141話 真犯人を見つけよう 1
「マギー・ケルン達は誘拐の首謀者については口を割りませんでした」
「そうなんですね……」
襲撃してきた二人は拘束され、ホーミング王国の兵士達に連れていかれた。今はライハットさんからの報告を聞いている。
「口を割らなかったというよりは、何も知らされていなかったというのが、正しいかもしれません。報酬は前払いのようでしたので」
「報酬前払いでキッチリ仕事をこなすって……賞金首らしくないですね」
「確かにそうですね。まあ、依頼主の逆鱗に触れることを恐れたのでしょう。依頼主はオイゲン商会で間違いないでしょうが、彼ら以上の者達が暗躍しているでしょうし」
15万スレイブ以上の賞金首……それらを操れる者の存在か。オイゲン商会って想像以上に危険な勢力なのかもしれないわね。改めて私は気を引き締める必要性を感じ取った。
と、そんな時……桜庭亭の前に人影が。もしかして新たな侵入者? と思ったけれど、その人影の主はネプトさんだった。アンジェリーナさんの姿はないみたいだけれど……。
「この店内の様子は……既に襲撃されていたか。それを上手く撃退したようだね」
入ってきたネプトさんは、桜庭亭内の様子から襲撃の事実を察知していた。流石の洞察力……全て合っている。
「ネプトさん!」
「アイラ君が無事なようで何よりだったよ」
「ありがとうございます! ライハットさんや五芒星の方々の護衛もあって、何とか無事です!」
ライハットさんやエメルさん達には後日、正式なお礼をしなくちゃいけない。私だけだったら、確実に誘拐されていただろうから。彼らは命の危険を犯して、私を救ったことになるのだ。余裕の勝利ではあったけれど、それは結果論でしかないわけで。
「実行犯は2名でした。比較的有名な賞金首が使われていましたが……首謀者の足取りを掴むことは困難かと思われます」
「そうですか……なるほどなるほど。ならばやはり、オイゲン商会の直営店に、直接乗り込むしかないようですね」
ライハットさんからの報告を受け、ネプトさんは見掛けに寄らない大胆な作戦を提案していた。
「直営店に乗り込むんですか……? それは流石に……証拠もないんですし……」
「今、直営店の周囲をアンジェリーナとシグルドが見張っているのだよ。シグルドは暇つぶしだと言っていたが……意外にもおせっかいな性格をしているのかもしれないね」
「ええ……アンジェリーナさんとシグルドさんが……?」
なんだか証拠がなくとも無理やり証拠を出しそうなコンビだわ。二人の強さの深淵は私にも分からないけれど、これだけは言える。
敵側に回ってしまった人達はご愁傷様……と。敵側に勝てる未来が想像出来ないというか。
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