14話 綻び 2
「ほ、本当に良かったんですか、クリフト様……? お食事なんて」
「ああ、アイラさえ嫌でなければ、特に問題はないな」
「いえ、もちろん嫌ではないですけど……」
クリフトの冷静沈着な告白に保留を貫いた私……それでも彼は笑顔でいてくれた。
それで……薬屋の営業時間が終わってから、私とクリフト様は夕食の為に近くのレストランへと入っていた。一般人の私からすると、第一王子様と食事しているところを見られたら、色々と大変そうに見えるけど……周囲の兵士たちも特に気にしている様子はない。
本当に大丈夫なのかしら? クリフト様としてはアミーナさんも呼んでたんだけれど、24時間営業の宿屋の為に、彼女は断った。と、いうよりアミーナさんの狙いは私とクリフト様で出かけさせることなんだろうけど。
もう、変な気遣いしてくれちゃって……嬉しいと言えば、嬉しいけどさ……。
「そう言えば、聞きたいことがあったんだが、いいかな?」
「は、はい……! なんでしょうか……?」
少し前に告白を受けた身としては、クリフト様の発言には、どうしても過剰に反応してしまう。
「はは、あんまり緊張しなくていいぞ」
「はい……努力いたします」
「うん。で、話を戻すが……桜庭亭の奥の調合設備についてなんだが」
「あそこですか、あの場所がどうかしましたか?」
「あの設備を拡張した場合、さらに豊富なアイテムの作成が可能なのか?」
クリフト様の質問の意図は分からなかったけど……どうだろう? 確かに拡張の仕方によっては、魔法能力を含めたお札系……例えば、炎熱札や雷撃札みたいな物も作れるし、エリクサーとかも調合は出来ると思うけど……。
あとはエリキシル……いや、これはやめておこう。うん、私は何も言ってない……。
「そうですね、調合できるアイテムは増えると思います」
「なるほど……あれだけのアイテムを揃えていても、さらに増やせるのか……君の錬金術士として才能は底が見えないな」
「あはは、それほどでも……」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、クリフト様は尊敬の眼差しで私を見ている気がする。いえ、私もただの人間ですので、そんなに見つめられると照れちゃいますよ……。
「私が君を最初に選んだことは間違いではなかったようだな」
「えっ? どういうことですか……?」
クリフト様が最初に選んだ……? 確かに私は1年くらい前にクリフト様の推薦で国家錬金術士になれたのだけど、そのことかしら? 詳細について伺おうとした時……意外な来客があった。
「クリフト王子殿下! アイラ! 居ますか!?」
「なにごとだ?」
「アミーナさん……?」
血相を変えたアミーナさんが、私とクリフト様が食事をしていたレストランに入って来た。全身が汗だくになっている、何があったのかしら?
「ど、どうしたんですか……!?」
「あの……私の宿屋にユリウス殿下がお見えになっているの……!」
「ユリウス殿下が……?」
嫌な予感は確信に変わっていた……これは確実に良いことではないわね……。もう嫌な予感が頭の中を駆け巡っているわ……。