?」
私は会話の間が空いたので、気になっていたことを聞いてみることにした。オディーリア様の言葉は助けられるものが多い気がするし、知っておいた方がいいと実感している。
「そういえば、そんな話もしておったの」
「はい……何を話そうとしていたんですか?」
「うむ、それはじゃな……アイラがもしも、ロンバルディア神聖国へ……」
「その話の続きは少し待ってもらえないだろうか?」
また邪魔が入ったような……いえ、今度のは邪魔というわけではないんだろうけど。オディーリア様の言葉を遮った人物の声には心当たりがあった。そして、私はその人物に向き直る。
冒険者ランキング3位の聖獣騎士団のリーダー、アルファ・ルファさんが立っていた。
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