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13話 綻び 1 (一人称ユリウス殿下視点)

「報告申し上げます、ユリウス殿下」


「ああ、よろしく頼む」



 執事のオーフェンが私の部屋で、調合関連の報告にやって来た。オーフェンは信頼厚き私の片腕のような存在だ、侯爵令嬢のテレーズを含めた3人の新しい国家錬金術士のことは安心して任せることができた。



「テレーズ様、ミラ様、モニカ様の3名の国家錬金術士についてなのですが……」


「ああ、首尾の方はどうなのだ?」



 私がテレーズに期待の言葉を掛けた日から、さらに1週間が経過していた。その間も宮殿内の最新設備を使用しているはずだ……成果は十分に出ているはず。



「テレーズ様は初級回復薬と目薬、それから新たに風邪薬の調合にも成功している模様です。やや、成功率に欠ける部分もありますが、これでテレーズ様は3種類のアイテムの調合に成功しています」


「ほほう、流石はテレーズといったところか! 一般の薬士とは一線を画す存在というのがこれで証明されたな」


「ええ、そうですね」



 一般の薬士は基本的には1種類のアイテムを作るので精一杯……言い換えるなら、専門業者みたいなものだ。複数のアイテムを精製できる存在は錬金術士の専売特許と言えるだろう。流石は将来の私の妻にふさわしい存在だ、彼女が成長しているのを聞くと、嬉しくなってくるな。



「ミラ様、モニカ様についても2種類のアイテムの調合には成功しています」


「ほう、それは何よりだな」


「はい。ミラ様が初級回復薬と目薬の調合、モニカ様は初級回復薬と中級回復薬の調合に成功しています。多少、成功率に難があるのはあれなのですが……」


「成功率は調合を繰り返すことで確実に上昇していくはずだ、それほど問題ではない」


「確かにそうかもしれませんが……」



 ふう……これで、なんとか議会への報告もスムーズに出来そうだ。いつまで経っても国家錬金術士という偉大な肩書きを持つ者が、一般の薬士と変わらなければ、私の立場も危うくなってしまうからな……。


「しかしまあ、これで自信を持って議会に報告が可能というわけだな。彼女たち3人ならば、更なる成長も期待できるだろうしな」



 私の言葉にオーフェンはやや不穏な表情を見せていたが、最終的には頷いていた。大丈夫に決まっている……何せ、アイラを追放し、新しく私が選抜した3人なのだから。この調子ならば、アイラを超える日も近いはずだ。



「ユリウス殿下、もう一つお伝えしたいことがございまして……よろしいでしょうか?」


「構わないが……どうしたんだ?」



 オーフェンは先ほどよりも暗い表情を見せていた。よせ、お前が暗い顔になると私まで不安になるではないか……。



「以前に言っていた宿屋と薬屋が兼業になっている店のことですが……」


「ああ、そういえばそんな話もあったな。それがどうかしたのか?」



 いまいち分からないが……それが、オーフェンの暗い表情と関係しているのか? 私はやや緊張しながら、オーフェンの次の言葉を待っていた。



「最近はさらに繁盛しているようです。それから……薬屋を経営しているのは、どうもアイラ・ステイト殿のようでして……」


「なんだと……?」



 オーフェンのなんとも言えない表情の理由はそれだったのか……私もその事実を聞き、しばらくの間、固まってしまっていた……。

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― 新着の感想 ―
[一言] むしろ下級薬の調合成功率が100%じゃない時点で、そこらの薬師以下だと思うのだが。 最低限である下級薬の調合に失敗するのは、見習いだろう。 上級や超上級も存在する世界で、初級の調合に失敗する…
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